36 / 37
36.全てが終わり
しおりを挟む
「オリッシモ枢機卿は今、陛下と緊急の対談をされている事になってるんだ」
ライオネル王子が説明をはじめた。
「アンドリュー教授がオリッシモ枢機卿に連絡をとってくださったんだが、枢機卿のスケジュールが一杯で身動きが取れなくて」
「いくら私でも、国王陛下からのご指示をはねつけることはできないと言うことで何とか時間を作りました」
オリッシモ枢機卿はにっこりと笑って話した。
「お陰で教会関係者の不正を正すことができたので、国王陛下にはお礼状を送らねばなりませんね」
「あの、何だかとんでもない事になってしまったようで・・感謝の言葉も見つかりません」
「近年復活して来た魔女狩りについては憂慮しています。無実の者が不当な扱いを受けぬよう心せねばと」
枢機卿とアンドリュー教授達が帰って行き、アイヴィとライオネル王子、カリタス修道士の三人が部屋に残った。
王子の護衛達は壁際に整列している。
「ライオネル王子、色々ありがとうございました。
お陰で命拾いしました」
「元はと言えば王家のせいだからね。お礼を言われるとなんだか・・」
「おい、俺には何もないのかよ」
アイヴィはチラッと横目で見て、
「用足しにいそいそついてくるような変態には何も申し上げる事はございません」
「いそいそじゃねえし。他の奴なら聞かれても良かったって言うのかよ」
「きっ、聞いたとか・・恥を知りなさいよ! 私がどれだけ恥ずかしかったか分かってるの?」
「分かってるよ、だから他の奴には任せなかったんじゃねえか」
「途中知らん振りだったくせに」
「仕方ないだろ、あそこでお前を助け出しても追われるだけで何にも変わんねえだろうが」
「拷問にかけられてたかも・・」
「そんな事させねえよ」
「水審で溺れ死んでたかも・・」
「だから、絶対にないって」
「怖かったんだから・・もしもって」
「悪かったよ、でもなお前が逃げ出さなきゃここまで大変な事にはならなかったんだぞ」
「誰のせいよ。何考えてるのかもわかんないし、気がつくと後ろに潜んでるし」
「次から大きな音立てて歩いてやるよ」
「勝手なことするし」
「未遂だろ」
「・・」
ライオネル王子が笑い出し、
「さて邪魔者は退散します。落ち着いたら王宮に遊びに来てくれますか?
陛下とジュリアが首を長くして待っていますから」
「はい。あっ、王子殿下にお願いがあります。
最近砦の物資が不足しているそうです。
もし良かったら調べて頂けると嬉しいのですが」
「分かりました、直ぐに人をやって調べさせます。ありがとう」
立ち上がった王子がカリタス修道士に、
「そうだ、物資と共に砦に医師を派遣します。その方が後々助かるでしょう?」
ライオネル王子が護衛と共に帰って行った。
「さて、私は砦に帰らなくちゃ」
「さっき王子が言ってたの聞いてなかったのかよ」
「聞いてたわ。医師が三人になればもっと助かるもの」
「俺を押しのけていける自信があるのか?」
「騎士って大変な職業ね。今まで怪我や病気のことしか考えてなかったけど、近くにいていろんなことを考えさせられた。
戦いに戻るんでしょ? 気を付けて」
「・・もう戻らないって決めたんだ。お前の側にいる。俺は有期誓願しか立ててないから簡単に退会できるんだ」
「・・」
「ずっと戦って来たからなあ、今度は助ける側になるのも悪くないと思ってな」
「ずっと纏わりつくつもり?」
「もうちょっと穏やかな言い方で頼むよ」
「・・ずっと側にいてくれるの?」
「ああ、この間の続きが待ってるからな」
ライオネル王子が説明をはじめた。
「アンドリュー教授がオリッシモ枢機卿に連絡をとってくださったんだが、枢機卿のスケジュールが一杯で身動きが取れなくて」
「いくら私でも、国王陛下からのご指示をはねつけることはできないと言うことで何とか時間を作りました」
オリッシモ枢機卿はにっこりと笑って話した。
「お陰で教会関係者の不正を正すことができたので、国王陛下にはお礼状を送らねばなりませんね」
「あの、何だかとんでもない事になってしまったようで・・感謝の言葉も見つかりません」
「近年復活して来た魔女狩りについては憂慮しています。無実の者が不当な扱いを受けぬよう心せねばと」
枢機卿とアンドリュー教授達が帰って行き、アイヴィとライオネル王子、カリタス修道士の三人が部屋に残った。
王子の護衛達は壁際に整列している。
「ライオネル王子、色々ありがとうございました。
お陰で命拾いしました」
「元はと言えば王家のせいだからね。お礼を言われるとなんだか・・」
「おい、俺には何もないのかよ」
アイヴィはチラッと横目で見て、
「用足しにいそいそついてくるような変態には何も申し上げる事はございません」
「いそいそじゃねえし。他の奴なら聞かれても良かったって言うのかよ」
「きっ、聞いたとか・・恥を知りなさいよ! 私がどれだけ恥ずかしかったか分かってるの?」
「分かってるよ、だから他の奴には任せなかったんじゃねえか」
「途中知らん振りだったくせに」
「仕方ないだろ、あそこでお前を助け出しても追われるだけで何にも変わんねえだろうが」
「拷問にかけられてたかも・・」
「そんな事させねえよ」
「水審で溺れ死んでたかも・・」
「だから、絶対にないって」
「怖かったんだから・・もしもって」
「悪かったよ、でもなお前が逃げ出さなきゃここまで大変な事にはならなかったんだぞ」
「誰のせいよ。何考えてるのかもわかんないし、気がつくと後ろに潜んでるし」
「次から大きな音立てて歩いてやるよ」
「勝手なことするし」
「未遂だろ」
「・・」
ライオネル王子が笑い出し、
「さて邪魔者は退散します。落ち着いたら王宮に遊びに来てくれますか?
陛下とジュリアが首を長くして待っていますから」
「はい。あっ、王子殿下にお願いがあります。
最近砦の物資が不足しているそうです。
もし良かったら調べて頂けると嬉しいのですが」
「分かりました、直ぐに人をやって調べさせます。ありがとう」
立ち上がった王子がカリタス修道士に、
「そうだ、物資と共に砦に医師を派遣します。その方が後々助かるでしょう?」
ライオネル王子が護衛と共に帰って行った。
「さて、私は砦に帰らなくちゃ」
「さっき王子が言ってたの聞いてなかったのかよ」
「聞いてたわ。医師が三人になればもっと助かるもの」
「俺を押しのけていける自信があるのか?」
「騎士って大変な職業ね。今まで怪我や病気のことしか考えてなかったけど、近くにいていろんなことを考えさせられた。
戦いに戻るんでしょ? 気を付けて」
「・・もう戻らないって決めたんだ。お前の側にいる。俺は有期誓願しか立ててないから簡単に退会できるんだ」
「・・」
「ずっと戦って来たからなあ、今度は助ける側になるのも悪くないと思ってな」
「ずっと纏わりつくつもり?」
「もうちょっと穏やかな言い方で頼むよ」
「・・ずっと側にいてくれるの?」
「ああ、この間の続きが待ってるからな」
0
お気に入りに追加
210
あなたにおすすめの小説

妹に婚約者を奪われたので妹の服を全部売りさばくことに決めました
常野夏子
恋愛
婚約者フレデリックを妹ジェシカに奪われたクラリッサ。
裏切りに打ちひしがれるも、やがて復讐を決意する。
ジェシカが莫大な資金を投じて集めた高級服の数々――それを全て売りさばき、彼女の誇りを粉々に砕くのだ。
不遇な王妃は国王の愛を望まない
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。
※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷
※稚拙ながらも投稿初日からHOTランキング(2024.11.21)に入れて頂き、ありがとうございます🙂 今回初めて最高ランキング5位(11/23)✨ まさに感無量です🥲
毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。
克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。


【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?
水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。
日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。
そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。
一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。
◇小説家になろうにも掲載中です!
◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています

やんちゃな公爵令嬢の駆け引き~不倫現場を目撃して~
岡暁舟
恋愛
名門公爵家の出身トスカーナと婚約することになった令嬢のエリザベート・キンダリーは、ある日トスカーナの不倫現場を目撃してしまう。怒り狂ったキンダリーはトスカーナに復讐をする?

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる