【第一章完結】相手を間違えたと言われても困りますわ。返品・交換不可とさせて頂きます

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アンヴィル

9.出立?

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「在地剰余の話、どうしよう」

「リディア様? 伯爵の告白の方が先なんじゃないですか?」
 
「そっちは、お返事はいらないって仰ってたわ。マーサも聞いたでしょ?」

「・・そうは仰っておられましたが、放っておくわけにはいきませんでしょう?」

「だってまだ一回しかお会いしてないのよ。私の中のイメージは・・沢山走っても平気な人?」

「ぷっ」
 マーサが吹き出した。
「確かに、あの走りは見事でしたね」


 黙り込む3人。解決策が見当たらない。


 セオが漸く口を開いた。

「こう言うのはどうでしょうか。
私達は別のエリアからはじめて、ジョンバーグ伯爵が落ち着かれた頃を見計らって、イーサンに対応して貰う」

「そうね、それが良さそう。メイナード様にお手紙を書くわ。
なんて書けば良いのか思いつかないけど」


 計画を開始した途端躓き、前途多難なリディアだった。



 リディア一行はアンヴィルを出立し逃げ出し、次の目的地オークリーに向かうことにした。
 出立の時には、宿の亭主や町の多くの人々が見送りに出てきてくれた。

「良かったら、これ食べてください」
「うちからはこれを」

「お姉ちゃん、領主様と結婚す「ありがとうございました。本当に助かりました」」

 リディア達は挨拶の一部分をスルーしつつ、沢山のお土産を貰い恐縮しながら馬車に乗り込んだ。

 リディアが馬車の中から手を振っている。

「すごく素敵な町だったわね。次に来れたらもっとゆっくりしたいわ」


 リディアが悩み抜いて書き上げた手紙は、馬車がアンヴィルを出発した後にジョンバーグ伯爵に届けてもらう事にした。



 アンヴィルの埃っぽい凸凹道を抜けて、漸く馬車の中で飛び跳ねなくなったリディアが、
「逃亡者になった気分だわ」

「次からは気を付けて下さい。同じ事を繰り返したら、俺がイーサンに叱られます」

「うーん、もうこんな事にはならないわ。もしそうなったら、その時はセオに頼むわね」

「自覚症状なしか、堪忍してくれ」

 セオがぶつぶつ呟いているが、リディアは全く気にしていない。
 次の目的地の資料をひたすら読んでいる。


「これから行くオークリーはダーリントン侯爵の領地ね。
羊毛が盛んだし、元々在地剰余で悩んでるって仰ってた方だから、すんなり話は纏まりそうだわ」

「ジョンバーグ伯爵との交渉が難航した時は、オークリーを起点にするのもありかと」

「そうすると、港の様子をしっかり調べなくちゃ。港町って初めて行くからすごく楽しみにしてるの」

「アンヴィルに行く前は、変わり者の領主が楽しみでしたよね」

 セオとマーサが顔を見合わせた。


「「嫌な予感がする」」

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