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15.逃げ出しました
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「で、家に帰ってきたわけだ。しかも男連れで」
「前半は正解。後半は違う、勝手についてきたんだもの。文句があったらカリタス修道士に言ってちょうだい」
リアムとの面談の後、アイヴィはすぐに荷物を纏め王宮を出発した。
王女には申し訳ないと思ったので、置き手紙に丁寧な謝罪をしたためておいた。
カリタス修道士の存在に気づいたのは王宮を出た初日の宿。
夕食をとろうと階下に降りると、カウンターの端に座りもそもそと食事をしている男がいた。
アイヴィは暫くの間階段下で呆然としていたが男の近くまで行き、
「帽子を変えたら気付かないと思いました?」
カリタス修道士は落ち着いた様子で振り返り、
「いや、直ぐに気付いてもらえると知っていました」
「何故ここに? と言うのは愚問ですよね」
「そうですね。間違いなく」
「何が目的なのか知りませんけど、ついてこられるのは迷惑です」
「私の目的は薬「それが嘘だって二人とも分かってるのに、まだ同じ事を言うの?」」
「・・取り敢えず座りませんか? 食事に来られたのでしょう?」
アイヴィは一つ間を開けて椅子に座った。女給が注文を取りに来たので、パンとシチューとエールを注文した。
「ここのシチューは美味しいですよ。この宿は当たりですね」
カリタス修道士は険悪なアイヴィの様子を機にする事なく食事を再開した。
アイヴィはカリタス修道士を睨みつけながらこの惚けた男を無視するべきか、抗議するべきか悩んでいたが、
「そんな怖い顔をしなくても、とって食おうとは思ってませんから」
カリタス修道士はスプーンを置き、人畜無害に見せかけた笑みを浮かべアイヴィに話しかけてきた。
「護衛はいりませんか?」
「間に合ってます」
「旅の道連れは?」
「一人が気楽なので」
「荷物持ちは?」
「鞄が一つあるだけなので結構です」
「・・仕方ないですね。では、こっそりと後ろからついて行くことにします」
「カリタス修道士、腹を割って話しましょう。何が狙いですか?」
「薬草以外には特に興味はありません。私は修道士なので一緒にいても身の危「そんな事は心配していません。ただ本当の目的を知りたいだけ」」
「いつもそんなに疑り深いのですか?」
「あなたがただの修道士ならそれ程気にしていないと思うわ。でもあなたは騎士だもの、それも多分とても優秀な」
「褒められたわけではなさそうですね」
「ええ、サピエンチア修道院長からはどんな指示が与えられたのかしら?」
二人の間に長い沈黙が訪れた。途中女給が料理を運んできたが、二人の睨み合いに恐れをなして料理を置くと早々に立ち去ってしまった。
「サピエンチア修道院長からは、魔女の毒殺を指示されました」
アイヴィはカリタス修道士が正直に告白した事に吃驚して呆然とした。
「前半は正解。後半は違う、勝手についてきたんだもの。文句があったらカリタス修道士に言ってちょうだい」
リアムとの面談の後、アイヴィはすぐに荷物を纏め王宮を出発した。
王女には申し訳ないと思ったので、置き手紙に丁寧な謝罪をしたためておいた。
カリタス修道士の存在に気づいたのは王宮を出た初日の宿。
夕食をとろうと階下に降りると、カウンターの端に座りもそもそと食事をしている男がいた。
アイヴィは暫くの間階段下で呆然としていたが男の近くまで行き、
「帽子を変えたら気付かないと思いました?」
カリタス修道士は落ち着いた様子で振り返り、
「いや、直ぐに気付いてもらえると知っていました」
「何故ここに? と言うのは愚問ですよね」
「そうですね。間違いなく」
「何が目的なのか知りませんけど、ついてこられるのは迷惑です」
「私の目的は薬「それが嘘だって二人とも分かってるのに、まだ同じ事を言うの?」」
「・・取り敢えず座りませんか? 食事に来られたのでしょう?」
アイヴィは一つ間を開けて椅子に座った。女給が注文を取りに来たので、パンとシチューとエールを注文した。
「ここのシチューは美味しいですよ。この宿は当たりですね」
カリタス修道士は険悪なアイヴィの様子を機にする事なく食事を再開した。
アイヴィはカリタス修道士を睨みつけながらこの惚けた男を無視するべきか、抗議するべきか悩んでいたが、
「そんな怖い顔をしなくても、とって食おうとは思ってませんから」
カリタス修道士はスプーンを置き、人畜無害に見せかけた笑みを浮かべアイヴィに話しかけてきた。
「護衛はいりませんか?」
「間に合ってます」
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「一人が気楽なので」
「荷物持ちは?」
「鞄が一つあるだけなので結構です」
「・・仕方ないですね。では、こっそりと後ろからついて行くことにします」
「カリタス修道士、腹を割って話しましょう。何が狙いですか?」
「薬草以外には特に興味はありません。私は修道士なので一緒にいても身の危「そんな事は心配していません。ただ本当の目的を知りたいだけ」」
「いつもそんなに疑り深いのですか?」
「あなたがただの修道士ならそれ程気にしていないと思うわ。でもあなたは騎士だもの、それも多分とても優秀な」
「褒められたわけではなさそうですね」
「ええ、サピエンチア修道院長からはどんな指示が与えられたのかしら?」
二人の間に長い沈黙が訪れた。途中女給が料理を運んできたが、二人の睨み合いに恐れをなして料理を置くと早々に立ち去ってしまった。
「サピエンチア修道院長からは、魔女の毒殺を指示されました」
アイヴィはカリタス修道士が正直に告白した事に吃驚して呆然とした。
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