8 / 37
8.ちょっぴり回復
しおりを挟む
王女殿下は夜に熱を出したものの、日を追うごとに少しずつ回復の兆しを見せてきた。
術後一週間が経つ頃には、ベッドに座りスープや柔らかくしたパンなどを口に出来るまでの回復力をみせた。
リコリス・ファーンとテムス、グランド・ファーとインディアンセロリなどでお茶を作り、
「王女殿下、お茶をお持ちしました」
王女はお茶を受け取り飲み干した後、
「今日のお茶はとても飲みやすかったわ。いつものお薬とは違うの?」
「少し体力が戻られたので蜂蜜を混ぜてあります。甘かったでしょう?」
アイヴィがにっこりと笑うと王女は大きく頷き、
「あれなら何杯でも飲めそうよ」
「もう少し体力が戻られたら、美味しいミルクティーをお入れしますね」
「アイヴィが作るなら何でもいただくわ」
二人が楽しそうにお喋りしながら傷の手当てをしていると、ドアにノックの音が響いた。
ジュリア王女の身体が強張ったので、アイヴィは安心させるようにっこり笑って軽く肩を叩いた。
ドアの近くに待機していたカリタス修道士がドアを少し開けた。
「アイヴィ殿、リアム殿が来られています」
ジュリア王女の緊張が解けホッとした顔をする。
「ちょっと席をはずしますね。太っちょはここには来ませんから安心して休んでください」
アイヴィが悪戯っぽく笑うと、ジュリア王女が小さな声で笑った。
「アイヴィは私の女神様ね」
アイヴィが隣の部屋に行くと、リアムが眉間に皺を寄せていた。
「何かありました?」
「申し訳ないんだが謁見室に来てもらえないだろうか。修道院長が煩くて、そろそろ抑えきれなくなってきている。
陛下も王女殿下のご様子が気になっておられるし」
「分かりました。王女殿下とカリタス修道士に話してきます」
部屋に戻ったアイヴィは、
「王女殿下、ちょっとお出かけしてきます。陛下に王女殿下のご様子を話してきますね。
ここには誰も入れないようカリタス修道士にお願いしておきますから、安心していて下さい」
「・・太っちょは来ない?」
「彼は今陛下の所にいるみたいです。カリタス修道士なら太っちょがやって来ても負けないと思いますよ」
「本当に?」
「はい、太っちょは王宮に来る時カリタス修道士に護衛を頼んだそうです。自分より弱い人に護衛を頼んだりしませんもの。
もしカリタス修道士が失敗したら、彼にとてつもなく苦いお茶を作りましょう」
「・・そうね。アイヴィの言葉を信じるわ」
アイヴィは振り返り少し大きめの声で、
「カリタス修道士、そういう事なので私が帰るまで誰も部屋に入れないで下さいね」
「畏まりました」
アイヴィはリアムと並び謁見室に向かった。
「王女殿下の回復は目覚ましいものがありますね」
「はい、本当に運が良かったと思います」
「運・・確かに、アイヴィ殿に出会えた事が最大の幸運だったでしょう」
「あら、まだですわ。王女殿下の為には太っちょを退治しなくては」
アイヴィとリアムは顔を見合わせて笑った。
術後一週間が経つ頃には、ベッドに座りスープや柔らかくしたパンなどを口に出来るまでの回復力をみせた。
リコリス・ファーンとテムス、グランド・ファーとインディアンセロリなどでお茶を作り、
「王女殿下、お茶をお持ちしました」
王女はお茶を受け取り飲み干した後、
「今日のお茶はとても飲みやすかったわ。いつものお薬とは違うの?」
「少し体力が戻られたので蜂蜜を混ぜてあります。甘かったでしょう?」
アイヴィがにっこりと笑うと王女は大きく頷き、
「あれなら何杯でも飲めそうよ」
「もう少し体力が戻られたら、美味しいミルクティーをお入れしますね」
「アイヴィが作るなら何でもいただくわ」
二人が楽しそうにお喋りしながら傷の手当てをしていると、ドアにノックの音が響いた。
ジュリア王女の身体が強張ったので、アイヴィは安心させるようにっこり笑って軽く肩を叩いた。
ドアの近くに待機していたカリタス修道士がドアを少し開けた。
「アイヴィ殿、リアム殿が来られています」
ジュリア王女の緊張が解けホッとした顔をする。
「ちょっと席をはずしますね。太っちょはここには来ませんから安心して休んでください」
アイヴィが悪戯っぽく笑うと、ジュリア王女が小さな声で笑った。
「アイヴィは私の女神様ね」
アイヴィが隣の部屋に行くと、リアムが眉間に皺を寄せていた。
「何かありました?」
「申し訳ないんだが謁見室に来てもらえないだろうか。修道院長が煩くて、そろそろ抑えきれなくなってきている。
陛下も王女殿下のご様子が気になっておられるし」
「分かりました。王女殿下とカリタス修道士に話してきます」
部屋に戻ったアイヴィは、
「王女殿下、ちょっとお出かけしてきます。陛下に王女殿下のご様子を話してきますね。
ここには誰も入れないようカリタス修道士にお願いしておきますから、安心していて下さい」
「・・太っちょは来ない?」
「彼は今陛下の所にいるみたいです。カリタス修道士なら太っちょがやって来ても負けないと思いますよ」
「本当に?」
「はい、太っちょは王宮に来る時カリタス修道士に護衛を頼んだそうです。自分より弱い人に護衛を頼んだりしませんもの。
もしカリタス修道士が失敗したら、彼にとてつもなく苦いお茶を作りましょう」
「・・そうね。アイヴィの言葉を信じるわ」
アイヴィは振り返り少し大きめの声で、
「カリタス修道士、そういう事なので私が帰るまで誰も部屋に入れないで下さいね」
「畏まりました」
アイヴィはリアムと並び謁見室に向かった。
「王女殿下の回復は目覚ましいものがありますね」
「はい、本当に運が良かったと思います」
「運・・確かに、アイヴィ殿に出会えた事が最大の幸運だったでしょう」
「あら、まだですわ。王女殿下の為には太っちょを退治しなくては」
アイヴィとリアムは顔を見合わせて笑った。
1
お気に入りに追加
210
あなたにおすすめの小説

《完結》愛する人と結婚するだけが愛じゃない
ぜらいす黒糖
恋愛
オリビアはジェームズとこのまま結婚するだろうと思っていた。
ある日、可愛がっていた後輩のマリアから「先輩と別れて下さい」とオリビアは言われた。
ジェームズに確かめようと部屋に行くと、そこにはジェームズとマリアがベッドで抱き合っていた。
ショックのあまり部屋を飛び出したオリビアだったが、気がつくと走る馬車の前を歩いていた。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

それは立派な『不正行為』だ!
柊
恋愛
宮廷治癒師を目指すオリビア・ガーディナー。宮廷騎士団を目指す幼馴染ノエル・スコフィールドと試験前に少々ナーバスな気分になっていたところに、男たちに囲まれたエミリー・ハイドがやってくる。多人数をあっという間に治す治癒能力を持っている彼女を男たちは褒めたたえるが、オリビアは複雑な気分で……。
※小説家になろう、pixiv、カクヨムにも同じものを投稿しています。
【完結】愛されないあたしは全てを諦めようと思います
黒幸
恋愛
ネドヴェト侯爵家に生まれた四姉妹の末っ子アマーリエ(エミー)は元気でおしゃまな女の子。
美人で聡明な長女。
利発で活発な次女。
病弱で温和な三女。
兄妹同然に育った第二王子。
時に元気が良すぎて、怒られるアマーリエは誰からも愛されている。
誰もがそう思っていました。
サブタイトルが台詞ぽい時はアマーリエの一人称視点。
客観的なサブタイトル名の時は三人称視点やその他の視点になります。

婚約破棄された令嬢の父親は最強?
岡暁舟
恋愛
婚約破棄された公爵令嬢マリアの父親であるフレンツェルは世界最強と謳われた兵士だった。そんな彼が、不義理である婚約破棄に激怒して元婚約者である第一王子スミスに復讐する物語。

そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?
氷雨そら
恋愛
結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。
そしておそらく旦那様は理解した。
私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。
――――でも、それだって理由はある。
前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。
しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。
「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。
そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。
お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!
かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。
小説家になろうにも掲載しています。

自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのはあなたですよね?
長岡更紗
恋愛
庶民聖女の私をいじめてくる、貴族聖女のニコレット。
王子の婚約者を決める舞踏会に出ると、
「卑しい庶民聖女ね。王子妃になりたいがためにそのドレスも盗んできたそうじゃないの」
あることないこと言われて、我慢の限界!
絶対にあなたなんかに王子様は渡さない!
これは一生懸命生きる人が報われ、悪さをする人は報いを受ける、勧善懲悪のシンデレラストーリー!
*旧タイトルは『灰かぶり聖女は冷徹王子のお気に入り 〜自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのは公爵令嬢、あなたですよ〜』です。
*小説家になろうでも掲載しています。

【完結】仕事を放棄した結果、私は幸せになれました。
キーノ
恋愛
わたくしは乙女ゲームの悪役令嬢みたいですわ。悪役令嬢に転生したと言った方がラノベあるある的に良いでしょうか。
ですが、ゲーム内でヒロイン達が語られる用な悪事を働いたことなどありません。王子に嫉妬? そのような無駄な事に時間をかまけている時間はわたくしにはありませんでしたのに。
だってわたくし、週4回は王太子妃教育に王妃教育、週3回で王妃様とのお茶会。お茶会や教育が終わったら王太子妃の公務、王子殿下がサボっているお陰で回ってくる公務に、王子の管轄する領の嘆願書の整頓やら収益やら税の計算やらで、わたくし、ちっとも自由時間がありませんでしたのよ。
こんなに忙しい私が、最後は冤罪にて処刑ですって? 学園にすら通えて無いのに、すべてのルートで私は処刑されてしまうと解った今、わたくしは全ての仕事を放棄して、冤罪で処刑されるその時まで、押しと穏やかに過ごしますわ。
※さくっと読める悪役令嬢モノです。
2月14~15日に全話、投稿完了。
感想、誤字、脱字など受け付けます。
沢山のエールにお気に入り登録、ありがとうございます。現在執筆中の新作の励みになります。初期作品のほうも見てもらえて感無量です!
恋愛23位にまで上げて頂き、感謝いたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる