4 / 37
4.修道院長を追い出す
しおりを挟む
「“るいれき” の権威だと申すのか?」
「はい、父の代より薬剤師を致しており、多くの患者を治療して参りました」
国王陛下に返答しているのはジョセフで、アイヴィはその横に助手として控えていた。
国王陛下は顔色が悪く、よく見ると目の下に隈が出来ている。
「・・余も宮廷医師達も役に立たなんだ。修道院長の治療も捗々しくない」
国王陛下は目を瞑り額を擦りながら、
「其方には自信があるのだな。必ず王女を助けると余の前で誓えるのか?」
「恐れながら、今現在の王女殿下の御様態も不明なままでは確約は致しかねます。
ただ、今迄の経験と知識が必ずや王女殿下のお役に立つと信じております」
長い沈黙の間、国王陛下はジョセフをじっと見つめていた。
「・・王女を頼む。どうかあれを助けてやってくれ」
「全身全霊をもって」
ジョセフとアイヴィは頭を下げた後、
「一つお願いがございます」
「申してみよ」
「修道院長殿に一時ご退出を願いたいと」
「あの者が邪魔と申すか?」
「治療方法の違いから議論になりましては無駄な時間がかかってしまいます。
私達の聞き及んでいる様子では一刻も無駄に出来ないと思われますので」
「分かった。修道院長には口を挟まぬよう申し伝える。但し、其方達には王宮医師団の者をつけるが良いな」
「はい、その方が何かと好都合でございます」
王宮医師団長のリアム・エバンズとその息子タイラー・エバンズの後ろを、ジョセフとアイヴィは歩いている。
王女殿下は塔の外れの部屋に移動されており、謁見の間からはかなりの距離があった。
王女殿下の部屋に近付くと、きつい薬草の匂いがしてきた。
部屋の前には二人の衛兵がおり、リアム達の顔を見た途端敬礼した。
「修道院長殿に取次を」
「はっ」
衛兵がドアを開けると薬草の匂いが益々強くなり、暫くして修道院長が奥の部屋から出てきた。
「そこにおる者達に治療を代われだと? 陛下はそれ程までに愚かであったか!
わしがおらねば王女殿下の御命はないのだぞ」
顔を赤くして怒鳴る修道院長に対してリアムは冷静に、
「陛下のご指示でございます。部屋の準備をしてありますゆえ、どうか暫くのご休憩を」
「なんと愚かな! そこにおるのは薄汚い平民ではないか。
そのような者を王女殿下の部屋に招き入れるなどあり得ん! さっさと立ち去れ」
リアムは修道院長を冷たい目で見ながら、
「では、修道院長殿は陛下のお言葉に従うことは出来ないと申されますかな?」
「・・そうは申しておらん。愚かな決断に呆れておるのよ。
勝手にするが良い」
修道院長は靴音高く部屋を出て行った。
リアム達四人は王女殿下の部屋に入ったが、部屋の中は薄暗く薬草の匂いで息もつけないほどだった。
「はい、父の代より薬剤師を致しており、多くの患者を治療して参りました」
国王陛下に返答しているのはジョセフで、アイヴィはその横に助手として控えていた。
国王陛下は顔色が悪く、よく見ると目の下に隈が出来ている。
「・・余も宮廷医師達も役に立たなんだ。修道院長の治療も捗々しくない」
国王陛下は目を瞑り額を擦りながら、
「其方には自信があるのだな。必ず王女を助けると余の前で誓えるのか?」
「恐れながら、今現在の王女殿下の御様態も不明なままでは確約は致しかねます。
ただ、今迄の経験と知識が必ずや王女殿下のお役に立つと信じております」
長い沈黙の間、国王陛下はジョセフをじっと見つめていた。
「・・王女を頼む。どうかあれを助けてやってくれ」
「全身全霊をもって」
ジョセフとアイヴィは頭を下げた後、
「一つお願いがございます」
「申してみよ」
「修道院長殿に一時ご退出を願いたいと」
「あの者が邪魔と申すか?」
「治療方法の違いから議論になりましては無駄な時間がかかってしまいます。
私達の聞き及んでいる様子では一刻も無駄に出来ないと思われますので」
「分かった。修道院長には口を挟まぬよう申し伝える。但し、其方達には王宮医師団の者をつけるが良いな」
「はい、その方が何かと好都合でございます」
王宮医師団長のリアム・エバンズとその息子タイラー・エバンズの後ろを、ジョセフとアイヴィは歩いている。
王女殿下は塔の外れの部屋に移動されており、謁見の間からはかなりの距離があった。
王女殿下の部屋に近付くと、きつい薬草の匂いがしてきた。
部屋の前には二人の衛兵がおり、リアム達の顔を見た途端敬礼した。
「修道院長殿に取次を」
「はっ」
衛兵がドアを開けると薬草の匂いが益々強くなり、暫くして修道院長が奥の部屋から出てきた。
「そこにおる者達に治療を代われだと? 陛下はそれ程までに愚かであったか!
わしがおらねば王女殿下の御命はないのだぞ」
顔を赤くして怒鳴る修道院長に対してリアムは冷静に、
「陛下のご指示でございます。部屋の準備をしてありますゆえ、どうか暫くのご休憩を」
「なんと愚かな! そこにおるのは薄汚い平民ではないか。
そのような者を王女殿下の部屋に招き入れるなどあり得ん! さっさと立ち去れ」
リアムは修道院長を冷たい目で見ながら、
「では、修道院長殿は陛下のお言葉に従うことは出来ないと申されますかな?」
「・・そうは申しておらん。愚かな決断に呆れておるのよ。
勝手にするが良い」
修道院長は靴音高く部屋を出て行った。
リアム達四人は王女殿下の部屋に入ったが、部屋の中は薄暗く薬草の匂いで息もつけないほどだった。
1
お気に入りに追加
210
あなたにおすすめの小説

妹に婚約者を奪われたので妹の服を全部売りさばくことに決めました
常野夏子
恋愛
婚約者フレデリックを妹ジェシカに奪われたクラリッサ。
裏切りに打ちひしがれるも、やがて復讐を決意する。
ジェシカが莫大な資金を投じて集めた高級服の数々――それを全て売りさばき、彼女の誇りを粉々に砕くのだ。

お姉さまが家を出て行き、婚約者を譲られました
さこの
恋愛
姉は優しく美しい。姉の名前はアリシア私の名前はフェリシア
姉の婚約者は第三王子
お茶会をすると一緒に来てと言われる
アリシアは何かとフェリシアと第三王子を二人にしたがる
ある日姉が父に言った。
アリシアでもフェリシアでも婚約者がクリスタル伯爵家の娘ならどちらでも良いですよね?
バカな事を言うなと怒る父、次の日に姉が家を、出た
婚約破棄されましたが、帝国皇女なので元婚約者は投獄します
けんゆう
ファンタジー
「お前のような下級貴族の養女など、もう不要だ!」
五年間、婚約者として尽くしてきたフィリップに、冷たく告げられたソフィア。
他の貴族たちからも嘲笑と罵倒を浴び、社交界から追放されかける。
だが、彼らは知らなかった――。
ソフィアは、ただの下級貴族の養女ではない。
そんな彼女の元に届いたのは、隣国からお兄様が、貿易利権を手土産にやってくる知らせ。
「フィリップ様、あなたが何を捨てたのかーー思い知らせて差し上げますわ!」
逆襲を決意し、華麗に着飾ってパーティーに乗り込んだソフィア。
「妹を侮辱しただと? 極刑にすべきはお前たちだ!」
ブチギレるお兄様。
貴族たちは青ざめ、王国は崩壊寸前!?
「ざまぁ」どころか 国家存亡の危機 に!?
果たしてソフィアはお兄様の暴走を止め、自由な未来を手に入れられるか?
「私の未来は、私が決めます!」
皇女の誇りをかけた逆転劇、ここに開幕!
不遇な王妃は国王の愛を望まない
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。
※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷
※稚拙ながらも投稿初日からHOTランキング(2024.11.21)に入れて頂き、ありがとうございます🙂 今回初めて最高ランキング5位(11/23)✨ まさに感無量です🥲
毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。
克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。


【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?
水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。
日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。
そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。
一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。
◇小説家になろうにも掲載中です!
◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる