【完結】売られた喧嘩は買わせていただきます。修道院長VS平民の戦い。騎士と王子に助けられました

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34.フェンセンに乗り込む

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 カリタス修道士はフェンセンの砦に着いたが、そこは敵の侵入を防ぐ為頑強な作りになっており、侵入出来そうな場所は見当たらなかった。

 唯一ある出入り口には終日歩哨が立ち、中の様子は全く伺えない。


 王家と修道会の間には大きな確執がある。修道士が正面切って乗り込もうとしても拒絶されるだけだろう。


(態々、修道会が手を出せない場所を選ぶとか・・)


 砦への侵入を諦めたカリタス修道士は一旦隣町のリューデールに戻りライオネル王子からの返事を待った。


 リューデールで聞き込みをしたところ、フェンセンではここ暫く大きな戦闘が行われていないという。
 つまり近い将来大規模な遠征が行われる可能性が高いという事だ。


 何としてもそれまでにアイヴィを砦から連れ出したいと、日夜砦の様子を探っていた時司教の話が流れてきた。

「マジかよ、てことはまたでかい戦いがあるんだ」

「早く何とかならないもんかねぇ」


(チャンス到来だ)



 カリタス修道士は今、ミューリア司教の前に立っている。

「マルタ騎士修道会のカリタス修道士、このような辺境で何をしているのかな?」


「任務の仔細は申し上げられませんが、司教様の護衛を志願しに参りました。
私に申し上げられるのは、砦内は完全なる王家の直轄地。そこへ向かわれる司教様の御身への配慮としか」


「ふむ、王家と教会の確執は大きくなるばかり。しかも砦内には野蛮な輩が多くいる・・と言う事ですな。
マルタ騎士修道会のカリタス修道士の名前は聞き及んでおる。
ブラザーの護衛は非常に心強い。真摯に励むが良い」


 まんまと司教一団に潜り込んだカリタス修道士は、堂々と正門から砦の中に入って行った。


 砦内でアイヴィの姿を見かける事は出来なかったが、兵士達を探っている時に聞いた話でここにいる事は確認出来た。

「ったく、アイヴィ殿の存在を隠さなきゃならねぇって巫山戯た話だよな」
「おい、キリー名前を出すな。どこで聞かれてるか分からんのだぞ」


(後はどうやって説得するかだな)


 アイヴィの評判は上々のようで、兵士達は一丸となってアイヴィの存在を隠そうと躍起になっている。

「飯は運んだか?」
「ああ」

「薬草を預かった」


 会話に主語はないがアイヴィの事で間違いはないだろう。



 司教達が出発する前日、カリタス修道士はミューリア司教から呼び出された。


「来てもらったのは他でもない。ブラザーの力が必要な案件があってね。
この砦に魔女が侵入していると、サピエンチア修道院長から報告を受けているのだよ。
この後捕縛に向かうので、護衛を頼みたい」


「畏まりました」

 カリタス修道士は頭を下げニヤリと笑った。

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