2 / 37
2.女なんて
しおりを挟む
「はいこれ、いつも通り小さく切り刻んで煮出してね。だけどあんまり無茶しすぎたらいつかこれじゃ効かなくなるからね」
「そん時はどうなる?」
「秘密。不安だったら無茶しないの、結婚したてで旦那さんが歩けなくなったらフレヤが可哀想よ」
「アイヴィ、縁起でもないこと言うなよー」
「だったら、きちんと足を休めてマッサージするの」
「おっおう」
アイヴィは、がっくりと肩を落として歩いて行く猟師ギャビンの後ろ姿を見つめた。
「アイヴィ、いつもの薬くれるかい?」
アイヴィは声のした方に振り返り、
「はーい、メイソンさん咳の調子はどう?」
「薬変えてもらって随分と楽になってきたよ」
「良かった、お湯沸かして喉しっかり温めてる?」
「あれをしはじめてから夜よく眠れるようになったから、10歳は若返った気がするのう。
今度の祭りじゃみんなと一緒に一晩中でも踊りまくれそうじゃよ」
顔中を皺だらけにして笑うメイソンはこの町の長老の一人で、短く切った真っ白い髪が特徴の町の人気者でもある。
アイヴィの家は祖父の代から続くこの町唯一の薬屋。
二年前医学の勉強を終えて帰ってきたアイヴィは、父のジョセフと共に薬剤師として働いている。
昼過ぎにジョセフを訪ねて男がやって来た。その男は仕立ての良い乗馬服を着ており、身のこなしが貴族のように見受けられた。
客の顔を見た時ジョセフはとても嬉しそうに笑い、
「なんだ、久しぶりじゃないか。こんな田舎町に何の用だ?」
「ちょっとお前に相談したいことがあるんだが」
客はアイヴィをチラッと見た後、小声でジョセフに何か話し店の奥の休憩室に入っていった。それからゆうに二時間は経っているだろう。
(随分長く話し込んでるけど、いったい誰なんだろう)
気になりながら薬の調合をしていると休憩室のドアが開き、ジョセフが顔を覗かせた。
「アイヴィ、ちょっと来てくれ」
アイヴィは店を助手のテディに任せて休憩室に入って行った。
「こいつは俺の古い知り合いのタイラー・エバンズ。
娘のアイヴィだ。アイヴィ、大事な話があるからちょっとここに座ってくれ」
アイヴィが腰掛けるとジョセフが、
「お前、ちょっこっと王宮に行って来い」
「はあ? 何で私が王宮に?」
「実はな王「おい、ジョセフ。内密の話だと言っただろうが!」」
タイラーが腰を浮かせ、慌ててジョセフの言葉を遮った。
「話さなきゃ先に進めんだろ? 行くならアイヴィを行かせる。俺には無理だ」
「なっ、お前に出来ないわけがないだろうが。それにお嬢さんじゃあ」
アイヴィは女では役に立たないと決めつけたタイラーを睨み、
「父さん、タイラーさん嫌がってらっしゃるし私は店に戻るから話は2人でして頂戴。
お邪魔しました」
立ち上がりドアに向けて歩き出すアイヴィの後ろからジョセフの声が聞こえた。
「アイヴィ、王女様を助けられるのはお前しかいねえ」
「そん時はどうなる?」
「秘密。不安だったら無茶しないの、結婚したてで旦那さんが歩けなくなったらフレヤが可哀想よ」
「アイヴィ、縁起でもないこと言うなよー」
「だったら、きちんと足を休めてマッサージするの」
「おっおう」
アイヴィは、がっくりと肩を落として歩いて行く猟師ギャビンの後ろ姿を見つめた。
「アイヴィ、いつもの薬くれるかい?」
アイヴィは声のした方に振り返り、
「はーい、メイソンさん咳の調子はどう?」
「薬変えてもらって随分と楽になってきたよ」
「良かった、お湯沸かして喉しっかり温めてる?」
「あれをしはじめてから夜よく眠れるようになったから、10歳は若返った気がするのう。
今度の祭りじゃみんなと一緒に一晩中でも踊りまくれそうじゃよ」
顔中を皺だらけにして笑うメイソンはこの町の長老の一人で、短く切った真っ白い髪が特徴の町の人気者でもある。
アイヴィの家は祖父の代から続くこの町唯一の薬屋。
二年前医学の勉強を終えて帰ってきたアイヴィは、父のジョセフと共に薬剤師として働いている。
昼過ぎにジョセフを訪ねて男がやって来た。その男は仕立ての良い乗馬服を着ており、身のこなしが貴族のように見受けられた。
客の顔を見た時ジョセフはとても嬉しそうに笑い、
「なんだ、久しぶりじゃないか。こんな田舎町に何の用だ?」
「ちょっとお前に相談したいことがあるんだが」
客はアイヴィをチラッと見た後、小声でジョセフに何か話し店の奥の休憩室に入っていった。それからゆうに二時間は経っているだろう。
(随分長く話し込んでるけど、いったい誰なんだろう)
気になりながら薬の調合をしていると休憩室のドアが開き、ジョセフが顔を覗かせた。
「アイヴィ、ちょっと来てくれ」
アイヴィは店を助手のテディに任せて休憩室に入って行った。
「こいつは俺の古い知り合いのタイラー・エバンズ。
娘のアイヴィだ。アイヴィ、大事な話があるからちょっとここに座ってくれ」
アイヴィが腰掛けるとジョセフが、
「お前、ちょっこっと王宮に行って来い」
「はあ? 何で私が王宮に?」
「実はな王「おい、ジョセフ。内密の話だと言っただろうが!」」
タイラーが腰を浮かせ、慌ててジョセフの言葉を遮った。
「話さなきゃ先に進めんだろ? 行くならアイヴィを行かせる。俺には無理だ」
「なっ、お前に出来ないわけがないだろうが。それにお嬢さんじゃあ」
アイヴィは女では役に立たないと決めつけたタイラーを睨み、
「父さん、タイラーさん嫌がってらっしゃるし私は店に戻るから話は2人でして頂戴。
お邪魔しました」
立ち上がりドアに向けて歩き出すアイヴィの後ろからジョセフの声が聞こえた。
「アイヴィ、王女様を助けられるのはお前しかいねえ」
2
お気に入りに追加
210
あなたにおすすめの小説

妹に婚約者を奪われたので妹の服を全部売りさばくことに決めました
常野夏子
恋愛
婚約者フレデリックを妹ジェシカに奪われたクラリッサ。
裏切りに打ちひしがれるも、やがて復讐を決意する。
ジェシカが莫大な資金を投じて集めた高級服の数々――それを全て売りさばき、彼女の誇りを粉々に砕くのだ。

お姉さまが家を出て行き、婚約者を譲られました
さこの
恋愛
姉は優しく美しい。姉の名前はアリシア私の名前はフェリシア
姉の婚約者は第三王子
お茶会をすると一緒に来てと言われる
アリシアは何かとフェリシアと第三王子を二人にしたがる
ある日姉が父に言った。
アリシアでもフェリシアでも婚約者がクリスタル伯爵家の娘ならどちらでも良いですよね?
バカな事を言うなと怒る父、次の日に姉が家を、出た
婚約破棄されましたが、帝国皇女なので元婚約者は投獄します
けんゆう
ファンタジー
「お前のような下級貴族の養女など、もう不要だ!」
五年間、婚約者として尽くしてきたフィリップに、冷たく告げられたソフィア。
他の貴族たちからも嘲笑と罵倒を浴び、社交界から追放されかける。
だが、彼らは知らなかった――。
ソフィアは、ただの下級貴族の養女ではない。
そんな彼女の元に届いたのは、隣国からお兄様が、貿易利権を手土産にやってくる知らせ。
「フィリップ様、あなたが何を捨てたのかーー思い知らせて差し上げますわ!」
逆襲を決意し、華麗に着飾ってパーティーに乗り込んだソフィア。
「妹を侮辱しただと? 極刑にすべきはお前たちだ!」
ブチギレるお兄様。
貴族たちは青ざめ、王国は崩壊寸前!?
「ざまぁ」どころか 国家存亡の危機 に!?
果たしてソフィアはお兄様の暴走を止め、自由な未来を手に入れられるか?
「私の未来は、私が決めます!」
皇女の誇りをかけた逆転劇、ここに開幕!
不遇な王妃は国王の愛を望まない
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。
※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷
※稚拙ながらも投稿初日からHOTランキング(2024.11.21)に入れて頂き、ありがとうございます🙂 今回初めて最高ランキング5位(11/23)✨ まさに感無量です🥲
毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。
克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

【完結】いいえ。チートなのは旦那様です
仲村 嘉高
恋愛
伯爵家の嫡男の婚約者だったが、相手の不貞により婚約破棄になった伯爵令嬢のタイテーニア。
自分家は貧乏伯爵家で、婚約者の伯爵家に助けられていた……と、思ったら実は騙されていたらしい!
ひょんな事から出会った公爵家の嫡男と、あれよあれよと言う間に結婚し、今までの搾取された物を取り返す!!
という事が、本人の知らない所で色々進んでいくお話(笑)
※HOT最高◎位!ありがとうございます!(何位だったか曖昧でw)


【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる