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35.合流
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「やはり噂は本当でしたな」
ミューリア司教とアイヴィが話している声を聞きながら、カリタス修道士は静かに様子を伺っていた。
誰かがアイヴィを傷つけようとしたら飛び出して行くつもりだ。
話し合いの後、アイヴィが司教の後ろを歩いて行くと兵士達が殺気立ち、前に飛び出そうとした者さえいた。
「随分と兵士達に人気があるようですな。魔女の幻術の威力がこれ程とは、それとも名のある魔女なのか」
「幻術など使わなくても、兵士の方々と信頼関係を結ぶ事はできます」
司教達の後ろでカリタス修道士は小さく首を振ったが、アイヴィはそれを完全に無視している。
その後も臆す事なく司教達に反論をするアイヴィに必死で合図を送ろうとしたが、アイヴィは見向きもしない。
(くそ、大人しくしてろよ)
夜、アイヴィが閉じ込められた牢には見張りが立ち、誰も近づくことが出来なかった。
カリタス修道士はアイヴィの載せられた馬車の近くに陣取り様子を伺っていたが、炎天下で野ざらしの檻の中アイヴィは青褪め倒れ込んでしまった。
(不味いな、脱水症状だ)
周りの様子を伺いながら檻を叩き、手紙とエールの入った布袋を檻の中に押し込んだ。
アイヴィが手紙を胸元に押し込んだのを見て、カリタス修道士はどきりとして必死で前を向いていた。
アイヴィは今、真正面からカリタス修道士を睨み怒りで顔を真っ赤にしてプルプルと震えている。
(そりゃそうだよな、逆の立場なら俺も睨むよ。用足しに人が付いてくるとか最悪だもんな)
睨まれるのが分かっていても、カリタス修道士は他の誰かに交代したいとは思わなかった。
諦めて歩き出したアイヴィの後ろをカリタス修道士は黙ってついて行った。
その日の夕方、漸く目的地に着いた。
檻から出されたアイヴィは連行される間も背を伸ばし堂々としていた。
この場所でライオネル王子達と合流する予定だが、それらしい気配がない。
彼らが到着するまで時間を稼がないと行けないのだがアイヴィが大人しくしているとは思えないカリタス修道士だった。
アイヴィを部屋に連行した護衛が出てきて、暫くするとミューリア司教が入って行った。
ドアに耳を近づけて様子を伺っている時に後ろから複数の足音が聞こえてきた。
先頭に立っているのはライオネル王子と話に聞いていた枢機卿だろう。
部屋の中からサピエンチア修道院長とミューリア司教の浅ましい話が聞こえてきて、アイヴィが反論している声がする。
「どうやら聞いていた通りの状況のようですね。参りましょう」
ドアが大きく開かれ、枢機卿を先頭に全員が部屋に入って行った。
ミューリア司教とアイヴィが話している声を聞きながら、カリタス修道士は静かに様子を伺っていた。
誰かがアイヴィを傷つけようとしたら飛び出して行くつもりだ。
話し合いの後、アイヴィが司教の後ろを歩いて行くと兵士達が殺気立ち、前に飛び出そうとした者さえいた。
「随分と兵士達に人気があるようですな。魔女の幻術の威力がこれ程とは、それとも名のある魔女なのか」
「幻術など使わなくても、兵士の方々と信頼関係を結ぶ事はできます」
司教達の後ろでカリタス修道士は小さく首を振ったが、アイヴィはそれを完全に無視している。
その後も臆す事なく司教達に反論をするアイヴィに必死で合図を送ろうとしたが、アイヴィは見向きもしない。
(くそ、大人しくしてろよ)
夜、アイヴィが閉じ込められた牢には見張りが立ち、誰も近づくことが出来なかった。
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アイヴィは今、真正面からカリタス修道士を睨み怒りで顔を真っ赤にしてプルプルと震えている。
(そりゃそうだよな、逆の立場なら俺も睨むよ。用足しに人が付いてくるとか最悪だもんな)
睨まれるのが分かっていても、カリタス修道士は他の誰かに交代したいとは思わなかった。
諦めて歩き出したアイヴィの後ろをカリタス修道士は黙ってついて行った。
その日の夕方、漸く目的地に着いた。
檻から出されたアイヴィは連行される間も背を伸ばし堂々としていた。
この場所でライオネル王子達と合流する予定だが、それらしい気配がない。
彼らが到着するまで時間を稼がないと行けないのだがアイヴィが大人しくしているとは思えないカリタス修道士だった。
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先頭に立っているのはライオネル王子と話に聞いていた枢機卿だろう。
部屋の中からサピエンチア修道院長とミューリア司教の浅ましい話が聞こえてきて、アイヴィが反論している声がする。
「どうやら聞いていた通りの状況のようですね。参りましょう」
ドアが大きく開かれ、枢機卿を先頭に全員が部屋に入って行った。
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