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51.久々に超ご満悦のクズ
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どれどれと言いながら牢に入ったリリアナが『貴族に愛されるのって超大変、でもまぁアタシは優しくて世界一可愛いお姫様なんだから許してあげなきゃね~』と言いながら粗末なベッドの上を漁っている時、ガチャリと大きな音を立てて鍵が閉まった。
「リリアナの部屋は今日からここに移動になる。何度も言うけどリリアナをこの屋敷に連れてきたのは危険から保護する為だけで、それ以外の理由はないし誤解させるような言動をとった事がない自信もある。
何が起きてるのかは兄のハリーに事情を聞くといい。因みに部屋が地下牢に移動になったのはリリアナの盗み癖と俺や母上への不敬罪だから文句は受け付けない」
「ちょ、何言って⋯⋯アタシはケニスと結婚して伯爵夫人になる為に助けられたんでしょ!? どの本でも助けられたお姫様は王子様と幸せになってるんだからね!」
鉄柵を握りしめてガチャガチャと揺らし蹴ったり叩いたりしながらリリアナが叫んだ。
「嘘つき! 出しなさいよ⋯⋯こっから出せ、出しやがれえ! アタシをこんなとこに閉じ込めて何するつもり!? まさかケニスがアタシに手を出さなかったのって⋯⋯アンタはお姫様を助け出す王子様じゃなくて、美少女を監禁して酷い目にあわせる変態趣味の悪役だったのね!
アタシみたいな可愛い子なら金持ちの貴族んとこに貰われて贅沢三昧できるようになるって父さんや母さんが、兄さん達だって言ってたんだから! さっさと出しなさいよ、アンタなんかじゃなくて本物の王子様に迎えに来てもらうんだから! 騙しやがって、クソ野郎なんかボコボコにしてやる⋯⋯産まれてきたのを後悔するくらいギッチョンギッチョンに切り刻んでやる!!」
「何度も言うが物語で読んだからと言ってそれを俺に当てはめるのはやめてくれ。ハリー、妹のリリアナとよく話し合うといい。時間はたっぷりあるからな」
キーキーと叫び続けるリリアナと呆然としたままのハリーを放置し、牢の粗末なベッドで背中を丸めてイビキをかいているヒューゴや興味津々で柵にしがみつくサリナには一切声をかけずにメイド達と共に一階に上がり鍵を閉めた。
「ケニス様、お疲れ様でございます」
「ああ、君達にも苦労をかけたね。全部終わったら何か礼を考えるからもう少し頼むよ」
「勿論でございます」
(あんな妹の為にワッツの言いなりになってたなんてな。セオドアには期待できそうにないし⋯⋯俺には頭のおかしな弟妹がいなくてラッキーだったけど、流石にハリーが可哀想な気がするなあ。次はセオドアの回収だけど⋯⋯)
ちょうどその頃、メリッサの前には久々に笑顔を振り撒くステファンが座っていた。
「屋敷に入れなくて驚いたけど、メリッサがこっちに⋯⋯商会に来てたせいなのかな? それにしても、ライルは最近少し図に乗ってるみたいだからちゃんと言い聞かせないといけないね」
「今あれこれと忙しくて⋯⋯わざわざ商会に足を運ぶなんて何かご用でしたの?」
メリッサは疲れたふりで顳顬を揉みながら溜息をついた。
「例の真珠がなくなったのがそんなに響いてるのかい?」
「まあ、色々と」
ふふんとほくそ笑んだステファンがメリッサに向かって身を乗り出した。
「少しだけ一緒に外出しないか? 気晴らしをしたらいい案も浮かぶと思うんだけど?」
「今は時間がなくて⋯⋯ご用があるならここでお聞きしますけど?」
小さく溜息をついたメリッサがもう一度顳顬に握り拳を当てて溜息をついた。
(この後の予定は何だっけ⋯⋯昨夜遅くまで起きてたから眠いんだよな~)
「う~ん、もしかしてだけどメリッサは仕事のしすぎなんじゃないかなぁ。で、考えたんだけど⋯⋯俺が商会の仕事を代行してあげるよ。そうすればゆっくり休めるだろ?」
ステファンが上着の内ポケットから羊皮紙を取り出してテーブルの上に置いた。
「メリッサが担当している商会の経理とか在庫管理を代行する為の委任状なんだけど、これにサインしたらあとは俺が上手くやってあげる。その後は一気に楽になるからね」
メリッサは書類を手に取り斜め読み⋯⋯する程の内容もない書類を眺めた。
(こう予想通りだとステファンの頭が心配になりそう。これでうまくいくと本気で思ってるのかなあ)
「お父様のサインなら違いますけど、私のサインじゃ何もできないと思いますよ?」
「それはメリッサが平民だからだよ。俺は貴族だから信用があるし商会長の義息子だから大丈夫。銀行だってどこだって言うことを聞くに決まってるだろ?」
貴族至上主義のこの国では平民の発言より低位であっても貴族の意見が尊重される。貴族が鴉は白いと言えば平民はそれに従い白だと言わなければならないと嫌味を言う人がいるほど。
(でも、これは流石に無理。銀行もどこもうんって言うわけない⋯⋯あり得ないよねえ。せめて図書館に行って調べて作れば良かったのに)
書類には『妻のメリッサに代わり商会長ルーカスの義息子ステファン・コークに権利を移行する』と書かれていた。
(この書類の形式とか書き方とかありえないんだけど? 大学卒業してるから弁護士になりたいとか言ってる人がこんな書類作るとか、銀行で笑われちゃうよ?)
司法書士や弁護士に書類作成を依頼する金のないステファンはうろ覚えの知識で書類を作ってきたらしいがあまりにもお粗末すぎて笑いさえ出てこない。
ページのトップには委任状と書かれているのに権利の移行となっている。それをスルーしたとしても、どの権利についてなのか詳細に書かれていない書類はそれだけで役に立たない。
そもそもメリッサはステファンと婚約した時点で父の財産やモートン商会に対する全ての権利を放棄しているのでなんの権利も持っておらず、個人資産は全てルーカスに委任している。
(私が偽の妻なんだから義息子じゃないしね~、それって結婚証明を取りに行ったらすぐに分かる事なんだけどなあ)
平民学校に通う子供達でも首を傾げる可能性のある代物を堂々と目の前に突き出しているステファンは相変わらず自信満々。
「明日まで待ってもらえますか? 取りに来てくれるならそれまでにサインしておきますから」
「リリアナの部屋は今日からここに移動になる。何度も言うけどリリアナをこの屋敷に連れてきたのは危険から保護する為だけで、それ以外の理由はないし誤解させるような言動をとった事がない自信もある。
何が起きてるのかは兄のハリーに事情を聞くといい。因みに部屋が地下牢に移動になったのはリリアナの盗み癖と俺や母上への不敬罪だから文句は受け付けない」
「ちょ、何言って⋯⋯アタシはケニスと結婚して伯爵夫人になる為に助けられたんでしょ!? どの本でも助けられたお姫様は王子様と幸せになってるんだからね!」
鉄柵を握りしめてガチャガチャと揺らし蹴ったり叩いたりしながらリリアナが叫んだ。
「嘘つき! 出しなさいよ⋯⋯こっから出せ、出しやがれえ! アタシをこんなとこに閉じ込めて何するつもり!? まさかケニスがアタシに手を出さなかったのって⋯⋯アンタはお姫様を助け出す王子様じゃなくて、美少女を監禁して酷い目にあわせる変態趣味の悪役だったのね!
アタシみたいな可愛い子なら金持ちの貴族んとこに貰われて贅沢三昧できるようになるって父さんや母さんが、兄さん達だって言ってたんだから! さっさと出しなさいよ、アンタなんかじゃなくて本物の王子様に迎えに来てもらうんだから! 騙しやがって、クソ野郎なんかボコボコにしてやる⋯⋯産まれてきたのを後悔するくらいギッチョンギッチョンに切り刻んでやる!!」
「何度も言うが物語で読んだからと言ってそれを俺に当てはめるのはやめてくれ。ハリー、妹のリリアナとよく話し合うといい。時間はたっぷりあるからな」
キーキーと叫び続けるリリアナと呆然としたままのハリーを放置し、牢の粗末なベッドで背中を丸めてイビキをかいているヒューゴや興味津々で柵にしがみつくサリナには一切声をかけずにメイド達と共に一階に上がり鍵を閉めた。
「ケニス様、お疲れ様でございます」
「ああ、君達にも苦労をかけたね。全部終わったら何か礼を考えるからもう少し頼むよ」
「勿論でございます」
(あんな妹の為にワッツの言いなりになってたなんてな。セオドアには期待できそうにないし⋯⋯俺には頭のおかしな弟妹がいなくてラッキーだったけど、流石にハリーが可哀想な気がするなあ。次はセオドアの回収だけど⋯⋯)
ちょうどその頃、メリッサの前には久々に笑顔を振り撒くステファンが座っていた。
「屋敷に入れなくて驚いたけど、メリッサがこっちに⋯⋯商会に来てたせいなのかな? それにしても、ライルは最近少し図に乗ってるみたいだからちゃんと言い聞かせないといけないね」
「今あれこれと忙しくて⋯⋯わざわざ商会に足を運ぶなんて何かご用でしたの?」
メリッサは疲れたふりで顳顬を揉みながら溜息をついた。
「例の真珠がなくなったのがそんなに響いてるのかい?」
「まあ、色々と」
ふふんとほくそ笑んだステファンがメリッサに向かって身を乗り出した。
「少しだけ一緒に外出しないか? 気晴らしをしたらいい案も浮かぶと思うんだけど?」
「今は時間がなくて⋯⋯ご用があるならここでお聞きしますけど?」
小さく溜息をついたメリッサがもう一度顳顬に握り拳を当てて溜息をついた。
(この後の予定は何だっけ⋯⋯昨夜遅くまで起きてたから眠いんだよな~)
「う~ん、もしかしてだけどメリッサは仕事のしすぎなんじゃないかなぁ。で、考えたんだけど⋯⋯俺が商会の仕事を代行してあげるよ。そうすればゆっくり休めるだろ?」
ステファンが上着の内ポケットから羊皮紙を取り出してテーブルの上に置いた。
「メリッサが担当している商会の経理とか在庫管理を代行する為の委任状なんだけど、これにサインしたらあとは俺が上手くやってあげる。その後は一気に楽になるからね」
メリッサは書類を手に取り斜め読み⋯⋯する程の内容もない書類を眺めた。
(こう予想通りだとステファンの頭が心配になりそう。これでうまくいくと本気で思ってるのかなあ)
「お父様のサインなら違いますけど、私のサインじゃ何もできないと思いますよ?」
「それはメリッサが平民だからだよ。俺は貴族だから信用があるし商会長の義息子だから大丈夫。銀行だってどこだって言うことを聞くに決まってるだろ?」
貴族至上主義のこの国では平民の発言より低位であっても貴族の意見が尊重される。貴族が鴉は白いと言えば平民はそれに従い白だと言わなければならないと嫌味を言う人がいるほど。
(でも、これは流石に無理。銀行もどこもうんって言うわけない⋯⋯あり得ないよねえ。せめて図書館に行って調べて作れば良かったのに)
書類には『妻のメリッサに代わり商会長ルーカスの義息子ステファン・コークに権利を移行する』と書かれていた。
(この書類の形式とか書き方とかありえないんだけど? 大学卒業してるから弁護士になりたいとか言ってる人がこんな書類作るとか、銀行で笑われちゃうよ?)
司法書士や弁護士に書類作成を依頼する金のないステファンはうろ覚えの知識で書類を作ってきたらしいがあまりにもお粗末すぎて笑いさえ出てこない。
ページのトップには委任状と書かれているのに権利の移行となっている。それをスルーしたとしても、どの権利についてなのか詳細に書かれていない書類はそれだけで役に立たない。
そもそもメリッサはステファンと婚約した時点で父の財産やモートン商会に対する全ての権利を放棄しているのでなんの権利も持っておらず、個人資産は全てルーカスに委任している。
(私が偽の妻なんだから義息子じゃないしね~、それって結婚証明を取りに行ったらすぐに分かる事なんだけどなあ)
平民学校に通う子供達でも首を傾げる可能性のある代物を堂々と目の前に突き出しているステファンは相変わらず自信満々。
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