【第一章完結】相手を間違えたと言われても困りますわ。返品・交換不可とさせて頂きます

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スペンサー商会

7.ソーテール

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 サライの町を出発してからも2時間に一度休憩を挟んだ。

 ヒューは、みんなから少し離れた所で休憩しているリディアを見ながら、

「セオ、弟さんは随分と無口なんだな」
「ん? ああ、リーは酷く人見知りするんだ」
「ふーん」

 何かを怪しんでいるのか、疑り深そうな顔でリディアを見ている。

「以前セオに仕事を頼まれた時、兄弟はいないって言ってた気がするんだが」

「そうだったかな? よく覚えてないな。
そう言えばヒュー以外の人とは今回初めて会ったんだが、付き合いは長いのか?」

「そうだな、さっきのジャスパーは4年くらいかな。後の2人はもう少し短い。
何度も組んで仕事をしてるから信用できる奴らだ」

 セオは以前に何度かヒューに仕事を頼んでいるが、リディアの警護を頼んだ事はない。

 出来れば最後までバレずに済めば良いのだがと、内心冷や汗をかいていた。


 幸いな事に、ソーテール迄は問題なく暗くなる前に着くことができた。

 セオが部屋を4つ取ろうとすると、

「おい、俺達は2部屋で構わんぞ」
「ん? そうか。そうだな、なら3部屋で」

「どうした、セオ顔色が悪いぞ?」

 俯いていたリディアがチラッとセオを見上げた。

「ちょっと疲れたかな。一晩寝たら直るよ」
 リディアがセオの袖を引っ張り小声で、
「湯浴み」

 セオの顔がますます青ざめて行った。

 風呂の準備を頼み、それぞれ部屋に分かれた。

 マントを脱ぎスカーフを外したリディアは、
「ふーっ、暑かったー」
と、赤い顔をして汗を拭いている。

 セオは所在投げに部屋をウロウロしている。

「セオ、どうしたの?」
「いえ、何でもありません。その、お疲れ様でした」
「セオもお疲れ様。湯浴みが済んだら、夕食はお部屋でも良いかしら?
もう一度マントを着たら又湯浴みしたくなりそう」

「そうですね。リディア様の食事はこちらに運びます」

 ドアがノックされたのでリディアが慌ててマントを被ると、宿の下働きが2人で桶とお湯を運んできた。
 
「そっそれでは、私はドアの外におりますので、おっ終わられたら声をかけて頂けますか?」

 セオが物凄い勢いで部屋を飛び出して行った。

 リディアは荷物から着替えを出しお湯に浸かる。

(ふう、想像以上に暑かったわ)

 のんびりと髪を洗い、着替えを済ませてからドアを中からノックすると、ドアが開きセオがゆっくりと顔を覗かせ、そのままバタンとドアが閉まった。

「?」

 湯浴み直後のリディアは、頬が上気している。濡れた髪をタオルで拭きながらセオを見上げる姿は想像以上の攻撃力で、セオは部屋に入る勇気を無くしてしまった。

 ドアの前で思わずしゃがみ込んで頭を抱えていると、ヒュー達が部屋から出て来た。


「セオ、そんなとこで何をしてるんだ?」

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