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8.ちょっぴり回復
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王女殿下は夜に熱を出したものの、日を追うごとに少しずつ回復の兆しを見せてきた。
術後一週間が経つ頃には、ベッドに座りスープや柔らかくしたパンなどを口に出来るまでの回復力をみせた。
リコリス・ファーンとテムス、グランド・ファーとインディアンセロリなどでお茶を作り、
「王女殿下、お茶をお持ちしました」
王女はお茶を受け取り飲み干した後、
「今日のお茶はとても飲みやすかったわ。いつものお薬とは違うの?」
「少し体力が戻られたので蜂蜜を混ぜてあります。甘かったでしょう?」
アイヴィがにっこりと笑うと王女は大きく頷き、
「あれなら何杯でも飲めそうよ」
「もう少し体力が戻られたら、美味しいミルクティーをお入れしますね」
「アイヴィが作るなら何でもいただくわ」
二人が楽しそうにお喋りしながら傷の手当てをしていると、ドアにノックの音が響いた。
ジュリア王女の身体が強張ったので、アイヴィは安心させるようにっこり笑って軽く肩を叩いた。
ドアの近くに待機していたカリタス修道士がドアを少し開けた。
「アイヴィ殿、リアム殿が来られています」
ジュリア王女の緊張が解けホッとした顔をする。
「ちょっと席をはずしますね。太っちょはここには来ませんから安心して休んでください」
アイヴィが悪戯っぽく笑うと、ジュリア王女が小さな声で笑った。
「アイヴィは私の女神様ね」
アイヴィが隣の部屋に行くと、リアムが眉間に皺を寄せていた。
「何かありました?」
「申し訳ないんだが謁見室に来てもらえないだろうか。修道院長が煩くて、そろそろ抑えきれなくなってきている。
陛下も王女殿下のご様子が気になっておられるし」
「分かりました。王女殿下とカリタス修道士に話してきます」
部屋に戻ったアイヴィは、
「王女殿下、ちょっとお出かけしてきます。陛下に王女殿下のご様子を話してきますね。
ここには誰も入れないようカリタス修道士にお願いしておきますから、安心していて下さい」
「・・太っちょは来ない?」
「彼は今陛下の所にいるみたいです。カリタス修道士なら太っちょがやって来ても負けないと思いますよ」
「本当に?」
「はい、太っちょは王宮に来る時カリタス修道士に護衛を頼んだそうです。自分より弱い人に護衛を頼んだりしませんもの。
もしカリタス修道士が失敗したら、彼にとてつもなく苦いお茶を作りましょう」
「・・そうね。アイヴィの言葉を信じるわ」
アイヴィは振り返り少し大きめの声で、
「カリタス修道士、そういう事なので私が帰るまで誰も部屋に入れないで下さいね」
「畏まりました」
アイヴィはリアムと並び謁見室に向かった。
「王女殿下の回復は目覚ましいものがありますね」
「はい、本当に運が良かったと思います」
「運・・確かに、アイヴィ殿に出会えた事が最大の幸運だったでしょう」
「あら、まだですわ。王女殿下の為には太っちょを退治しなくては」
アイヴィとリアムは顔を見合わせて笑った。
術後一週間が経つ頃には、ベッドに座りスープや柔らかくしたパンなどを口に出来るまでの回復力をみせた。
リコリス・ファーンとテムス、グランド・ファーとインディアンセロリなどでお茶を作り、
「王女殿下、お茶をお持ちしました」
王女はお茶を受け取り飲み干した後、
「今日のお茶はとても飲みやすかったわ。いつものお薬とは違うの?」
「少し体力が戻られたので蜂蜜を混ぜてあります。甘かったでしょう?」
アイヴィがにっこりと笑うと王女は大きく頷き、
「あれなら何杯でも飲めそうよ」
「もう少し体力が戻られたら、美味しいミルクティーをお入れしますね」
「アイヴィが作るなら何でもいただくわ」
二人が楽しそうにお喋りしながら傷の手当てをしていると、ドアにノックの音が響いた。
ジュリア王女の身体が強張ったので、アイヴィは安心させるようにっこり笑って軽く肩を叩いた。
ドアの近くに待機していたカリタス修道士がドアを少し開けた。
「アイヴィ殿、リアム殿が来られています」
ジュリア王女の緊張が解けホッとした顔をする。
「ちょっと席をはずしますね。太っちょはここには来ませんから安心して休んでください」
アイヴィが悪戯っぽく笑うと、ジュリア王女が小さな声で笑った。
「アイヴィは私の女神様ね」
アイヴィが隣の部屋に行くと、リアムが眉間に皺を寄せていた。
「何かありました?」
「申し訳ないんだが謁見室に来てもらえないだろうか。修道院長が煩くて、そろそろ抑えきれなくなってきている。
陛下も王女殿下のご様子が気になっておられるし」
「分かりました。王女殿下とカリタス修道士に話してきます」
部屋に戻ったアイヴィは、
「王女殿下、ちょっとお出かけしてきます。陛下に王女殿下のご様子を話してきますね。
ここには誰も入れないようカリタス修道士にお願いしておきますから、安心していて下さい」
「・・太っちょは来ない?」
「彼は今陛下の所にいるみたいです。カリタス修道士なら太っちょがやって来ても負けないと思いますよ」
「本当に?」
「はい、太っちょは王宮に来る時カリタス修道士に護衛を頼んだそうです。自分より弱い人に護衛を頼んだりしませんもの。
もしカリタス修道士が失敗したら、彼にとてつもなく苦いお茶を作りましょう」
「・・そうね。アイヴィの言葉を信じるわ」
アイヴィは振り返り少し大きめの声で、
「カリタス修道士、そういう事なので私が帰るまで誰も部屋に入れないで下さいね」
「畏まりました」
アイヴィはリアムと並び謁見室に向かった。
「王女殿下の回復は目覚ましいものがありますね」
「はい、本当に運が良かったと思います」
「運・・確かに、アイヴィ殿に出会えた事が最大の幸運だったでしょう」
「あら、まだですわ。王女殿下の為には太っちょを退治しなくては」
アイヴィとリアムは顔を見合わせて笑った。
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