【完結】売られた喧嘩は買わせていただきます。修道院長VS平民の戦い。騎士と王子に助けられました

との

文字の大きさ
上 下
33 / 37

33.ライオネル王子の苦悩

しおりを挟む
 王宮に戻ったライオネル王子は、宰相の元を訪れた。

「修道院長の弱点ですか? それはやはり修道院を統括する大修道院長か、枢機卿ではありませんか?
権力志向の強い者は皆上の者に弱いですから」

「急ぎ修道院長の動向を調べてくれ。
それからサレルノに人を送って、アイヴィ殿を助けてくれそうな実力者がいないか探してくれ。
アイヴィ殿の命が危ない。
私は大修道院長か枢機卿への伝手を探す」


 ライオネル王子の調査は遅々として進まなかった。王家と教会の不仲は長く続いており、全くと言っていいほど何も見つからない。

 カリタス修道士から届いた手紙を読み許可状を送ったものの、それ以外に為す術が思い付かない。


 そんな時、ジュリア王女の一言で事態が動き出した。

「大学の神学部に聞いてみられたら?」


 ライオネルは神学部のオーガスタ教授の元に駆けつけた。

「枢機卿への伝手でございますか? また随分と難しい事を仰る。
伝手を見つけたとしても、枢機卿のスケジュールは遠い先まで決まっておりますゆえ面談できるまでにはかなりの時間がかかりましょう。
大修道院長にしても同じ事でございます」

「人の命がかかっているのです。どうしても直ぐに見つけなければ」


「ふむ・・王子自らがおいでになられると言う事は、よほど大切な方とお見受けいたしますが?」

「王家にとってかけがえのない人物とお考えください」

 王子は今までの経緯と、アイヴィの経歴をオーガスタ教授に話した。

「・・オリッシモ枢機卿とサレルノのアンドリュー・ソーントン教授は親戚だった筈。
ソーントン教授からの要請があればもしかすると」

「ありがとうございます」


 ライオネル王子はその足でサレルノ医学校へと旅立った。



「王子、アイヴィ殿の指導教官の一覧表です」

 先にサレルノで諜報活動をしていた騎士から資料を受け取った。


「どの教授もアイヴィ殿のことを真面目で優秀な学生だったと。
証明の必要があるならいつでも助力すると仰っておられました」

 ライオネル王子は説明を聞きながら、名前を確認していった。


「これだ! アンドリュー・ソーントン教授。彼とは会ったか?」

「はい、確かアイヴィ殿とは今でも交流があると仰っていたと記憶しております」



 ライオネル王子はアンドリュー教授に会った途端、挨拶もそこそこに状況を話し始めた。

「確かにオリッシモ枢機卿は私の叔父に当たります。
連絡がつくかどうかも分かりませんし、連絡がついても協力を得るには時間がかかるかもしれません。
最大限の努力はしますが、他の方法を探すのはやめないで下さい」

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

妹に婚約者を奪われたので妹の服を全部売りさばくことに決めました

常野夏子
恋愛
婚約者フレデリックを妹ジェシカに奪われたクラリッサ。 裏切りに打ちひしがれるも、やがて復讐を決意する。 ジェシカが莫大な資金を投じて集めた高級服の数々――それを全て売りさばき、彼女の誇りを粉々に砕くのだ。

お姉さまが家を出て行き、婚約者を譲られました

さこの
恋愛
姉は優しく美しい。姉の名前はアリシア私の名前はフェリシア 姉の婚約者は第三王子 お茶会をすると一緒に来てと言われる アリシアは何かとフェリシアと第三王子を二人にしたがる ある日姉が父に言った。 アリシアでもフェリシアでも婚約者がクリスタル伯爵家の娘ならどちらでも良いですよね? バカな事を言うなと怒る父、次の日に姉が家を、出た

婚約破棄されましたが、帝国皇女なので元婚約者は投獄します

けんゆう
ファンタジー
「お前のような下級貴族の養女など、もう不要だ!」  五年間、婚約者として尽くしてきたフィリップに、冷たく告げられたソフィア。  他の貴族たちからも嘲笑と罵倒を浴び、社交界から追放されかける。 だが、彼らは知らなかった――。 ソフィアは、ただの下級貴族の養女ではない。 そんな彼女の元に届いたのは、隣国からお兄様が、貿易利権を手土産にやってくる知らせ。 「フィリップ様、あなたが何を捨てたのかーー思い知らせて差し上げますわ!」 逆襲を決意し、華麗に着飾ってパーティーに乗り込んだソフィア。 「妹を侮辱しただと? 極刑にすべきはお前たちだ!」 ブチギレるお兄様。 貴族たちは青ざめ、王国は崩壊寸前!? 「ざまぁ」どころか 国家存亡の危機 に!? 果たしてソフィアはお兄様の暴走を止め、自由な未来を手に入れられるか? 「私の未来は、私が決めます!」 皇女の誇りをかけた逆転劇、ここに開幕!

不遇な王妃は国王の愛を望まない

ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。 ※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷 ※稚拙ながらも投稿初日からHOTランキング(2024.11.21)に入れて頂き、ありがとうございます🙂 今回初めて最高ランキング5位(11/23)✨ まさに感無量です🥲

毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。

克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

もういいです、離婚しましょう。

うみか
恋愛
そうですか、あなたはその人を愛しているのですね。 もういいです、離婚しましょう。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?

水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。 日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。 そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。 一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。 ◇小説家になろうにも掲載中です! ◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています

処理中です...