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56.毒親の末路ともう一つの問題
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翌日国王からの親書を携えた使者が帝国に送り出された。
謁見室に無断で乱入し彼らがしでかしたことや皇帝の血縁から発せられた言葉を一字一句違わず記した親書は帝王と重鎮達を震え上がらせた。
アンガス達3名はロニーを含む使者達と交換の条件で引き渡された。
自分達はどうせ大した罪にはならないと高を括っているアンガスは帝国兵に向けて唾を吐き堂々とした態度で王国兵の元へ歩いて来た。
「さっさとこの縄を外してくだせえ。肩が痛くてしょうがねえんで」
「帝国はやりすぎよねえ。私達は被害者でもあるんだから」
「ねえ、着替えは? 宿にはいつ着くの?」
帝国では牢に入れられ尋問されはしたが詐欺の首謀者は王国にいるソフィーだと思われていたせいか、アンガス達は比較的呑気に過ごしていたらしい。
「考えようによっちゃあ3食昼寝付きってやつだしな。おい、飯はまだか?」
「さっさとソフィーを連れて来てくれないかしら? ここはあの子にこそお似合いよ」
「ねえ、髪を洗いたいの。ちょっとだけここから出してくださらない? お礼に楽しませてあげるわ」
それに比べて王国での尋問は苛烈を極めた。のらりくらりと言い逃れをするつもりだった3人は直ぐに慌てて叫びはじめた。
「ソフィーを連れてこい! ワシが一言言えば話は片がつく!」
「ソフィーのせいだって言ってるでしょ!」
「おい、王様のとこに連れて行け! ワシは王様に関係する秘密を知っとるんだぞ。バラされたくなけりゃさっさとここから出しやがれ!」
厳しい詮議に根を上げたアンガス達はあっという間に全てを白状した。
ソフィーから金を搾り取るよりも詐欺で人を騙し全ての罪をソフィーに被せる方が楽しそうだったから・・。
『長年ワシたちを無視した罰を与えようとしただけ』
『産んでやったってのに親孝行の一つもしない子には、うんと嫌な思いをさせたかったのよ』
『会社だの学校だの! チャンスさえあれば私の方が知恵が回って頭がいいんだって証明してやろうと思ったのよ』
アンガス達3人は裁判を受けることなく牢の中で1週間百回の鞭打ちを受け続けた後処刑された。
ソフィーとレオはもう一つの問題を片付ける為に保育学校にやって来た。
馬車を降り新しくなった門扉を開けて玄関に向かって歩いているとハーフアップにしたブロンドを風に靡かせながらサラが走り出して来た。
「「ブロンド?」」
サラの栗色だった髪は以前より少し短くなり明るいブロンドに変わっていた。強力な染料を使ったのか艶を失い酷くパサついている。ソフィーのいつもの髪型に似ている。
「レオ様、お久しぶりです。ようやく会えましたね、ずっと待ってたんですよ?」
髪を意識してか毛先を持って上目遣いにレオを見上げた。
「あの、どうですか? レオ様の好みに近づいた? すっごく頑張ったんですよ。アルカリで洗った髪を太陽光に数時間もさらし続けて脱色したの。
でもちょっぴり色が違う気がするから、かつらも準備してあるわ。
眼鏡は特別な時に外すわね。特別な時ってわかる? きゃっ、恥ずかしい」
息つく暇もなく話し続けるサラの攻撃にソフィーとレオが途方に暮れて立ち尽くしているとローリーがサラの後ろから声をかけた。
「ソフィー、中でみんなが待ってますよ」
「レオ様、一緒に行きましょう。エスコートしてね」
ソフィーを押し退けてサラがレオの腕にしがみついた。
「サラ、2階で少し話したいんだけど良いかしら」
「今忙しいんで後にしてください。仮病はもう治ったんでしょう? ソフィーは子供達と遊んでて下さい」
「サラ、今すぐ2階へ。これは業務命令です」
珍しくソフィーが厳しい声を出すとサラはソフィーをキッと睨んでからレオを見上げた。
「レオ様、ソフィーが怖い」
「サラはなんでソフィーを呼び捨てにしてるんだ?」
「えっ? みんなソフィーって呼んでるし? ローリーや子供達まで」
「ソフィーの許可はもらったのか?」
腕にしがみつくサラの手を外しながらレオが不快そうな顔で聞いた。
「レオ様、お顔が怖くなってる。サラの前ではにっこりしなくちゃ」
「2階に行きましょう。ローリー、子供達とはゆっくりおしゃべりしたいから先に片付ける。後から来てくれる?」
「はい、子供達に声をかけたらジェニーと一緒に参ります」
問題は予想以上に深刻化していたようでソフィーはここ暫くの間にどれだけの迷惑をかけたのか考えて頭を抱えたくなった。
(全くの別人みたいって思ってたら、話し方や見た目まで別人になってた)
「レオ様、2階に上がったら美味しい紅茶を淹れてあげる。勿論コンフェッティも焼いて来てるから持ってくるし。レオ様が来た時の為に毎晩焼いて準備してたの」
階段を上がる間もサラはレオの腕を捕まえてピッタリと張り付いている。
ソフィーとレオが応接室に入ると『コンフェッティ持ってきて紅茶はそのあと入れたげる』と言って事務所に走って行った。
「予想以上に激化してる」
「もしレオがサラの事を「ない! 知ってるだろう? もう一度ここで言ったほうが良ければ言う」」
レオがソフィーの肩を両手で掴んで揺さぶった。
「はい、ごめん」
「レオ様、どうしたの? ソフィーに何か言われたの?」
「取り敢えず座って」
「レオ様、座って。紅茶を「サラ、今は業務時間内なの。仕事の話をしましょう」」
ローリーとジェニーが応接室に入って来た。
「はあ、どうぞ。焼き餅はカッコ悪いと思うけど我慢してあげるわね」
ソフィーが1人で座りローリーとジェニーが並んで座った向かい側にサラが腰掛けた。
「レオ様、窓際に立ってなくても私の横に座って」
「いや、俺は今の所部外者だからここでいい」
「じゃ、早く話を終わらせてくれる?」
「サラ、仕事内容に不満があるの?」
謁見室に無断で乱入し彼らがしでかしたことや皇帝の血縁から発せられた言葉を一字一句違わず記した親書は帝王と重鎮達を震え上がらせた。
アンガス達3名はロニーを含む使者達と交換の条件で引き渡された。
自分達はどうせ大した罪にはならないと高を括っているアンガスは帝国兵に向けて唾を吐き堂々とした態度で王国兵の元へ歩いて来た。
「さっさとこの縄を外してくだせえ。肩が痛くてしょうがねえんで」
「帝国はやりすぎよねえ。私達は被害者でもあるんだから」
「ねえ、着替えは? 宿にはいつ着くの?」
帝国では牢に入れられ尋問されはしたが詐欺の首謀者は王国にいるソフィーだと思われていたせいか、アンガス達は比較的呑気に過ごしていたらしい。
「考えようによっちゃあ3食昼寝付きってやつだしな。おい、飯はまだか?」
「さっさとソフィーを連れて来てくれないかしら? ここはあの子にこそお似合いよ」
「ねえ、髪を洗いたいの。ちょっとだけここから出してくださらない? お礼に楽しませてあげるわ」
それに比べて王国での尋問は苛烈を極めた。のらりくらりと言い逃れをするつもりだった3人は直ぐに慌てて叫びはじめた。
「ソフィーを連れてこい! ワシが一言言えば話は片がつく!」
「ソフィーのせいだって言ってるでしょ!」
「おい、王様のとこに連れて行け! ワシは王様に関係する秘密を知っとるんだぞ。バラされたくなけりゃさっさとここから出しやがれ!」
厳しい詮議に根を上げたアンガス達はあっという間に全てを白状した。
ソフィーから金を搾り取るよりも詐欺で人を騙し全ての罪をソフィーに被せる方が楽しそうだったから・・。
『長年ワシたちを無視した罰を与えようとしただけ』
『産んでやったってのに親孝行の一つもしない子には、うんと嫌な思いをさせたかったのよ』
『会社だの学校だの! チャンスさえあれば私の方が知恵が回って頭がいいんだって証明してやろうと思ったのよ』
アンガス達3人は裁判を受けることなく牢の中で1週間百回の鞭打ちを受け続けた後処刑された。
ソフィーとレオはもう一つの問題を片付ける為に保育学校にやって来た。
馬車を降り新しくなった門扉を開けて玄関に向かって歩いているとハーフアップにしたブロンドを風に靡かせながらサラが走り出して来た。
「「ブロンド?」」
サラの栗色だった髪は以前より少し短くなり明るいブロンドに変わっていた。強力な染料を使ったのか艶を失い酷くパサついている。ソフィーのいつもの髪型に似ている。
「レオ様、お久しぶりです。ようやく会えましたね、ずっと待ってたんですよ?」
髪を意識してか毛先を持って上目遣いにレオを見上げた。
「あの、どうですか? レオ様の好みに近づいた? すっごく頑張ったんですよ。アルカリで洗った髪を太陽光に数時間もさらし続けて脱色したの。
でもちょっぴり色が違う気がするから、かつらも準備してあるわ。
眼鏡は特別な時に外すわね。特別な時ってわかる? きゃっ、恥ずかしい」
息つく暇もなく話し続けるサラの攻撃にソフィーとレオが途方に暮れて立ち尽くしているとローリーがサラの後ろから声をかけた。
「ソフィー、中でみんなが待ってますよ」
「レオ様、一緒に行きましょう。エスコートしてね」
ソフィーを押し退けてサラがレオの腕にしがみついた。
「サラ、2階で少し話したいんだけど良いかしら」
「今忙しいんで後にしてください。仮病はもう治ったんでしょう? ソフィーは子供達と遊んでて下さい」
「サラ、今すぐ2階へ。これは業務命令です」
珍しくソフィーが厳しい声を出すとサラはソフィーをキッと睨んでからレオを見上げた。
「レオ様、ソフィーが怖い」
「サラはなんでソフィーを呼び捨てにしてるんだ?」
「えっ? みんなソフィーって呼んでるし? ローリーや子供達まで」
「ソフィーの許可はもらったのか?」
腕にしがみつくサラの手を外しながらレオが不快そうな顔で聞いた。
「レオ様、お顔が怖くなってる。サラの前ではにっこりしなくちゃ」
「2階に行きましょう。ローリー、子供達とはゆっくりおしゃべりしたいから先に片付ける。後から来てくれる?」
「はい、子供達に声をかけたらジェニーと一緒に参ります」
問題は予想以上に深刻化していたようでソフィーはここ暫くの間にどれだけの迷惑をかけたのか考えて頭を抱えたくなった。
(全くの別人みたいって思ってたら、話し方や見た目まで別人になってた)
「レオ様、2階に上がったら美味しい紅茶を淹れてあげる。勿論コンフェッティも焼いて来てるから持ってくるし。レオ様が来た時の為に毎晩焼いて準備してたの」
階段を上がる間もサラはレオの腕を捕まえてピッタリと張り付いている。
ソフィーとレオが応接室に入ると『コンフェッティ持ってきて紅茶はそのあと入れたげる』と言って事務所に走って行った。
「予想以上に激化してる」
「もしレオがサラの事を「ない! 知ってるだろう? もう一度ここで言ったほうが良ければ言う」」
レオがソフィーの肩を両手で掴んで揺さぶった。
「はい、ごめん」
「レオ様、どうしたの? ソフィーに何か言われたの?」
「取り敢えず座って」
「レオ様、座って。紅茶を「サラ、今は業務時間内なの。仕事の話をしましょう」」
ローリーとジェニーが応接室に入って来た。
「はあ、どうぞ。焼き餅はカッコ悪いと思うけど我慢してあげるわね」
ソフィーが1人で座りローリーとジェニーが並んで座った向かい側にサラが腰掛けた。
「レオ様、窓際に立ってなくても私の横に座って」
「いや、俺は今の所部外者だからここでいい」
「じゃ、早く話を終わらせてくれる?」
「サラ、仕事内容に不満があるの?」
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