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アンヴィル
2.埃まみれ
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宿の中もやはり埃っぽい。
三人はくしゃみを我慢しながら部屋にたどり着いた。
「これ、土埃ですよね。馬車が走るたびにすごい砂煙が上がってましたし」
「乾季だから? でもアンヴィルはロレンヌ川から水を引いていて、豊かな穀倉地帯が広がってるって聞いてたんだけど」
外を覗いていたリディアがテラスから外に出た。
くしゅん。
慌てて部屋に戻り窓を閉める。
「取り敢えず、私は部屋を何とかしますね。
掃除が終わったらお湯をもらって身支度いたしましょう。
掃除の後じゃないと、手を洗っても意味がなさそうです」
「荷物も出さない方が良さそうね。
セオ、領主様にこの手紙届けてきてくれる?
明日伺いたいって書いておいたの」
「承知しました。帰り道、少し町の様子を見てまいります」
セオが出かけた後、手持ち無沙汰になったリディアは、
「ねえ、マーサ。宿の人と少しお喋りしてきて良い?」
「お一人でですか? 少し休まれては?」
「ずっと馬車の中だったし、お尻がちょっぴり痛くなっただけでもう大丈夫」
「外には出ないで下さいね。ドアは開けたままにしておきますから、何かあったら大声で叫んでくださいな」
「分かったわ。少しお喋りしたら戻って来るわね」
リディアがパタパタと元気良く飛び出して行く。
(16歳ですから、もう少しお淑やかになって欲しいですねぇ)
マーサは、ベッドからシーツと毛布を剥がしテラスで叩く。テーブルや椅子などの気になる所を、持っていたタオルで拭いた。
隣のセオの部屋でも同じ様に、簡単な掃除をしていた。
暫くしてセオが宿に帰って来ると、カウンターに座って亭主と楽しそうに笑っているリディアの姿があった。
「おかえりなさい。領主様はいらっしゃったかしら」
「はい、明日のお昼前にお会いになるそうです」
「今ね、ガンツさんから色々お話を聞かせて頂いてたの」
「マーサは?」
「お部屋のお掃除中」
「埃っぽくて、すまないねえ。
あれでも毎日掃除はしてるんだが、あっという間に砂まみれになっちまう」
「セオ、良かったら隣に座って話を聞かせて? 町の様子はどうだった?」
セオは、リディアから一つ間を開けて腰掛けた。
「馬車から見た通り、人が全くいませんでした。
店を覗いてみましたがどこも閑古鳥が鳴いてました」
「そりゃそうさ。
一応店を開けちゃいるが、みんな領主にスト何とかってのをやってるからな」
「ストライキよ」
「そう、それそれ。ストラッキだよ」
リディアが教えると、亭主が嬉しそうに繰り返した。
「何でまた」
三人はくしゃみを我慢しながら部屋にたどり着いた。
「これ、土埃ですよね。馬車が走るたびにすごい砂煙が上がってましたし」
「乾季だから? でもアンヴィルはロレンヌ川から水を引いていて、豊かな穀倉地帯が広がってるって聞いてたんだけど」
外を覗いていたリディアがテラスから外に出た。
くしゅん。
慌てて部屋に戻り窓を閉める。
「取り敢えず、私は部屋を何とかしますね。
掃除が終わったらお湯をもらって身支度いたしましょう。
掃除の後じゃないと、手を洗っても意味がなさそうです」
「荷物も出さない方が良さそうね。
セオ、領主様にこの手紙届けてきてくれる?
明日伺いたいって書いておいたの」
「承知しました。帰り道、少し町の様子を見てまいります」
セオが出かけた後、手持ち無沙汰になったリディアは、
「ねえ、マーサ。宿の人と少しお喋りしてきて良い?」
「お一人でですか? 少し休まれては?」
「ずっと馬車の中だったし、お尻がちょっぴり痛くなっただけでもう大丈夫」
「外には出ないで下さいね。ドアは開けたままにしておきますから、何かあったら大声で叫んでくださいな」
「分かったわ。少しお喋りしたら戻って来るわね」
リディアがパタパタと元気良く飛び出して行く。
(16歳ですから、もう少しお淑やかになって欲しいですねぇ)
マーサは、ベッドからシーツと毛布を剥がしテラスで叩く。テーブルや椅子などの気になる所を、持っていたタオルで拭いた。
隣のセオの部屋でも同じ様に、簡単な掃除をしていた。
暫くしてセオが宿に帰って来ると、カウンターに座って亭主と楽しそうに笑っているリディアの姿があった。
「おかえりなさい。領主様はいらっしゃったかしら」
「はい、明日のお昼前にお会いになるそうです」
「今ね、ガンツさんから色々お話を聞かせて頂いてたの」
「マーサは?」
「お部屋のお掃除中」
「埃っぽくて、すまないねえ。
あれでも毎日掃除はしてるんだが、あっという間に砂まみれになっちまう」
「セオ、良かったら隣に座って話を聞かせて? 町の様子はどうだった?」
セオは、リディアから一つ間を開けて腰掛けた。
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「そりゃそうさ。
一応店を開けちゃいるが、みんな領主にスト何とかってのをやってるからな」
「ストライキよ」
「そう、それそれ。ストラッキだよ」
リディアが教えると、亭主が嬉しそうに繰り返した。
「何でまた」
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