【第一章完結】相手を間違えたと言われても困りますわ。返品・交換不可とさせて頂きます

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スペンサー商会

1.再びオークリーへ

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 局長達の行ってた不正は多岐に渡り、取り調べはかなり時間がかかるとの事だった。

 港の詳細については、レオが報告書が纏まり次第本店のエバンス宛に送ってくれる。

 リディア達はオークリーの町に戻り、以前一泊した宿でダーリントン侯爵が戻ってくるのを待つ事にした。


 修理の終わった馬車に乗り込み、カルムを出発した。

 1週間近く滞在したカルムでの緊張感が解れリディアがぼーっと窓の外を眺めていた時、

「リディア様、そう言えば一つ気になってる事が」
「何かしら?」
「先日羨ましかっただけだと仰っておられましたが、あれは何だったのでしょうか?」

 リディアは暫く悩んでいたが顔を真っ赤にして、
「覚えてないわ。セオもそんなくだらない事は忘れてちょうだい」

「くだらない事なのですか?」

「セオ、あなたはちょっと生真面目すぎだと思うの。些細な事は忘れて良いのよ」

「些細なことだったんですか?」

 セオは訝しげな顔でじっと正面からリディアを見つめている。リディアは益々顔が赤くなり、そっぽを向いてしまった。

「マーサ、どうしたら良いかな? すっごく気になるんだが」

「男の人が細かい事を気にするのはあまり感心しませんね」

「そうよね、流石マーサだわ。セオは細か過ぎで心配し過ぎなの。
どーんと大きく構えて・・大きくね」

 リディアの元気がなくなっていき、突然ふんっと横を向いてしまった。



「ここに泊まったのが、何だか随分と昔の事に感じられますね」
 マーサが部屋を見回し嬉しそうにしている。

「本当ね。カルムの町であんなに足止めされるとは思わなかったから。
侯爵様が戻られるまで暫くゆっくりしましょう」

「レオが話してましたが、夏のこの季節には東の広場で週に一回市がたつそうです。
かなり賑やかで、吟遊詩人やジプシーもやって来て焚き火を囲んでダンスしたりもするとか」

「吟遊詩人とジプシー? 珍しくない?」

「最近は吟遊詩人の数は激減してますし、ジプシーはまだ数が少なくて噂ばかりですから。
私も両方初めてです」

「ジプシーってエジプトから来た人って言うんでしょう?
髪も肌も黒くてダンスや音楽、それに占い。
吟遊詩人とジプシーの語り歌比べかしら。凄い楽しみだわ」

「いつあるのか、宿屋の亭主に確認してきます」


「お嬢様、さっきのセオが気にしてた話は何だったんですか?」

「あの時、セオの服を借りてきたでしょう。
どこもかしこも大き過ぎてぶかぶかだったの」

「そうですね。袖や裾を折り返すのが大変でしたね」

「ウエストだって紐で絞って漸く着れたのに、お尻だけパツパツで破れたらどうしようって。
だから、羨ましかったの。ちょっとだけね」

「ぷっ。それはセオには言えませんね」

「でしょう、なのにしつこいんだもの」

 2人で大笑いしている所にセオが帰ってきた。

「?」
「何でもないですよ。セオはレディのお尻のことなんて気にしちゃいけません」


「マーサ!」

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