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16.張り切る事務員達
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「勝手に爵位を押し付けといて後は知らんぷりだ。それだって俺を・・いや、商会をこの国に縛りつけたかっただけだしな」
「だったらこっちから爵位返上すれば済む事じゃ」
「まあな、そうするつもりだったんだがちょっと様子見してる間におかしな奴に絡まれたからなぁ」
おかしな奴・・リチャードの事だろう。様子見に九年とは些か気が長すぎる気もするが・・。
「取り敢えず盛大な花火をぶちかまして・・後はどうするかなぁ」
ヒューゴの顔がどんどん悪人顔になっていく。
(父さんの今の顔を見たらフリーカンパニーの団長も怯えるわ。ちっちゃい頃の私だったら確実に泣いてる)
午前中は手伝いの人達との打ち合わせに終始した。
ヒューゴが準備したメンバーは商会でも古参の事務員が六人で、彼等とはルーシーがまだ赤ちゃんの頃からの仲。
ルーシーの母は産後体調を崩してそのまま他界した為、ヒューゴは時折ルーシーをおぶって仕事をしていた。
『乳母に預けっぱなしじゃ俺が寂しいんだよ』
仕事が一段落するたびに商会員達に構い倒されたルーシーは、いつの間にか商会のマスコットのようになっていた。
『いらっちゃいまちぇ』
『ごくろうちゃまでちゅ』
父親の膝の上で会議に参加し、事務員の隣でおやつを食べながら帳簿付けを覚え・・。
『このおにんぎょうは、にじゅっぱーしぇんとはしょん。はしょんってなあに?』
事務所中が凍りついた。
ヒューゴは教会を訪れ多額の寄付をした後司祭と魔法契約を結び、当時四歳のルーシーのスキルの確認を行った。その結果は、
【鑑定】【収納】【索敵】
ヒューゴは商会員達にも魔法契約で口止めを行い、ルーシーがある程度の年齢になるまで手元から一切離さなくなった。
将来《商売の神様》《錬金術師》などと揶揄されるヒューゴの側で仕事を見続けてきたルーシーが、商会内でミニヒューゴと呼ばれ仕事の才を発揮しはじめたのは僅か八歳の時だった。
ルーシーの事は徹底的に隠匿された。
対外的にはただの仕事好きの少女で、商会長が甘々で商会内を彷徨いているだけ。
大人しく商会長の隣に座って会議に参加し、特定の商会員の後ろをついて倉庫を回る。
十六歳でリチャードと結婚する頃には、ガードナー商会の子飼いの商会と言われているアンゲルス商会を立ち上げていた。
公の商会長はヒューゴの右腕のフレッドで、ルーシーが表に出る事は一切ない。
ルーシーのスキル隠匿の為であるが、それ以外にもアンバーシア王国が根強い男尊女卑の国だということにも起因している。
女性がトップの商会などあり得ないと商売に支障が出る可能性が高い。
取り扱う商品はルーシーの鑑定スキルを活かした絵画や貴金属などの高級品。
これらの輸出入を行い多額の利鞘を稼いでいる。
ガードナー商会本店の鑑定もルーシーが行っている為ヒューゴからは、
『稼ぎは俺よりルーシーの方が多いんじゃないか?』
と、揶揄われるほどになっている。
お陰でマルフォー伯爵家の散財に耐えられたルーシーだが、そんな事とは知らないリチャードは『ルーシーなんかガードナーから金を貢がせる為の駒』だと思っている。
そのお陰で婚約契約書にはアンゲルス商会についての記載がない。
「今日中に印のついてる物とついてない物を二つの用紙に分けて欲しいの。書式はこれで」
「この請求書は日付順になっているかの確認と、購入者・購入場所・納品書・納品場所が揃っているかの確認を。
この二つをセットにして綴じてナンバリングして下さい。
不足があった物についてはナンバーと一緒に別紙に書き出して・・これは明日中にお願いします」
「どちらも裁判所に提出する資料になるから間違いのないよう何度もチェックして下さい。
それから、人が足りないなら追加するので早めに私か会長に連絡を」
矢継ぎ早に指示を出すルーシーと真剣な顔で書類を見つめる事務員達。
(うちのルーシーを利用しまくった伯爵家に目にモノ見せてやる)
「だったらこっちから爵位返上すれば済む事じゃ」
「まあな、そうするつもりだったんだがちょっと様子見してる間におかしな奴に絡まれたからなぁ」
おかしな奴・・リチャードの事だろう。様子見に九年とは些か気が長すぎる気もするが・・。
「取り敢えず盛大な花火をぶちかまして・・後はどうするかなぁ」
ヒューゴの顔がどんどん悪人顔になっていく。
(父さんの今の顔を見たらフリーカンパニーの団長も怯えるわ。ちっちゃい頃の私だったら確実に泣いてる)
午前中は手伝いの人達との打ち合わせに終始した。
ヒューゴが準備したメンバーは商会でも古参の事務員が六人で、彼等とはルーシーがまだ赤ちゃんの頃からの仲。
ルーシーの母は産後体調を崩してそのまま他界した為、ヒューゴは時折ルーシーをおぶって仕事をしていた。
『乳母に預けっぱなしじゃ俺が寂しいんだよ』
仕事が一段落するたびに商会員達に構い倒されたルーシーは、いつの間にか商会のマスコットのようになっていた。
『いらっちゃいまちぇ』
『ごくろうちゃまでちゅ』
父親の膝の上で会議に参加し、事務員の隣でおやつを食べながら帳簿付けを覚え・・。
『このおにんぎょうは、にじゅっぱーしぇんとはしょん。はしょんってなあに?』
事務所中が凍りついた。
ヒューゴは教会を訪れ多額の寄付をした後司祭と魔法契約を結び、当時四歳のルーシーのスキルの確認を行った。その結果は、
【鑑定】【収納】【索敵】
ヒューゴは商会員達にも魔法契約で口止めを行い、ルーシーがある程度の年齢になるまで手元から一切離さなくなった。
将来《商売の神様》《錬金術師》などと揶揄されるヒューゴの側で仕事を見続けてきたルーシーが、商会内でミニヒューゴと呼ばれ仕事の才を発揮しはじめたのは僅か八歳の時だった。
ルーシーの事は徹底的に隠匿された。
対外的にはただの仕事好きの少女で、商会長が甘々で商会内を彷徨いているだけ。
大人しく商会長の隣に座って会議に参加し、特定の商会員の後ろをついて倉庫を回る。
十六歳でリチャードと結婚する頃には、ガードナー商会の子飼いの商会と言われているアンゲルス商会を立ち上げていた。
公の商会長はヒューゴの右腕のフレッドで、ルーシーが表に出る事は一切ない。
ルーシーのスキル隠匿の為であるが、それ以外にもアンバーシア王国が根強い男尊女卑の国だということにも起因している。
女性がトップの商会などあり得ないと商売に支障が出る可能性が高い。
取り扱う商品はルーシーの鑑定スキルを活かした絵画や貴金属などの高級品。
これらの輸出入を行い多額の利鞘を稼いでいる。
ガードナー商会本店の鑑定もルーシーが行っている為ヒューゴからは、
『稼ぎは俺よりルーシーの方が多いんじゃないか?』
と、揶揄われるほどになっている。
お陰でマルフォー伯爵家の散財に耐えられたルーシーだが、そんな事とは知らないリチャードは『ルーシーなんかガードナーから金を貢がせる為の駒』だと思っている。
そのお陰で婚約契約書にはアンゲルス商会についての記載がない。
「今日中に印のついてる物とついてない物を二つの用紙に分けて欲しいの。書式はこれで」
「この請求書は日付順になっているかの確認と、購入者・購入場所・納品書・納品場所が揃っているかの確認を。
この二つをセットにして綴じてナンバリングして下さい。
不足があった物についてはナンバーと一緒に別紙に書き出して・・これは明日中にお願いします」
「どちらも裁判所に提出する資料になるから間違いのないよう何度もチェックして下さい。
それから、人が足りないなら追加するので早めに私か会長に連絡を」
矢継ぎ早に指示を出すルーシーと真剣な顔で書類を見つめる事務員達。
(うちのルーシーを利用しまくった伯爵家に目にモノ見せてやる)
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