【第一章完結】相手を間違えたと言われても困りますわ。返品・交換不可とさせて頂きます

イーサンを探せ

5.リディア＆イーサンVS代表者

「あいつと話した。離れて暮らしてても、考え方はよく似てるな。
自分一人が助かる気はないとさ」

「話は決まったわね」

マーサが慌てて、
「お嬢様、まさかと思いますが危険な事はしないお約束ですよ」


「この街の問題を片付けて、彼に会いに行くわ」


　マーサとイーサンはガックリと肩を落とし溜息をついた。

「お嬢はそう言うと思った。だから商会には連絡しなかったのに」

「イーサン、それは悪手でしたね。
あなたが行方不明だと知ったお嬢様がじっとしておられると？」

「へぇ、お嬢。俺の事がそんなに心配だった？」

「家族と仲間が一番大事なのは当たり前でしょう？」

　イーサンが態とらしく大きな溜息をつき、
「俺は家族？　仲間？」

「微妙なところね。仲間だけどちょっと家族みたい」

「リディアの正直なとこは尊敬してるが、男としてはちょっと凹むな」


　話を聞いていた亭主が首をかしげた。

「リディア様だっけ？　あんたイーサンの妹じゃなかったのか？」

「似た様なものかしら。それより作戦会議をはじめましょう」



　夕方、酒場に農民一揆の先頭に立ってる代表者達が集まりはじめた。

　お互いに挨拶を交わした後、

「今日は俺達から提案がある。
領主を丸め込めたら例のお布令は撤回されるはずだが、みんなの了承が欲しい」


「お布令を撤回させるとか、無理に決まってるだろ」
「馬鹿げてる」
「そんな大法螺吹かれてもなぁ」


「俺達は部外者に近いかもしれんが、この街の問題を解決したいと本気で思ってる。
無理かどうか試させてくれ」


「部外者に近いってどう言う意味だ？」

「元々あんたがなんでワシらを助けようとしてるのか疑問だったんだ」

　イーサンがリディアを見た。

「どうする？」
「私が話してもいいかしら」

　イーサンが一歩後ろに下がり、リディアが前に出て話しはじめた。

「今回領主が購入した奴隷の中に私の兄がいます。
私は彼を助けたいのです」

「金さえありゃ買い取ればいいだけのことだろ？　足元は見られるだろうがな」

「彼は、自分一人が助かるのは嫌だと言っていますの。

それに、この街で起きている問題と同じ事が国中で起きています。
勿論他国でも。

一箇所が蜂起すればそれに賛同する街は沢山あるでしょう。
賛同する人が多くなればなるほど成功の確率は上がりますが、死傷者も膨れ上がります。

家族や友人に犠牲者が出ても戦いますか？」

「でもこのままじゃあ生きてけねえ」

「だーかーらー、俺達に試させてくれって言ってんだろ？
国中を救う事はできないがこの街だけならかなんとかなるかもって思ってる」


「随分と大見得を切るんだな。その作戦ってのはなんだ？」