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18.カリタス修道士は策士
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我に帰ったジョセフが慌てて立ち上がり机の上を片付けながら、
「ライオネル王子が来てるって事か?」
「はあ、こんな事ならとっとと巡礼の旅にでも出とけば良かった。
そうだ、今からでも遅くないわ。父さんに任「諦めろ、って言うか俺に責任押し付けんじゃねえ」」
黙って話を聞いていたカリタス修道士が口を開いた。
「アイヴィ殿が突然王宮を出発した理由がこれですか?」
「カリタス修道士には関係ありませんから。今日はこのまま帰ってちょうだい」
アイヴィが返事をせず店に戻ると、ライオネル王子はカウンターの前のスツールに腰掛けてキョロキョロと店の中を見回していた。
「やあ、君は確かカリタス修道士だったね。やっぱりアイヴィについて来てたんだ」
吃驚してアイヴィが振り返ると、直ぐ後ろにカリタス修道士が立っていた。
「足音立てずに歩くのやめてくれない? 吃驚したじゃない」
カリタス修道士は片方の眉を上げてカツンカツンと音を立てて足踏みしたので、アイヴィはキッと睨みつけた。
「君は修道士だけと二人は付き合ってるってこと?」
「違います!」
「その通りです」
「その通りってどう言う意味よ、勘違いさせるような事言わないで! 第一修道士が誰かとお付き合いするとかあり得ないでしょう?」
「そうか?」
そう言いながらカリタス修道士はアイヴィの腰を引き寄せた。
「ちょっ、何すんのよ。巫山戯るのはやめて」
「とんでもないライバルがいたって事?」
「違います!」
「その通りです」
「だーかーらー、それやめてってば」
「アイヴィ、店先で騒いでないで王子殿下に奥に来てもらえよ。
王子殿下、狭い部屋ですが奥の休憩室にどうぞ」
店をテディに任せ四人は休憩室に入った。アイヴィはお茶を出し王子殿下の前にジョセフと並んで座った。
王子殿下がドアの近くに立っているカリタス修道士に、
「カリタス修道士もここに来て座るといい。護衛として来てるんじゃなさそうだしね」
「突然来て申し訳なかった。陛下が使者を送るって仰ったんだが、ジュリアに猛反対されてね」
「王女殿下のお加減はいかがですか?」
「アイヴィのお陰でかなり元気になった。突然いなくなってしまったので寂しがっていたけど、陛下がぽろっと漏らしたら大激怒して大変だったよ」
ジュリア王女の怒りは相当なものだったのだろう。ライオネル王子が虚な目になり遠くを見つめた。
「ジュリアから使者を送るなんて失礼だって言われて私が来たと言う訳なんだ」
「カリタス修道士、これはプライベートな話だから席を外してくれない?」
「いや、さっきの話からするとカリタス修道士にも聞いてもらった方がいいんじゃないかな?」
(それが狙いだったのね)
アイヴィはカリタス修道士を睨みつけたが、カリタス修道士はニヤリと笑って横を向いてしまった。
「アイヴィ、私の婚約者になってもらえないだろうか」
「ライオネル王子が来てるって事か?」
「はあ、こんな事ならとっとと巡礼の旅にでも出とけば良かった。
そうだ、今からでも遅くないわ。父さんに任「諦めろ、って言うか俺に責任押し付けんじゃねえ」」
黙って話を聞いていたカリタス修道士が口を開いた。
「アイヴィ殿が突然王宮を出発した理由がこれですか?」
「カリタス修道士には関係ありませんから。今日はこのまま帰ってちょうだい」
アイヴィが返事をせず店に戻ると、ライオネル王子はカウンターの前のスツールに腰掛けてキョロキョロと店の中を見回していた。
「やあ、君は確かカリタス修道士だったね。やっぱりアイヴィについて来てたんだ」
吃驚してアイヴィが振り返ると、直ぐ後ろにカリタス修道士が立っていた。
「足音立てずに歩くのやめてくれない? 吃驚したじゃない」
カリタス修道士は片方の眉を上げてカツンカツンと音を立てて足踏みしたので、アイヴィはキッと睨みつけた。
「君は修道士だけと二人は付き合ってるってこと?」
「違います!」
「その通りです」
「その通りってどう言う意味よ、勘違いさせるような事言わないで! 第一修道士が誰かとお付き合いするとかあり得ないでしょう?」
「そうか?」
そう言いながらカリタス修道士はアイヴィの腰を引き寄せた。
「ちょっ、何すんのよ。巫山戯るのはやめて」
「とんでもないライバルがいたって事?」
「違います!」
「その通りです」
「だーかーらー、それやめてってば」
「アイヴィ、店先で騒いでないで王子殿下に奥に来てもらえよ。
王子殿下、狭い部屋ですが奥の休憩室にどうぞ」
店をテディに任せ四人は休憩室に入った。アイヴィはお茶を出し王子殿下の前にジョセフと並んで座った。
王子殿下がドアの近くに立っているカリタス修道士に、
「カリタス修道士もここに来て座るといい。護衛として来てるんじゃなさそうだしね」
「突然来て申し訳なかった。陛下が使者を送るって仰ったんだが、ジュリアに猛反対されてね」
「王女殿下のお加減はいかがですか?」
「アイヴィのお陰でかなり元気になった。突然いなくなってしまったので寂しがっていたけど、陛下がぽろっと漏らしたら大激怒して大変だったよ」
ジュリア王女の怒りは相当なものだったのだろう。ライオネル王子が虚な目になり遠くを見つめた。
「ジュリアから使者を送るなんて失礼だって言われて私が来たと言う訳なんだ」
「カリタス修道士、これはプライベートな話だから席を外してくれない?」
「いや、さっきの話からするとカリタス修道士にも聞いてもらった方がいいんじゃないかな?」
(それが狙いだったのね)
アイヴィはカリタス修道士を睨みつけたが、カリタス修道士はニヤリと笑って横を向いてしまった。
「アイヴィ、私の婚約者になってもらえないだろうか」
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