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7.眠っている間に
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吸入麻酔を作る間、アイヴィとリアムは切開後の治療方法について話し合っていた。
アイヴィの博識にカリタス修道士が、
「薬学にお詳しいのですね」
「サレルノ医学校でマッテーオ・シルヴァティコの著書を読みましたので」
カリタス修道士が驚いた顔で、
「サレルノに行かれたのですか?」
「はい、女性を受け入れてくれた医学校はあそこだけだったので」
「サレルノは宗教や修道院とは関わりがありませんから・・独自研究も盛んだとか」
「その通りですわ。お陰で助かりました」
メイド達が部屋の掃除を終える頃、吸入麻酔の準備が出来た。
「王女殿下が眠っているうちに終わらせます。リアム殿とタイラー殿は側で手順に問題がないかしっかり診ていて下さいね」
「助手は必要ないのですか?」
「途中でもし必要になったら、遠慮なく声をかけさせていただきます。
カリタス修道士も宜しければ近くにどうぞ」
カリタス修道士が近づいてきて、
「こんなに大勢に見つめられていては落ち着かないのでは?」
「ここにいるのはたったの四人ですわ。
医学校ではもっと多くの学生が見てましたもの」
王女殿下に麻酔をかけ手術がはじまった。アイヴィは落ち着き払いメスをふるっていく。
膿を出し丁寧に縫合し、包帯を巻いていった。
「凄い、何と素晴らしい手際なんでしょう。医者として仕事が出来ないのは、我が国の損失です」
アイヴィは肩をすくめジョセフと目を見合わせた。
「この後の国王陛下と修道院長への説明はリアム殿にお願いして宜しいでしょうか?
私はただの助手ですし、施術に関して突っ込まれたら父では対応できないかも」
「分かりました。アイヴィ殿の事は状況が落ち着くまで伏せておきましょう。
その方がアイヴィ殿も動きやすいのではないですか?」
「ええ、女同士ですから身の回りのお世話をするふりをして、治療を続けたいと思っています」
アイヴィはリアムと話しながら、修道院長の指示で床屋外科医がつけた傷の手当てをしていった。
「王女殿下の病気は治りますか?」
「分かりません。可能性は半々というところでしょうか。
熱がそれほど上がらず、少しずつでも何か食べられるようになれば可能性は上がります。
それから落ち着いた・・環境を維持できればあるいは」
王女殿下は修道院長に怯えていた。彼が帰ってきて騒ぎ立てないことを祈りたいアイヴィだった。
リアムが疑問に思っていた事を口にした。
「カリタス修道士に聞きたいのですが、修道院長は何故部屋をあのように?」
「私の推測でしかありませんが、修道院長の薬草が効かず瀉血や下剤も効果がなく、王女殿下は日に日に窶れていかれとうとう薬湯を戻してしまわれるようになりました。
それであのような事をされたのではないかと」
「王女殿下は目覚めた時怯えてたわ。あのような状態では何も受け付けなくなっても仕方がないと思う」
「アイヴィ様のおっしゃる通りかと」
「様はやめてください。私は平民で薬剤師の助手なので」
リアムとタイラーは顔を見合わせ頷き合った。
アイヴィの博識にカリタス修道士が、
「薬学にお詳しいのですね」
「サレルノ医学校でマッテーオ・シルヴァティコの著書を読みましたので」
カリタス修道士が驚いた顔で、
「サレルノに行かれたのですか?」
「はい、女性を受け入れてくれた医学校はあそこだけだったので」
「サレルノは宗教や修道院とは関わりがありませんから・・独自研究も盛んだとか」
「その通りですわ。お陰で助かりました」
メイド達が部屋の掃除を終える頃、吸入麻酔の準備が出来た。
「王女殿下が眠っているうちに終わらせます。リアム殿とタイラー殿は側で手順に問題がないかしっかり診ていて下さいね」
「助手は必要ないのですか?」
「途中でもし必要になったら、遠慮なく声をかけさせていただきます。
カリタス修道士も宜しければ近くにどうぞ」
カリタス修道士が近づいてきて、
「こんなに大勢に見つめられていては落ち着かないのでは?」
「ここにいるのはたったの四人ですわ。
医学校ではもっと多くの学生が見てましたもの」
王女殿下に麻酔をかけ手術がはじまった。アイヴィは落ち着き払いメスをふるっていく。
膿を出し丁寧に縫合し、包帯を巻いていった。
「凄い、何と素晴らしい手際なんでしょう。医者として仕事が出来ないのは、我が国の損失です」
アイヴィは肩をすくめジョセフと目を見合わせた。
「この後の国王陛下と修道院長への説明はリアム殿にお願いして宜しいでしょうか?
私はただの助手ですし、施術に関して突っ込まれたら父では対応できないかも」
「分かりました。アイヴィ殿の事は状況が落ち着くまで伏せておきましょう。
その方がアイヴィ殿も動きやすいのではないですか?」
「ええ、女同士ですから身の回りのお世話をするふりをして、治療を続けたいと思っています」
アイヴィはリアムと話しながら、修道院長の指示で床屋外科医がつけた傷の手当てをしていった。
「王女殿下の病気は治りますか?」
「分かりません。可能性は半々というところでしょうか。
熱がそれほど上がらず、少しずつでも何か食べられるようになれば可能性は上がります。
それから落ち着いた・・環境を維持できればあるいは」
王女殿下は修道院長に怯えていた。彼が帰ってきて騒ぎ立てないことを祈りたいアイヴィだった。
リアムが疑問に思っていた事を口にした。
「カリタス修道士に聞きたいのですが、修道院長は何故部屋をあのように?」
「私の推測でしかありませんが、修道院長の薬草が効かず瀉血や下剤も効果がなく、王女殿下は日に日に窶れていかれとうとう薬湯を戻してしまわれるようになりました。
それであのような事をされたのではないかと」
「王女殿下は目覚めた時怯えてたわ。あのような状態では何も受け付けなくなっても仕方がないと思う」
「アイヴィ様のおっしゃる通りかと」
「様はやめてください。私は平民で薬剤師の助手なので」
リアムとタイラーは顔を見合わせ頷き合った。
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