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5.匂いの元を断とう
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「カーテンと窓を全部開けて部屋の換気を。急いで」
アイヴィは指示を出した後匂いの元を探していたが、入り口のドアの横に静かに佇む一人の男を見つけた。
「貴方は誰?」
「マルタ騎士修道会の修道士カリタスと申します」
「騎士?」
リアムが代わりに答えてくれた。
「アイヴィ殿、この者は修道院長の護衛です。
カリタス修道士、修道院長殿に付いておられなくても宜しいのですかな?」
「はい、先程修道院長から何のご指示もありませんでしたので、ここで王女殿下の護衛をさせて頂きます」
リアムが心配そうな顔で、
「アイヴィ殿、どうされますか?」
「邪魔しないなら好きにしたら良いわ。その代わり口を開かずそこで大人しくしていてちょうだいね。
そうだわ、貴方ならこの煙の元が何処にあるかご存知?」
「はい、王女殿下のベッドの足元に」
「最悪だわ、さっさと片付けましょう」
アイヴィは足元にあった香炉を片付けて、王女殿下のベットに近づいて行った。
「王女殿下?」
アイヴィが声をかけるとジュリア王女は薄らと目を開け、オドオドと周りを見回した。
「もしかして太ったおじさんを探しておられます? あの方なら私達がおい出してしまいましたの」
ジュリア王女はアイヴィをじっと見つめ、掠れた小さな声で問いかけてきた。
「後でまた帰ってくる?」
アイヴィはにっこり笑って、
「王女殿下が望まれたら帰ってくるかも。
喉が乾いてませんか?」
ジュリアが小さく頷いたのを見たアイヴィは後ろを向き、
「父さん、インディアンセロリとカモミールを常温に冷まして」
「貴方は?」
「私はアイヴィと言います。敬語は苦手なので許して下さいね」
ジュリア王女が小さく頷いた。
「お喋りはお茶を飲んでからにしましょう。まずは部屋の空気を入れ替えなくちゃ。
ベッド周りのカーテンを開けても良いですか?」
ジュリア王女が頷いたのを確認した後、アイヴィはカーテンを全開にしてタッセルでしっかりと止めてしまった。
「少ししたらこの息苦しさが消えると思います」
アイヴィは王女の枕を少しだけ高くして、ジョセフが持ってきたカップを受け取った。
「一口飲んでみて下さい。無理はしなくて大丈夫です」
王女はふるふると手が震え、カップを一人で持つことが出来なかったのでアイヴィが横から支えた。
「喉に沁みますか?」
「少し。でも大丈夫」
王女はその後もう少しお茶を飲むとホッとしたようで、
「貴方はシスター?」
「いいえ、驚くでしょうけど女の医者なんです。今はまだ秘密にしておいて下さいね」
アイヴィが悪戯っぽく片目を瞑ると、王女が微かに微笑んで頷いた。
「さて、ちょっとばかり診ても良いですか?」
アイヴィは指示を出した後匂いの元を探していたが、入り口のドアの横に静かに佇む一人の男を見つけた。
「貴方は誰?」
「マルタ騎士修道会の修道士カリタスと申します」
「騎士?」
リアムが代わりに答えてくれた。
「アイヴィ殿、この者は修道院長の護衛です。
カリタス修道士、修道院長殿に付いておられなくても宜しいのですかな?」
「はい、先程修道院長から何のご指示もありませんでしたので、ここで王女殿下の護衛をさせて頂きます」
リアムが心配そうな顔で、
「アイヴィ殿、どうされますか?」
「邪魔しないなら好きにしたら良いわ。その代わり口を開かずそこで大人しくしていてちょうだいね。
そうだわ、貴方ならこの煙の元が何処にあるかご存知?」
「はい、王女殿下のベッドの足元に」
「最悪だわ、さっさと片付けましょう」
アイヴィは足元にあった香炉を片付けて、王女殿下のベットに近づいて行った。
「王女殿下?」
アイヴィが声をかけるとジュリア王女は薄らと目を開け、オドオドと周りを見回した。
「もしかして太ったおじさんを探しておられます? あの方なら私達がおい出してしまいましたの」
ジュリア王女はアイヴィをじっと見つめ、掠れた小さな声で問いかけてきた。
「後でまた帰ってくる?」
アイヴィはにっこり笑って、
「王女殿下が望まれたら帰ってくるかも。
喉が乾いてませんか?」
ジュリアが小さく頷いたのを見たアイヴィは後ろを向き、
「父さん、インディアンセロリとカモミールを常温に冷まして」
「貴方は?」
「私はアイヴィと言います。敬語は苦手なので許して下さいね」
ジュリア王女が小さく頷いた。
「お喋りはお茶を飲んでからにしましょう。まずは部屋の空気を入れ替えなくちゃ。
ベッド周りのカーテンを開けても良いですか?」
ジュリア王女が頷いたのを確認した後、アイヴィはカーテンを全開にしてタッセルでしっかりと止めてしまった。
「少ししたらこの息苦しさが消えると思います」
アイヴィは王女の枕を少しだけ高くして、ジョセフが持ってきたカップを受け取った。
「一口飲んでみて下さい。無理はしなくて大丈夫です」
王女はふるふると手が震え、カップを一人で持つことが出来なかったのでアイヴィが横から支えた。
「喉に沁みますか?」
「少し。でも大丈夫」
王女はその後もう少しお茶を飲むとホッとしたようで、
「貴方はシスター?」
「いいえ、驚くでしょうけど女の医者なんです。今はまだ秘密にしておいて下さいね」
アイヴィが悪戯っぽく片目を瞑ると、王女が微かに微笑んで頷いた。
「さて、ちょっとばかり診ても良いですか?」
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