【第一章完結】相手を間違えたと言われても困りますわ。返品・交換不可とさせて頂きます

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オークリー&カルム

9.羨ましかった

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 グフッと怪しい声を上げて崩れ落ちた船長は、うつ伏せで腰を高く上げくの字になっている。

「食事抜きとか、そう言うのは私我慢できませんの」

 宿の中が静まりかえった。

 床でのたうち回っている船長には、リディアの声は多分聞こえていないだろう。

「すげぇ」
「ありゃやばい」


 痛みを想像して顔を顰めている船員達を他所目に、
「セオ、手加減のやり方が少し分かってきましたわ」

 リディアはにっこり笑っていた。


「大変、マーサを救出しなくちゃ。誰かお湯を沸かしてくださるかしら」

 2階に駆け上がって行くリディアの後ろ姿? の一部を船員達が見つめている。
 慌てたセオが、リディアの後ろ姿を隠すようについて上がって行く。

「酷え、にいちゃんが一番良い場所で見てやがる」
「膝蹴り覚悟で良いから近くで見たかったなぁ」


 部屋でロープで縛られて猿轡を嵌められていたマーサを救出した。

 マーサは桶いっぱいのお湯で口を濯ぐ間ずっと涙を流していたが、
「ヒック、お嬢様がヒック無事で良かっだでず。ヒック汚い猿轡のごどヒックなんでお嬢様に比べだら」

 リディアは、しゃくりあげながら話しているマーサの背中を撫で続けていた。


 マーサが落ち着きを取り戻しリディアはドレスに着替えたが、セオの顔を見た途端そっぽを向く。

「リディア様、何かありましたか?」

 困惑気味のセオ。

「別に、何でもないわ。セオがちょっと羨ましかっただけ」

「そんなに裏帳簿見つけに行きたかったんですか?」
「違うわ、それはどうでも良いの。男の人はほら、あれよ・・あーもう知らない」


 翌日、領主に手紙を届けに行ったレオが帰ってきたので、全員でテーブルを囲んで作戦会議を始めた。


 領主は屋敷に戻っていたそうだが、面会はせず手紙だけ執事に預けて帰ってきたそう。

「さて、どうするかな。証人はこの2人、局長の秘書と騙された船員か。
ちょっと弱いな」

「裏帳簿持ってますよ」

 セオが少し丸まった帳簿をニールに手渡した。

「どうやった?」

「足に縛り付けときました。
どうせリディア様が何かやらかすだろうと思ってましたし、帳簿を持って帰らないと今度は自分が行くって言いかねないんで」

「お前、苦労してんな。もしかしてそう言うのが好きな方なのか?」

「変な性癖はありませんからご心配なく。リディア様とはもう7年以上の付き合いなんで」

「なんだ、ただのロリコンかよ」

「ニール、セオは自分好みに育てるのが好きってやつなのかも」
「はっ、ぜってえ育てられてんだろ。セオが躾けられてるって」
「あー、確かに」

「マーサ、性癖とかロリコンって何?
セオ、誰かに育てられてるの?」

「だっだから、俺はノーマルです!」

「はいはいっと、んじゃ領主が来るのを待って一気に片付けるか。俺の予想じゃ、あのジジイ今日中に駆けつけると思うぜ」

「ニール、手紙に何を書いたんだ?」

 興味深々のレオにニールは、

「ジジイの秘密をバラしますってな」

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