【第一章完結】相手を間違えたと言われても困りますわ。返品・交換不可とさせて頂きます

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スペンサー商会

6.傭兵と共に

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 翌日の朝、日の出と共に出発することにした。

 朝まだ暗いうちに着替えを済ませ、店の前でセオを待った。

 リディアはシャツとズボンに皮のブーツを履きマントを羽織っている。
 髪は三つ編みにしてシャツの中に押し込みスカーフを被って誤魔化している。


「お嬢様、もしもの時のためにこれをお持ちください」

 出掛けにマーサに渡された小振のナイフを、リディアはお礼を言って受け取りブーツの中に刺しこんだ。


「セオ、お嬢様に何かあったら絶対に許しませんからね。
お嬢様は、こんな格好をしていても男の子には見えませんから」

「分かってる。状況が違えばこんな無茶は許さないんだが仕方がない。
絶対に危険な目には遭わせない」


 城塞のメインゲートで護衛の傭兵4人と落ち合った。

 リディアとセオは前後を傭兵に囲まれて、エバンズから海岸沿いを東に向けて走り出した。

 ベルンへ向かうには途中アルザス山脈を越え東に走り続けるのだが、この山脈にはタチの悪い山賊が住み着いている。

 通常商隊は山賊を避けアルザス山脈の北側を迂回するが、今回は時間短縮のために山脈越えを狙う。
 陽の明るいうちに山を越えることができればかなり危険は減るだろう。


 1回目の休憩でサライの町に立ち寄った。サライの町は小さな宿場町で商隊の休憩箇所としてかなり賑わっている。

 馬を預けて世話を頼み酒場に入って行く。

 酒場は満席に近い混雑ぶりで、リディア達は入り口近くで席が開くのを待った。

 リディアはフードを被り俯き加減でセオの後ろに立っていたが、不審に思った客の1人が声をかけてきた。

「にいちゃん、フードなんか被って暑くないのか?」
「いや、大丈夫だ。弟は人混みが苦手でね」

 セオが代わりに答えてくれた。


 席が空き料理を注文した後、セオが小声で全員に話しかけた。

「このまま順調に行けば夕方ソーテールの町まで行けると思う。
そこで一泊して山越えするつもりだ」

 リディアは声を出さずに頷いた。

 傭兵のリーダーのヒューが厳しい声で、
「本当に山越えするのか? この時期は一番危険なんだが。
しかも小さな子供連れだと狙われる確率が上がる」

「迂回している時間がないんだ。夜明けとともに一気に山を越えようと思う」


 傭兵の1人ジャスパーが食事を終わらせ、酒場の亭主に山の情報を聞きに行った。

 ヒューは相変わらず眉間に皺を寄せていたが、

「了解。弟さんも予想以上に馬に慣れてる様だしなんとかなるか」

 ジャスパーが戻って来て何かヒューに耳打ちしている。話を聞き終わったヒューが、

「ここの所山賊は鳴りを潜めてるらしい」

「そいつは不味いな」

「あまり良い話ではないな。
ソーテールでもっと詳しい話が聞けると思うが、活発だった奴らが大人しいのは、時期を待ってる可能性が高い」


「ソーテールで情報が入ると良いんだが。なんとかして山越えしたいんだ」

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