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46.キャンキャン吠えられる

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「ノーコメント」

「何故?」

「どっちの答えを選んでも結果は一緒だから。騎士道精神なんてひけらかしてもらいたくないの。私がYESと答えたら多分レオはじゃあ俺が守ってやるって言いそう」

「当然だろ?」

「NOって答えても同じことを言うでしょう?」

「それって答えを誤魔化してないか?」

「人の手は借りない。これ以上誰にも迷惑はかけないって決めてるから。あの人達がこれ以上馬鹿なことをやるなら私には考えがあるし、準備も済んでる」

「何をするつもりだ?」

「・・遅くなったし今日はもう終わりにしましょう。レオにはちゃんと理由を説明したいと思っただけなの。有耶無耶にしたり誤魔化したりしたくなかったから」

「返事はYESかNOかの2択だ。3つ目の答えはない」

「それは見解の相違。私の中では3択問題だったもの。兎に角、私には恋愛云々って言う資格はないって事を説明したかっただけなの」






「レオ兄様、今日の顔はエゲツない。従僕がお漏らししちゃうからやめて!」

「・・」

「うーん、慰めてほしい? それともレオ兄様の為ならいくらでも相談に乗るわよ?」

「いや、こいつは俺の問題だからな」

(ふむ、そろそろ独り立ちの季節? 寂しぃ(泣) でも、レオ兄様の幸せは私が守る!! 3年かけた計画なんだから気合い入れて頑張ろ? ねっ?・・)


「レストランはどうだった?」

「・・派手だった。ジャなんとかって言う様式だった。ありがとうって言ってたな」

(嫌がってなかったって事は貴族の暮らしも平気そうね)

「ジャコビアン様式ね。あれは優雅で女性なら絶対気にいるって思ったのよね」

「凄く・・綺麗だった」


(ん? 部屋の事? なんかニュアンス違くない?)

「何色だった?」

「薄い紫と濃い紫が重なって、あとはレース。兎に角綺麗だったぞ」

(んー? ああ、ドレスの事かぁ。レオ兄様、大好きだけど大好きだけど語彙力が残念過ぎて(笑)・・)


「断られたの?」

「・・」

(ん? 違うの?)

「ノーコメントだそうだ。断られたって事だよな」

「・・ねえ、ソロソロ片言トークやめてさぁ・・ねえ・・聞いてる?・・あー、もー、すっげえイライラする! 吐け吐け! グダグダ言ってねえで、さっさとー吐けぇー!!」

 ジョシュアがむんずとレオの襟首を掴んで絶叫した。







「レオさまはソフィーとけんかしたの?」
「おれのオヤツあげるから、なかなおりすれば?」

 ソフィーとレオが食事に行った日から10日目、レオは子供達に囲まれて吊し上げを食っていた。
 この10日間ソフィーはお昼過ぎまで保育学校で仕事をこなし昼食後暫くすると会社に戻る生活を続けている。レオはサラの攻撃を交わしながらソフィーと話し合うチャンスを狙っていたが未だに攻略方法が思いつかないでいた。

(今まで通りにしてるつもりだが、子供の目は誤魔化せないか・・)

「喧嘩はしてない。2人ともちょっと忙しいからそんなふうに見えたのかもな」

「サラのせい?」
「レオさまにベタベタしてるから」
「サルースとパークスもきらってるよねー」
「だってサラはくさいもん」

 サラは子供達と遊んでいるレオのところへやってきてはキャンキャンと吠えられている。サラのつける香水がキツすぎるのが原因だと言うのが子供達の予想。

「サラは関係ないぞ。ただ本当「レオ様、私の話をしてくださっていたんですか? 凄く嬉しいです。この後少しお時間頂けますか? ソフィーさんの事でお話があるんでございます。
コンフェッティを作ってきたので、紅茶と一緒に召し上がっていただこうと思って2階の空き部屋にテーブルを準備したんでございます」」

「ここはソフィーのがっこうだから、へやをかってにつかっちゃだめだ!」
「サラはわるいことばをつかうからダメ!!」

「全く躾のなってない子達だことね。レオ様の前で嘘をつくなんて最低。やっぱりソフィーには学校なんて無理なんだわ」

「ソフィーのわるくちをいうなー」
「だいっきらい、あっちいってー!」

 サルースとパークスもレオの足元でうーうーと唸っている。レオは2匹を抱き上げて子供に渡して、

「ちょっとサラと話してくるからコイツら仔犬達の面倒を見ててくれるか?」

「・・うん」
「いいよ」


 元気のない子供達をよそに満面の笑みを浮かべたサラがレオの腕に腕を絡ませてぐいぐいと腕を引っ張った。

「では2階に参りましょう。美味しい紅茶が淹れられるように練習したんです。是非味わっていただきたいんですわ」

「2階ではなく向こうのベンチで話そう。サラは独身女性なんだ。男と2人きりになるのはまずい」

「まあ、私の評判を気にするなんてレオ様はお優しい方ですわ。では、散歩を兼ねてエスコートしてくださいませですわ」


 無理やり振り解くこともできず、サラを腕にぶら下げたまま庭を横切りベンチにサラを腰掛けさせた。

「で、話と言うのは?」

「ここにテーブルを置いて紅茶をお出しすれば良かったですね。ここの四阿なんかじゃ雰囲気がありませんですし。テーブルが関の山ですわよ」

「・・」

「コンフェッティには胡桃を入れてみましたの。レオ様は胡桃はお好きですかしら」


 ここ数日のサラの口調はどんどん貴族風になっていっている。

(恐らくローリーの真似をしているのだとは思うが笑いを堪えるのに苦労する)

「ソフィーがレオ様に振られたのは仕方ありませんですわ」

「ソフィーが振られた?」

「ええ、そのせいでここ数日落ち込んで・・高望みをし過ぎたのですわ。分不相応って言うのでしたかしら?」

「・・本題に入ってくれないか?」

「そうですね、こんなところではゆっくりできませんですもの。ご存じないでしょうがソフィーは平民学校さえ行ってないんです。それにとても下品な親がいてしょっちゅう会社にお金の無心に来てましたですのよ。
そんな人が会社の資本金どうしたと思います? レディの口からハッキリとは言えないですけどね、ソフィーはちょくちょく着飾って出かけていくんですわ。とても裕福な紳士と・・レオ様ならその意味お分かりでしょう?」

 レオは頭の中が真っ白になった。もしサラが男だったらこの場で縊り殺していただろう。

(この女はソフィーがそうやって資金を貢がせていると言っているのか!?)

「ご理解頂いて良かったですの。今夜もう少し詳しい話をしません? そろそろレオ様のお屋敷に連れて行っていただけでも良いころなのですもの。貴族街のあのお屋敷すごく素敵です。私ならもっともっと素敵にできます。安心して任せてくださいね。
ある人が教えてくれたんですけど私のように眼鏡が必要な子は特別な時に眼鏡を外すと素敵なんですって・・」

 赤い顔でレオを見上げるサラの分厚い眼鏡が太陽の光でキラリと光った。

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