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13.ライオネル王子登場
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アイヴィが王宮に来てからニヶ月が経ち、ジュリア王女は離れの部屋から自室に戻った。
最近は日に数回、テラスで日に当たれるまでに回復した。
ジュリアが午睡から目覚めて暫くした頃、突然ノックもなくドアが大きな音を立てて開いた。
「ジュリア!」
「お兄様、お帰りなさいませ。隣国はいかがでしたか?」
ジュリアによく似た面立ちの青年が王女の元に駆け寄ってきて、膝をつき両手を握りしめた。
「それどころじゃない。具合が悪いなら何故私に知らせてこないんだ」
「ご心配をおかけして申し訳ありません。アイヴィのお陰で、ずいぶん元気になりましたのよ」
ライオネル王子はジュリア王女を抱きしめて、
「こんなに痩せてしまって。さきほど話を聞いてから生きた心地がしなかった」
ジュリアはくすくすと笑いながら、
「少しは安心されました?」
「ああ、お前の笑顔を見たら安心した。全くちょっと目を離した隙に・・」
ライオネル王子は立ち上がり、ジュリアの隣に腰掛けた。
「アイヴィ殿、妹を助けてくれてありがとう。ジュリアが回復していなかったら修道院長を八つ裂きにしていたところだ」
アイヴィは頭を下げ、
「王女殿下が、病気に負けない強いお心をお持ちだったので」
「そうだな、ジュリアはお転婆だから病気の方が逃げ出したのかも」
「まあ、お兄様。帰ってきて早々酷いですわ」
「文句が言えるようならもう大丈夫だな。早く元気になってまた乗馬の練習をしよう」
ジュリアは眉間に皺を寄せ、
「サイドサドルは好きではありませんの。お兄様達のように乗馬服を着て乗りたいですわ」
くるりと目を回したライオネルは、
「ついさっきまで心配で心を悩ませていたのに、今度はお前のお転婆ぶりに悩まねばならんとは。
ところでドアの前の衛兵の一人は初めて見る顔だったが? ほら、ピレウス帽を被った」
「カリタス修道士の事だわ。あまり話したことはないけど、いい人だと思うわ」
「出た! ジュリアはお人好しすぎる。話した事がないなら良い奴かどうかなんてわからんだろうに」
「アイヴィとカリタス修道士が話してるのは何度も見かけたわ。
穏やかな話し方だったし、感じの悪い態度を見たことないもの」
「修道士が何故ここにいるんだ? 修道院長の護衛だったんだろ?」
「あの方は騎士修道会の所属だから、アイヴィの元で薬草の勉強がしたいんですって。そうよね」
アイヴィが苦笑いを浮かべて、
「そのようですね。時間を見つけては薬草について聞いてこられる、とても勉強熱心な方です」
「まあ、修道士だから大丈夫だろうし、ジュリアを変な目で見なければ何をしていても構わないか」
アイヴィが家に帰る時が近づいた。
最近は日に数回、テラスで日に当たれるまでに回復した。
ジュリアが午睡から目覚めて暫くした頃、突然ノックもなくドアが大きな音を立てて開いた。
「ジュリア!」
「お兄様、お帰りなさいませ。隣国はいかがでしたか?」
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「それどころじゃない。具合が悪いなら何故私に知らせてこないんだ」
「ご心配をおかけして申し訳ありません。アイヴィのお陰で、ずいぶん元気になりましたのよ」
ライオネル王子はジュリア王女を抱きしめて、
「こんなに痩せてしまって。さきほど話を聞いてから生きた心地がしなかった」
ジュリアはくすくすと笑いながら、
「少しは安心されました?」
「ああ、お前の笑顔を見たら安心した。全くちょっと目を離した隙に・・」
ライオネル王子は立ち上がり、ジュリアの隣に腰掛けた。
「アイヴィ殿、妹を助けてくれてありがとう。ジュリアが回復していなかったら修道院長を八つ裂きにしていたところだ」
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「そうだな、ジュリアはお転婆だから病気の方が逃げ出したのかも」
「まあ、お兄様。帰ってきて早々酷いですわ」
「文句が言えるようならもう大丈夫だな。早く元気になってまた乗馬の練習をしよう」
ジュリアは眉間に皺を寄せ、
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ところでドアの前の衛兵の一人は初めて見る顔だったが? ほら、ピレウス帽を被った」
「カリタス修道士の事だわ。あまり話したことはないけど、いい人だと思うわ」
「出た! ジュリアはお人好しすぎる。話した事がないなら良い奴かどうかなんてわからんだろうに」
「アイヴィとカリタス修道士が話してるのは何度も見かけたわ。
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「そのようですね。時間を見つけては薬草について聞いてこられる、とても勉強熱心な方です」
「まあ、修道士だから大丈夫だろうし、ジュリアを変な目で見なければ何をしていても構わないか」
アイヴィが家に帰る時が近づいた。
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