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31.飲めるかな?
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ガラス瓶をオリッシモ枢機卿から受け取ったアンドリュー医師が、慎重にコップに聖水を入れた。
聖水の入ったコップを持ち、サピエンチア修道院長の前に跪いたアンドリュー医師が、
「ガラス瓶の中の半量が入っています。あなたの作った聖水です。飲んで頂けますね?」
サピエンチア修道院長は真っ青な顔で脂汗を垂らして、後ろにずりずりと下がっていった。
「どうしましたか? このガラス瓶にはオースティア修道院の紋章が刻まれていますね。これを使うことができるのは修道院長のみ。
ご自身が魔術師でないならば飲めるでしょう?」
オリッシモ枢機卿が修道院長を追い詰めていく。
カタカタと震え出した修道院長が小さな声で、
「×××」
「ん? 何と申されましたか?」
「嫌だ、死にたくない。どうかお慈悲を。
わしは長年修道院長として多くの事を成し遂げて参りました。
どうかお慈悲を賜りたく」
「ただの毒だと認めるのですか?」
「みっ認めます、認めますから命だけはお助け下さい」
縄で縛られたまま頭を床に擦り付けようとした修道院長だが、ぶくぶくと太った腹の肉がつかえて前のめりに転んでしまった。
「オリッシモ枢機卿、私は此奴に騙されていたのです! あの女が・・いえ、アイヴィ殿が魔女だと言われて信じただけ。どうか私だけはお助け下さい。お願いします」
ミューリア司教も土下座し、オリッシモ枢機卿の慈悲に縋ろうとしたが、
「先程聞こえてきた話では、ミューリア司教もアイヴィ殿を牢に繋いで利用しようとしておられましたね」
頭を上げたミューリア司教が、
「きっ、聞き違いです。私はそのような事は申しておりません」
「ここには多くの証人がいます。ライオネル王子殿下もお聞きになっておられる。
公聴会で申し開きをされると良いでしょう」
修道院長と司教が引き立てられて行き、アイヴィの手の拘束が漸く解かれた。
オリッシモ枢機卿が、
「アイヴィ殿、大変な思いをさせてしまい申し訳ありませんでした」
「皆様のお陰で助かりました。お礼を言うのは私の方でございます」
全員でその場を移動してほっと一息ついた。
「何故私とアンドリュー医師がここに来たのか疑問に思っているのでしょう?」
「はい、たかが一人の魔女疑惑の為に枢機卿自らがこのような場所にまで来られるのは意外と申しますか・・」
「私の所にライオネル王子がやって来られて、それがはじまりだった。
オリッシモ枢機卿に時間の調整をして貰えたのは、ライオネル王子殿下の力添えのお陰だね」
話の流れが見えてこないアイヴィはキョトンとしてみんなの顔を見ていた。
聖水の入ったコップを持ち、サピエンチア修道院長の前に跪いたアンドリュー医師が、
「ガラス瓶の中の半量が入っています。あなたの作った聖水です。飲んで頂けますね?」
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「どうしましたか? このガラス瓶にはオースティア修道院の紋章が刻まれていますね。これを使うことができるのは修道院長のみ。
ご自身が魔術師でないならば飲めるでしょう?」
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カタカタと震え出した修道院長が小さな声で、
「×××」
「ん? 何と申されましたか?」
「嫌だ、死にたくない。どうかお慈悲を。
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どうかお慈悲を賜りたく」
「ただの毒だと認めるのですか?」
「みっ認めます、認めますから命だけはお助け下さい」
縄で縛られたまま頭を床に擦り付けようとした修道院長だが、ぶくぶくと太った腹の肉がつかえて前のめりに転んでしまった。
「オリッシモ枢機卿、私は此奴に騙されていたのです! あの女が・・いえ、アイヴィ殿が魔女だと言われて信じただけ。どうか私だけはお助け下さい。お願いします」
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「先程聞こえてきた話では、ミューリア司教もアイヴィ殿を牢に繋いで利用しようとしておられましたね」
頭を上げたミューリア司教が、
「きっ、聞き違いです。私はそのような事は申しておりません」
「ここには多くの証人がいます。ライオネル王子殿下もお聞きになっておられる。
公聴会で申し開きをされると良いでしょう」
修道院長と司教が引き立てられて行き、アイヴィの手の拘束が漸く解かれた。
オリッシモ枢機卿が、
「アイヴィ殿、大変な思いをさせてしまい申し訳ありませんでした」
「皆様のお陰で助かりました。お礼を言うのは私の方でございます」
全員でその場を移動してほっと一息ついた。
「何故私とアンドリュー医師がここに来たのか疑問に思っているのでしょう?」
「はい、たかが一人の魔女疑惑の為に枢機卿自らがこのような場所にまで来られるのは意外と申しますか・・」
「私の所にライオネル王子がやって来られて、それがはじまりだった。
オリッシモ枢機卿に時間の調整をして貰えたのは、ライオネル王子殿下の力添えのお陰だね」
話の流れが見えてこないアイヴィはキョトンとしてみんなの顔を見ていた。
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