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38.初の生徒会室
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昼休憩に食堂でグレイス達と口論をした後アリエノールに会い、放課後生徒会室へ来るように言われた。
シャーロット軍団に睨まれながら午後の授業を終わらせ軍団の一部で所謂『今日の監視チーム』を引き連れて生徒会室にやってきたセアラは生徒会室の入り口で訪い、不満げな監視チームを置いて生徒会室に足を踏み入れた。
正面の大きな机ではアリエノールが座って書類を読んでいたがセアラの顔を見た途端両手の人差し指で口元にバッテンを作った。ドアの横に立っていた女生徒二人がそれを合図に小さく頷いてドアの外に出て行った。
「これで人払いは完了したと思うわ」
今生徒会室を出て行った二人の女生徒はアリエノールの護衛で、生徒会室前でセアラの帰りを待っているはずの監視チームを追い払いに行ってくれたらしい。
ニッコリ笑ったアリエノールが右手でソファを指し示すと、そこには帽子を深く被った男性がゆったりと足を組んで座っていた。その様子は学校関係者ではなさそうだし、制服を着ていないところをからすると生徒でもない。
鼻から下くらいしか見えないその人に見覚えのないセアラはカーテシーするべきか悩んでアリエノールを見遣った。
「お兄様ったら格好をつけても似合いませんわ。道化にでも転職なさるおつもりでないならやめた方がいいですわよ、可哀想にセアラが戸惑ってるわ」
(お兄様!?)
慌ててカーテシーをしたセアラを見たリチャード王子が帽子を脱ぎながら立ち上がった。
「顔を上げて⋯⋯えっと、セアラって呼んでも良いかな? 知ってると思うけど俺はかた苦しいことは苦手なんだ」
「ご無礼致しました。セアラ・レトビアと申します」
「夜会ぶりだね。リチャードと呼んでくれるかな?」
「⋯⋯リチャード⋯⋯王子」
「うーん、初めからはやっぱり無理かな。いつかリチャードと」
「お・に・い・さ・ま?」
可愛く首を傾げたアリエノールの目が怖い。
「うん? アルなんだい?」
アリエノールに向けて返事をしているがリチャードの目はセアラに釘付けになっていて、ウルリカがお腹を押さえて笑っていた。
「フライングはやめてね。セアラが怯えて巣穴に戻っちゃうわ」
「アリエノール様、巣穴は⋯⋯」
「ふふ、中々いい表現だと思ったのだけど。セアラもウルリカも座ってちょうだい、作戦会議をはじめるわ。メアリーアン、新しい紅茶を淹れてくれる?」
アリエノールとリチャードが並んで座りウルリカとセアラがその向かいに並んで座った。
「本当は先にセアラと話を擦り合わせておきたかったのだけど、お兄様が勝手に遊びに来てしまったの」
「だって作戦の要は俺だろ? だったら最初から参加したいと思ってね。それくらいの特典は貰っていいくらい頑張ってる」
「はいはい。横道に逸れない優秀なお兄様はとても頑張ってるから、夜会でわかった事を教えてくれるかしら?」
「⋯⋯あの日アメリアが着けていたネックレスは例の神殿の宝物に間違いないと思う。他国の古いものでレトビア公爵が隠し込んでた物だって言っていた。
それから似たような物が他にもたくさんあることもね」
「やっぱりレトビア公爵が隠しこんでるという事ね」
「多分ね。それからあのアメリアが絶賛するお宝もあるそうだよ。我が国の宝物庫にもない程の品があって結婚式につけるそうだ」
「アメリアはすっかり婚約者気取りなのよね」
「あー、まあ。こうぼやーっと誤魔化した感じにしながら話してはいるんだけどすっかりその気になってる。
レトビア公爵家からお茶会の話が来たら急病になるから宜しく。伝染性の病気に罹って面会謝絶になる予定」
余程嫌な事を思い出したのかリチャードが鼻に皺を寄せた。
「サルドニア帝国に潜入している人にイーバリス神殿について調べてもらってるの。この神殿は歴史がとても古くて神の降臨や天使の顕現なんかの伝説があったし、神の啓示を受けた代々の聖女が祈り神の声を聞く神聖な場所だとも言われていたから帝国ではとても神聖視されていたの」
「イーバリス教の儀式とかを調べてみたらどうでしょうか? 王家の宝物庫にない程の物なら儀式に使う宝物とか、何か記述があるかもしれません。
学園の図書室には神殿関係のものが何もなかったのですが、王立図書館とかなら何か記録があるのではないでしょうか?」
「教会の儀式⋯⋯それは名案だわ。次の定時連絡で伝えてくれる? 宝物の細かい資料がもし見つかったらお兄様に伝えてアメリアを誘導して貰いましょう。
イーバリス神殿に関わる資料は何故か一つも見つからないの。王宮の図書館にもないのはおかしな話よね」
アリエノールの話を聞きながら、ウルリカが頷き手元の手帳に書き込んだ。
「はぁ、そろそろヤバいと思うんだ。突然人前で私達婚約しました~とか叫びそうな気配で⋯⋯。
でもセアラがヒロインならやる気が出る。アメリア避け、宜しく」
「それなんだけどなるべく早い段階でセアラとアメリアの二人を婚約者候補にしてしまうのはどうかしら?」
「と言うと?」
「学園の寮に入ってる間は良いけど休みの日とか長期休暇とかが危険なんじゃないかと思って。婚約者候補になれば王宮で教育がありますって言えば公爵邸に帰らずに済むでしょう?」
「だったら一気に話を進めてはいかがでしょうか?。剣技大会の練習の打ち合わせにリチャード王子殿下が来られた際一目惚れしたと。あながち間違いでもなさそうですし」
どちらかと言うと寡黙なウルリカの爆弾発言にリチャードとセアラが固まった。
「ひと目⋯⋯惚れ!?
「そうね、それでいきましょう。で、状況によっては二人を候補として発表するの。
休日に公爵から呼び出しがあった時はお兄様かわたくしのどちらかと約束している事にして断ってね。事後報告で構わないから名前を出してちょうだい」
「宜しいのですか?」
「ええ、構わないわ。もうすぐ放課後は剣技大会のせいでしょっちゅう会う事になるからその時でも良いわ」
「練習はいつからはじめるんだい?」
シャーロット軍団に睨まれながら午後の授業を終わらせ軍団の一部で所謂『今日の監視チーム』を引き連れて生徒会室にやってきたセアラは生徒会室の入り口で訪い、不満げな監視チームを置いて生徒会室に足を踏み入れた。
正面の大きな机ではアリエノールが座って書類を読んでいたがセアラの顔を見た途端両手の人差し指で口元にバッテンを作った。ドアの横に立っていた女生徒二人がそれを合図に小さく頷いてドアの外に出て行った。
「これで人払いは完了したと思うわ」
今生徒会室を出て行った二人の女生徒はアリエノールの護衛で、生徒会室前でセアラの帰りを待っているはずの監視チームを追い払いに行ってくれたらしい。
ニッコリ笑ったアリエノールが右手でソファを指し示すと、そこには帽子を深く被った男性がゆったりと足を組んで座っていた。その様子は学校関係者ではなさそうだし、制服を着ていないところをからすると生徒でもない。
鼻から下くらいしか見えないその人に見覚えのないセアラはカーテシーするべきか悩んでアリエノールを見遣った。
「お兄様ったら格好をつけても似合いませんわ。道化にでも転職なさるおつもりでないならやめた方がいいですわよ、可哀想にセアラが戸惑ってるわ」
(お兄様!?)
慌ててカーテシーをしたセアラを見たリチャード王子が帽子を脱ぎながら立ち上がった。
「顔を上げて⋯⋯えっと、セアラって呼んでも良いかな? 知ってると思うけど俺はかた苦しいことは苦手なんだ」
「ご無礼致しました。セアラ・レトビアと申します」
「夜会ぶりだね。リチャードと呼んでくれるかな?」
「⋯⋯リチャード⋯⋯王子」
「うーん、初めからはやっぱり無理かな。いつかリチャードと」
「お・に・い・さ・ま?」
可愛く首を傾げたアリエノールの目が怖い。
「うん? アルなんだい?」
アリエノールに向けて返事をしているがリチャードの目はセアラに釘付けになっていて、ウルリカがお腹を押さえて笑っていた。
「フライングはやめてね。セアラが怯えて巣穴に戻っちゃうわ」
「アリエノール様、巣穴は⋯⋯」
「ふふ、中々いい表現だと思ったのだけど。セアラもウルリカも座ってちょうだい、作戦会議をはじめるわ。メアリーアン、新しい紅茶を淹れてくれる?」
アリエノールとリチャードが並んで座りウルリカとセアラがその向かいに並んで座った。
「本当は先にセアラと話を擦り合わせておきたかったのだけど、お兄様が勝手に遊びに来てしまったの」
「だって作戦の要は俺だろ? だったら最初から参加したいと思ってね。それくらいの特典は貰っていいくらい頑張ってる」
「はいはい。横道に逸れない優秀なお兄様はとても頑張ってるから、夜会でわかった事を教えてくれるかしら?」
「⋯⋯あの日アメリアが着けていたネックレスは例の神殿の宝物に間違いないと思う。他国の古いものでレトビア公爵が隠し込んでた物だって言っていた。
それから似たような物が他にもたくさんあることもね」
「やっぱりレトビア公爵が隠しこんでるという事ね」
「多分ね。それからあのアメリアが絶賛するお宝もあるそうだよ。我が国の宝物庫にもない程の品があって結婚式につけるそうだ」
「アメリアはすっかり婚約者気取りなのよね」
「あー、まあ。こうぼやーっと誤魔化した感じにしながら話してはいるんだけどすっかりその気になってる。
レトビア公爵家からお茶会の話が来たら急病になるから宜しく。伝染性の病気に罹って面会謝絶になる予定」
余程嫌な事を思い出したのかリチャードが鼻に皺を寄せた。
「サルドニア帝国に潜入している人にイーバリス神殿について調べてもらってるの。この神殿は歴史がとても古くて神の降臨や天使の顕現なんかの伝説があったし、神の啓示を受けた代々の聖女が祈り神の声を聞く神聖な場所だとも言われていたから帝国ではとても神聖視されていたの」
「イーバリス教の儀式とかを調べてみたらどうでしょうか? 王家の宝物庫にない程の物なら儀式に使う宝物とか、何か記述があるかもしれません。
学園の図書室には神殿関係のものが何もなかったのですが、王立図書館とかなら何か記録があるのではないでしょうか?」
「教会の儀式⋯⋯それは名案だわ。次の定時連絡で伝えてくれる? 宝物の細かい資料がもし見つかったらお兄様に伝えてアメリアを誘導して貰いましょう。
イーバリス神殿に関わる資料は何故か一つも見つからないの。王宮の図書館にもないのはおかしな話よね」
アリエノールの話を聞きながら、ウルリカが頷き手元の手帳に書き込んだ。
「はぁ、そろそろヤバいと思うんだ。突然人前で私達婚約しました~とか叫びそうな気配で⋯⋯。
でもセアラがヒロインならやる気が出る。アメリア避け、宜しく」
「それなんだけどなるべく早い段階でセアラとアメリアの二人を婚約者候補にしてしまうのはどうかしら?」
「と言うと?」
「学園の寮に入ってる間は良いけど休みの日とか長期休暇とかが危険なんじゃないかと思って。婚約者候補になれば王宮で教育がありますって言えば公爵邸に帰らずに済むでしょう?」
「だったら一気に話を進めてはいかがでしょうか?。剣技大会の練習の打ち合わせにリチャード王子殿下が来られた際一目惚れしたと。あながち間違いでもなさそうですし」
どちらかと言うと寡黙なウルリカの爆弾発言にリチャードとセアラが固まった。
「ひと目⋯⋯惚れ!?
「そうね、それでいきましょう。で、状況によっては二人を候補として発表するの。
休日に公爵から呼び出しがあった時はお兄様かわたくしのどちらかと約束している事にして断ってね。事後報告で構わないから名前を出してちょうだい」
「宜しいのですか?」
「ええ、構わないわ。もうすぐ放課後は剣技大会のせいでしょっちゅう会う事になるからその時でも良いわ」
「練習はいつからはじめるんだい?」
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