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19.断固、野辺の医者が良いです
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「それはお断りしたはずです。平民ですし、とても王宮でのしきたりなどについていけると思えませんので」
「うん、リアムから聞いている。王宮で暮らすより野辺の医者としてやっていきたいって」
「はい、その通りです。お声をかけていただいたのは有り難いのですが、私のような者には荷が重すぎて」
「ジョセフ殿、暫くここでお世話になっても良いかな? 何も努力しないで帰るわけにいかなくて」
ジョセフは返事をせずアイヴィをチラッと見た。
「公務はどうなさるんですか? 早くお帰りにならないと問題があるのではないですか?」
「そうなんだけどね、だったらアイヴィ一緒に来てくれるかい?」
頭を抱えたアイヴィを見たジョセフとカリタス修道士が、ぷっと吹き出した。
ライオネル王子殿下はカリタス修道士と同じ宿に部屋を借り、毎日仲良く店にやって来た。
二人の世話はジョセフとテディに任せて、アイヴィは極力二人に関わらないようにして終日店に居座るようにしていた。
「アイヴィの男がまた増えたんだって?」
「ギャビーン、なんか言った?」
「えっ? また男が増え・・」
アイヴィの鬼気迫る迫力にギャビンが黙り込んだ。
二人の男達は村でとても目立っていた。一人は淡いブロンドに碧眼、育ちの良さが分かる優雅な雰囲気。
もう一人は王子より暗めの金髪で常に帽子を被っている。グリーンの瞳でじっと見られるとドキドキするというのが店の客の評判。
「はぁ~」
「溜息つくと幸せが逃げてくぞ」
店のカウンターに肘をつき、大きな溜息をついたアイヴィを偶々店に出てきたジョセフが揶揄った。
「あの二人、一体いつまでここにいるつもりかしら」
「さあな、王子殿下はそれ程長くはいられないだろうが、カリタス修道士はなぁ」
「何でさっさと用事を済ませて帰らないのかしら。騎士修道会の人ってそんなに暇なのかしら」
「カリタス修道士の用事が何か、お前知ってるのか?」
「さぁ、薬草じゃない事は確かよね」
適当に話を誤魔化したアイヴィをジョセフがじっと見ていたが、アイヴィは気付かず薬草を取り出し湿布薬を作り始めた。
「これが出来たらマチルダさんとこに行ってくる。
もう湿布なくなってる筈なんだけどまだ来ないのよね。
気になるからちょっと行って様子見てくる」
アイヴィは帽子を被り、バスケットに湿布薬以外にも朝焼いたばかりのパンなどを入れてマチルダの家に出かけて行った。
ドアをノックして暫く待ったが返事がない。もう一度ドアをノックし、
「こんにちは、マチルダさんいませんか?」
「出かけてるんじゃないのか?」
アイヴィは、突然後ろから声をかけられて飛び上がった。
「だから、こっそり忍び寄るのはやめてってば」
「それより返事がないのが気になってるんだろ?」
「そう、マチルダさんはこういう暑い日には夕方になるまで外に出ないはずなの。
どこに行ったのかしら」
カリタス修道士が家の横に周り、窓の隙間から中を覗いた。
カリタス修道士がアイヴィに問いかけた。
「玄関と窓、どっちがお前の好み?」
「うん、リアムから聞いている。王宮で暮らすより野辺の医者としてやっていきたいって」
「はい、その通りです。お声をかけていただいたのは有り難いのですが、私のような者には荷が重すぎて」
「ジョセフ殿、暫くここでお世話になっても良いかな? 何も努力しないで帰るわけにいかなくて」
ジョセフは返事をせずアイヴィをチラッと見た。
「公務はどうなさるんですか? 早くお帰りにならないと問題があるのではないですか?」
「そうなんだけどね、だったらアイヴィ一緒に来てくれるかい?」
頭を抱えたアイヴィを見たジョセフとカリタス修道士が、ぷっと吹き出した。
ライオネル王子殿下はカリタス修道士と同じ宿に部屋を借り、毎日仲良く店にやって来た。
二人の世話はジョセフとテディに任せて、アイヴィは極力二人に関わらないようにして終日店に居座るようにしていた。
「アイヴィの男がまた増えたんだって?」
「ギャビーン、なんか言った?」
「えっ? また男が増え・・」
アイヴィの鬼気迫る迫力にギャビンが黙り込んだ。
二人の男達は村でとても目立っていた。一人は淡いブロンドに碧眼、育ちの良さが分かる優雅な雰囲気。
もう一人は王子より暗めの金髪で常に帽子を被っている。グリーンの瞳でじっと見られるとドキドキするというのが店の客の評判。
「はぁ~」
「溜息つくと幸せが逃げてくぞ」
店のカウンターに肘をつき、大きな溜息をついたアイヴィを偶々店に出てきたジョセフが揶揄った。
「あの二人、一体いつまでここにいるつもりかしら」
「さあな、王子殿下はそれ程長くはいられないだろうが、カリタス修道士はなぁ」
「何でさっさと用事を済ませて帰らないのかしら。騎士修道会の人ってそんなに暇なのかしら」
「カリタス修道士の用事が何か、お前知ってるのか?」
「さぁ、薬草じゃない事は確かよね」
適当に話を誤魔化したアイヴィをジョセフがじっと見ていたが、アイヴィは気付かず薬草を取り出し湿布薬を作り始めた。
「これが出来たらマチルダさんとこに行ってくる。
もう湿布なくなってる筈なんだけどまだ来ないのよね。
気になるからちょっと行って様子見てくる」
アイヴィは帽子を被り、バスケットに湿布薬以外にも朝焼いたばかりのパンなどを入れてマチルダの家に出かけて行った。
ドアをノックして暫く待ったが返事がない。もう一度ドアをノックし、
「こんにちは、マチルダさんいませんか?」
「出かけてるんじゃないのか?」
アイヴィは、突然後ろから声をかけられて飛び上がった。
「だから、こっそり忍び寄るのはやめてってば」
「それより返事がないのが気になってるんだろ?」
「そう、マチルダさんはこういう暑い日には夕方になるまで外に出ないはずなの。
どこに行ったのかしら」
カリタス修道士が家の横に周り、窓の隙間から中を覗いた。
カリタス修道士がアイヴィに問いかけた。
「玄関と窓、どっちがお前の好み?」
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