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第一章 はじまり
5.お父様からの手紙
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リディアの新しい住まいは、表通りから奥に向けて細長い古い木造のアパートメント。
寝室が3つと応接室兼用の広い居間がある。
貴族令嬢の住まいとして見窄らしすぎると、セオ達からは顰蹙を買っている。
侍女のマーサが手紙を持ってきた。
「お父様からお手紙? やだ、私は遠い修道院に旅立ちましたって返事しといてくれる?
神の国を求めて巡礼の旅に出たとかでも良いわ」
「お返事なさらないと毎日届くようになるかもしれませんよ」
マーサの言葉にリディアは溜息をついた。
「そうよね。開ける前にお祈りしようかしら」
「ぷっ」
マーサが吹き出した。
「不信心なお嬢様には、神様もそっぽ向かれてるかも」
「ちょっと忙しかっただけよ。これからはちゃんと教会に行くわ。絶対」
リディアは手紙を読み、先程よりもっと大きな溜息をついた。
「ロバート様がミリアーナを連れてうちに泊まり込んでるんですって」
「?」
「商会の引き渡しをするようにって」
「まだ誤解が解けてないんですか?」
「うーん、そうみたい。お父様がいくら話しても、ロバート様もミリアーナも納得しないんだって」
マーサがうんうんと頷きながら、
「まあ、王国一の商会の会長が16歳だなんて信じないですよね」
「そうね、商会設立の時は12歳だったし。でも偶々って言うかうっかりそうなっちゃったって言うか」
「旦那様も色々な意味で大変ですね」
「えーっと、“色々” のとこが気になるけど、取り敢えずお父様救出作戦を立てなきゃいけないわよね」
リディアは手紙を書き始めた。
「これを速達で出しておいてくれるかしら」
リディアが書き上がった手紙をマーサに手渡した。
「上手くいきそうですか?」
「公爵家の困窮具合によるのかも」
「公爵家はそんなに困ってらっしゃるのですか?」
「かなりの数の貴族が困窮してるわ。
地代だけでのんびり過ごせる時代じゃなくなってるけど、今まで働いた事の無い人ばかりだから」
「貴族のお付き合いはお金がかかりますしね」
「本当に。お茶会に夜会でしょ、ドレスに高価なアクセサリー」
「旦那様達も、以前は招待状が届く度に青くなっておられましたね」
「ええ、子供心にも貴族って大変だなぁって思ったわ。
代理人による婚姻協議の時、妻の持参金に商会は含まれていなかったの。
だから、ロバート様が伯爵家の誰と結婚しても商会は手に入らないのよ。
その時の書類をロバート様に確認してもらうようお願いしたの」
「ミリアーナ様のことは?」
「そっちの方が問題かも。ミリアーナには昔から言ってるけど理解してくれないのよね」
リディアは今日、3回目の溜息をついた。
寝室が3つと応接室兼用の広い居間がある。
貴族令嬢の住まいとして見窄らしすぎると、セオ達からは顰蹙を買っている。
侍女のマーサが手紙を持ってきた。
「お父様からお手紙? やだ、私は遠い修道院に旅立ちましたって返事しといてくれる?
神の国を求めて巡礼の旅に出たとかでも良いわ」
「お返事なさらないと毎日届くようになるかもしれませんよ」
マーサの言葉にリディアは溜息をついた。
「そうよね。開ける前にお祈りしようかしら」
「ぷっ」
マーサが吹き出した。
「不信心なお嬢様には、神様もそっぽ向かれてるかも」
「ちょっと忙しかっただけよ。これからはちゃんと教会に行くわ。絶対」
リディアは手紙を読み、先程よりもっと大きな溜息をついた。
「ロバート様がミリアーナを連れてうちに泊まり込んでるんですって」
「?」
「商会の引き渡しをするようにって」
「まだ誤解が解けてないんですか?」
「うーん、そうみたい。お父様がいくら話しても、ロバート様もミリアーナも納得しないんだって」
マーサがうんうんと頷きながら、
「まあ、王国一の商会の会長が16歳だなんて信じないですよね」
「そうね、商会設立の時は12歳だったし。でも偶々って言うかうっかりそうなっちゃったって言うか」
「旦那様も色々な意味で大変ですね」
「えーっと、“色々” のとこが気になるけど、取り敢えずお父様救出作戦を立てなきゃいけないわよね」
リディアは手紙を書き始めた。
「これを速達で出しておいてくれるかしら」
リディアが書き上がった手紙をマーサに手渡した。
「上手くいきそうですか?」
「公爵家の困窮具合によるのかも」
「公爵家はそんなに困ってらっしゃるのですか?」
「かなりの数の貴族が困窮してるわ。
地代だけでのんびり過ごせる時代じゃなくなってるけど、今まで働いた事の無い人ばかりだから」
「貴族のお付き合いはお金がかかりますしね」
「本当に。お茶会に夜会でしょ、ドレスに高価なアクセサリー」
「旦那様達も、以前は招待状が届く度に青くなっておられましたね」
「ええ、子供心にも貴族って大変だなぁって思ったわ。
代理人による婚姻協議の時、妻の持参金に商会は含まれていなかったの。
だから、ロバート様が伯爵家の誰と結婚しても商会は手に入らないのよ。
その時の書類をロバート様に確認してもらうようお願いしたの」
「ミリアーナ様のことは?」
「そっちの方が問題かも。ミリアーナには昔から言ってるけど理解してくれないのよね」
リディアは今日、3回目の溜息をついた。
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