【完結】売られた喧嘩は買わせていただきます。修道院長VS平民の戦い。騎士と王子に助けられました

との

文字の大きさ
上 下
6 / 37

6.吸入麻酔作ります

しおりを挟む
 アイヴィは王女が不安にならないよう声をかけながら全身を丁寧に診察していった。

「もう少しお茶を飲みませんか?」

 診察の後アイヴィが声をかけると、王女は少しお茶を飲み直ぐに眠りに落ちていった。



 アイヴィ達は隣の部屋に移動して話し始めた。全員がドアの近くでベッドの見える位置にいる。

「喉の腫れが酷いから、切開する必要があります。その他に転移と見られる箇所が二箇所。
問題は体力が落ち過ぎてることですね」

「では、体力が戻るのを待ちますか?」

「・・いいえ、待っていたら膿がいつ破裂するか」

「そんなに危険な状態なのですか?」

「あれでは何も食べられないからどんどん体力が落ちていく一方です。
この病気は体力が最大の薬だから、切開して膿を出して少しずつでも栄養を取れるようにしなきゃ」


「では、床屋外科医を呼びましょう」


「いいえ、私がやります。道具は持ってきているし経験もあるから。
吸入麻酔の準備ができたら始めるので、それ迄に部屋の掃除を徹底して下さい。
不潔な空気の中じゃ手術跡が化膿してしまうから」

 タイラーが急いでメイドに声をかけに行った。


「吸入麻酔の準備手伝わせて頂いても宜しいですか? 話には聞いた事があるのですが見たことがなくて。
お恥ずかしい限りです」

「構いません。リアム殿に手伝って頂けると助かります」


 その後、王女の側にジョセフが残り、アイヴィとリアムは麻酔薬の調合を行った。

「材料はアヘン・イヌホオズキの汁・ヒヨス・マンダラゲ・キズタ・ドクニンジンの汁。
これを海綿に浸して使います」 

「これを手術の度に作るのですか?」

「いいえ、海綿を天日干ししてその都度熱湯で戻せばいつでも使えますから、前もって作っておくと便利ですよ。
今回は時間がなかったので作ってないのですが」

「良いことを知りました。騎士達は痛みに強いとは言え、あの悲鳴を聞くのは結構キツイですから・・」

「その気持ち分かります。する側もされる側も辛いですよね。
以前はアヘンとマンダラゲの麻酔海綿を使っていたそうですが、あれだと効果がイマイチですし」

「もしかしてルツギエロの医学テキストですか?」

「はい、とても勉強になりました」



 アイヴィとリアムが会話しながら吸入麻酔を作っていると、後ろから声がかかった。

「もし良ければ私にも作り方をお教え頂けますか?」

 二人が振り向くと直ぐ後ろにカリタス修道士が立っていたので、アイヴィは吃驚してしまった。

「いついらっしゃったのか気付かなくて」

「失礼しました。大変興味深い話をされていたので、つい持ち場を離れてしまいました」


「騎士修道会の方なら麻酔薬は気になりますよね。
良かったらご一緒にどうぞ」

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

妹に婚約者を奪われたので妹の服を全部売りさばくことに決めました

常野夏子
恋愛
婚約者フレデリックを妹ジェシカに奪われたクラリッサ。 裏切りに打ちひしがれるも、やがて復讐を決意する。 ジェシカが莫大な資金を投じて集めた高級服の数々――それを全て売りさばき、彼女の誇りを粉々に砕くのだ。

お姉さまが家を出て行き、婚約者を譲られました

さこの
恋愛
姉は優しく美しい。姉の名前はアリシア私の名前はフェリシア 姉の婚約者は第三王子 お茶会をすると一緒に来てと言われる アリシアは何かとフェリシアと第三王子を二人にしたがる ある日姉が父に言った。 アリシアでもフェリシアでも婚約者がクリスタル伯爵家の娘ならどちらでも良いですよね? バカな事を言うなと怒る父、次の日に姉が家を、出た

不遇な王妃は国王の愛を望まない

ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。 ※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷 ※稚拙ながらも投稿初日からHOTランキング(2024.11.21)に入れて頂き、ありがとうございます🙂 今回初めて最高ランキング5位(11/23)✨ まさに感無量です🥲

毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。

克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

もういいです、離婚しましょう。

うみか
恋愛
そうですか、あなたはその人を愛しているのですね。 もういいです、離婚しましょう。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?

水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。 日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。 そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。 一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。 ◇小説家になろうにも掲載中です! ◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています

やんちゃな公爵令嬢の駆け引き~不倫現場を目撃して~

岡暁舟
恋愛
 名門公爵家の出身トスカーナと婚約することになった令嬢のエリザベート・キンダリーは、ある日トスカーナの不倫現場を目撃してしまう。怒り狂ったキンダリーはトスカーナに復讐をする?

処理中です...