【完結】売られた喧嘩は買わせていただきます。修道院長VS平民の戦い。騎士と王子に助けられました

との

文字の大きさ
上 下
34 / 37

34.フェンセンに乗り込む

しおりを挟む
 カリタス修道士はフェンセンの砦に着いたが、そこは敵の侵入を防ぐ為頑強な作りになっており、侵入出来そうな場所は見当たらなかった。

 唯一ある出入り口には終日歩哨が立ち、中の様子は全く伺えない。


 王家と修道会の間には大きな確執がある。修道士が正面切って乗り込もうとしても拒絶されるだけだろう。


(態々、修道会が手を出せない場所を選ぶとか・・)


 砦への侵入を諦めたカリタス修道士は一旦隣町のリューデールに戻りライオネル王子からの返事を待った。


 リューデールで聞き込みをしたところ、フェンセンではここ暫く大きな戦闘が行われていないという。
 つまり近い将来大規模な遠征が行われる可能性が高いという事だ。


 何としてもそれまでにアイヴィを砦から連れ出したいと、日夜砦の様子を探っていた時司教の話が流れてきた。

「マジかよ、てことはまたでかい戦いがあるんだ」

「早く何とかならないもんかねぇ」


(チャンス到来だ)



 カリタス修道士は今、ミューリア司教の前に立っている。

「マルタ騎士修道会のカリタス修道士、このような辺境で何をしているのかな?」


「任務の仔細は申し上げられませんが、司教様の護衛を志願しに参りました。
私に申し上げられるのは、砦内は完全なる王家の直轄地。そこへ向かわれる司教様の御身への配慮としか」


「ふむ、王家と教会の確執は大きくなるばかり。しかも砦内には野蛮な輩が多くいる・・と言う事ですな。
マルタ騎士修道会のカリタス修道士の名前は聞き及んでおる。
ブラザーの護衛は非常に心強い。真摯に励むが良い」


 まんまと司教一団に潜り込んだカリタス修道士は、堂々と正門から砦の中に入って行った。


 砦内でアイヴィの姿を見かける事は出来なかったが、兵士達を探っている時に聞いた話でここにいる事は確認出来た。

「ったく、アイヴィ殿の存在を隠さなきゃならねぇって巫山戯た話だよな」
「おい、キリー名前を出すな。どこで聞かれてるか分からんのだぞ」


(後はどうやって説得するかだな)


 アイヴィの評判は上々のようで、兵士達は一丸となってアイヴィの存在を隠そうと躍起になっている。

「飯は運んだか?」
「ああ」

「薬草を預かった」


 会話に主語はないがアイヴィの事で間違いはないだろう。



 司教達が出発する前日、カリタス修道士はミューリア司教から呼び出された。


「来てもらったのは他でもない。ブラザーの力が必要な案件があってね。
この砦に魔女が侵入していると、サピエンチア修道院長から報告を受けているのだよ。
この後捕縛に向かうので、護衛を頼みたい」


「畏まりました」

 カリタス修道士は頭を下げニヤリと笑った。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

妹に婚約者を奪われたので妹の服を全部売りさばくことに決めました

常野夏子
恋愛
婚約者フレデリックを妹ジェシカに奪われたクラリッサ。 裏切りに打ちひしがれるも、やがて復讐を決意する。 ジェシカが莫大な資金を投じて集めた高級服の数々――それを全て売りさばき、彼女の誇りを粉々に砕くのだ。

お姉さまが家を出て行き、婚約者を譲られました

さこの
恋愛
姉は優しく美しい。姉の名前はアリシア私の名前はフェリシア 姉の婚約者は第三王子 お茶会をすると一緒に来てと言われる アリシアは何かとフェリシアと第三王子を二人にしたがる ある日姉が父に言った。 アリシアでもフェリシアでも婚約者がクリスタル伯爵家の娘ならどちらでも良いですよね? バカな事を言うなと怒る父、次の日に姉が家を、出た

不遇な王妃は国王の愛を望まない

ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。 ※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷 ※稚拙ながらも投稿初日からHOTランキング(2024.11.21)に入れて頂き、ありがとうございます🙂 今回初めて最高ランキング5位(11/23)✨ まさに感無量です🥲

毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。

克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

もういいです、離婚しましょう。

うみか
恋愛
そうですか、あなたはその人を愛しているのですね。 もういいです、離婚しましょう。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?

水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。 日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。 そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。 一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。 ◇小説家になろうにも掲載中です! ◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています

やんちゃな公爵令嬢の駆け引き~不倫現場を目撃して~

岡暁舟
恋愛
 名門公爵家の出身トスカーナと婚約することになった令嬢のエリザベート・キンダリーは、ある日トスカーナの不倫現場を目撃してしまう。怒り狂ったキンダリーはトスカーナに復讐をする?

処理中です...