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スペンサー商会

9.山賊

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「いつ気がついた?」

「はっきり分かったのは今朝かな? セオ、全然寝てないだろ? 他の奴は気付いてないと思う」

 セオは目を瞑って考え込んでいたが大きく溜息をついた後、

「何としてでもあの人だけは守りたい」

「でも山越えか?」

「ああ、それしか方法がない。それに誰が何と言っても聞かないだろうしな」

「惚れた弱みか?」

「最近他の奴にも言われたよ。二番煎じだな」
 セオは苦笑いをした。


 前後左右を傭兵達が守り山道を登って行った。

 道幅は広いが、両側の落葉広葉樹のナラやブナの木が生茂り道に覆い被さっている。
 空は澄み渡り空気も少しひんやりしている気がした。

 頂上近くまで来た時、鳥や虫の声が聞こえなくなった。
 草のざわめきだけが聞こえてくる中で、先頭を行くヒューの合図に全員が剣に手をかけた。
 左の山側から、かなりの人数の男達が駆け降りて来てリディア達の前後を挟む様に立ち塞がった。


 前を塞いでいる山賊の1人が話しはじめた。

「久しぶりのお客だな。得物から手を離して馬から降りてもらおうか」

 ヒューは剣に手をかけたまま、
「最近はすっかり大人しくなったって言う噂だったが、まだこの辺で彷徨いてたのか?」

「お前らの様な間抜けがやってくるのを待ってたんだよ。
さっさと馬から降りろや!」

 男の怒鳴り声を合図に、山賊達が襲いかかって来た。


 リディアが山を背にしてその周りをセオと傭兵が半円を描く様に囲んだ。

 斬りかかってきた山賊を馬で威嚇しながら傭兵達が斬り込むが、多勢に無勢で段々と傭兵達が押されはじめた。


 少し離れたところで腕を組み、立ったままで戦いを傍観している男が山賊の頭だろう。
 リディアはスリングショットを取り出し、狙いを定めて顔を狙って打った。

「うわぁ、ゲフッゲフッ」

 顔面近くにきた玉を手で避けた山賊の頭は、大量の涙を流しながら転がり回っている。
 戦っていた山賊の数人が頭に走り寄り、リディアはその男達に再び玉を打つ。

「「ゲホッゲホッゴホッ」」

 異常な事態に慌てた山賊達が後ろに下がりはじめた。リディアは一番遠くにいる山賊を狙い玉を打つ。

「ぎゃぁ、ゲホッゲホッ」

「下がれ、引くぞー」

 号令と共に山賊達が逃げ出して行き、何が起きたか分からないセオと傭兵達は呆然としていた。

 ヒューが、
「取り敢えず逃げるぞ」

 全員で一斉に走り出した。下りの道では何も起こらず、山裾のセルハイムの村迄無事に辿り着くことが出来た。


 馬を預けて酒場に入った。全員が席に着いて昼食の注文を済ませた後ヒューが、

「何があった?」

 リディアがこっそりと、スリングショットの玉をセオの手に乗せた。

 油紙に包まれた少し大きめの玉を手の上で転がしていたセオが紙を剥がそうとすると、リディアが球を手で隠して首を振った。
 セオの耳元で、

「胡椒と唐辛子」

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感想 13

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