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6.吠える執事と喜ぶヒューゴ
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片付けを終えたルーシーは執事を呼び一通の封筒を手渡した。
「リチャードの指示で私物を運び出したのだからお父様達はご存知の事だとは思うのだけど、念の為手紙を認めておきました。お帰りになられたらお渡ししてね」
「畏まりました」
「では夜も遅いのでこのまま帰ります。
忘れてたわ! 裏の厩舎にちょっと寄って帰るから、アリスは馬車に先に帰っておいて。厩舎に鍵はかかってる?」
「いえ、かかっておりません」
「良かった。では後は宜しく、何かあればリチャードに連絡を取ってね」
アリスが馬車に戻り、ルーシーが馬を引き連れて厩舎を離れる頃になって屋敷から、
『何だこりゃー!』
と言う執事の叫び声が響いて来た。
馬車の中から様子を見ていたアリスは、
(そっか、生き物は収納できないんだ)
ガードナー男爵家のタウンハウスに着くと、玄関に仁王立ちしたヒューゴが待っていた。
「大変だったな、中に入りなさい。簡単な食事を準備してあるから食べながら話そう」
私室で身支度を整え食堂に行くと、普段はエールばかりのヒューゴがワインを飲みながら待っていた。
「珍しいね。お祝い?」
ルーシーがヒューゴを揶揄うと苦笑いしながらグラスを掲げ、ルーシーのクラスにもワインを注いでくれた。
椅子に座りヒューゴが入れてくれたワインを飲みながら、鶏肉の蒸し焼きを口に入れた。
「可愛い娘が帰って来たんだ。前祝いってやつかな。・・お前も少し飲むといいってもう飲んでるか、顔が真っ青だな」
「流石に疲れた。リチャードが帰って来る前に済ませなきゃって必死だったから」
「で、この後はどうする?」
「勿論、離婚訴訟よ。明日離婚届が届くけどその前に訴えるわ」
「準備は出来てるのか?」
「うーん、今日持って帰った物の査定が一番大変かも。
でも、リチャード親子の吃驚する顔を想像したら頑張れる」
ルーシーは収納スキルを発揮して、彼らがこの三年間にガードナー家の資産で購入した物を出来る限り持って帰って来た。
応接室からは応接セットやタペストリー、飾られていた絵画や壺など全て。
客間からはソファやテーブル、ベッド・寝具・カーテン・カーペット等々。
リチャードの私室にあった家具や貴金属、勿論スーツや靴も。
「今夜寝るベッドやソファも寝具もないけどどうするのかしら」
食事を終わらせて、ワインのお供にチーズやナッツを摘みながら二人は顔を見合わせてクスリと笑った。
「野営する奴でも毛布くらいは持ってるぞ」
「そうか、離れにあるのを出してくればいいんだわ」
リチャードが帰って空っぽの玄関ホールを見た途端驚愕するに違いない。
「多分だけど、今日の時点で動かせる物は全部持って帰って来たと思うの。
リストと照らし合わせながら作業したから漏れはないはず。
どうせ残りも全てリストアップしてるから良いんだけどね」
「念の為、明日の朝一番で商業ギルドに通達を送るか。マルフォー伯爵家からの請求書は全てあっちに送れって」
「その方がいいと思う。常識のない人達だから何をするか分かんないからね。
もしかしたら無くなってる分を新しく購入して請求書をこっちに送ってくるとか。
父さんの方は準備出来てる?」
「おう、どこを突いても何も出てこんぞ。完璧に準備してある。
そうだ、辺境伯のロンズデール侯爵にも一報しておいたらどうだ?」
「リチャードの指示で私物を運び出したのだからお父様達はご存知の事だとは思うのだけど、念の為手紙を認めておきました。お帰りになられたらお渡ししてね」
「畏まりました」
「では夜も遅いのでこのまま帰ります。
忘れてたわ! 裏の厩舎にちょっと寄って帰るから、アリスは馬車に先に帰っておいて。厩舎に鍵はかかってる?」
「いえ、かかっておりません」
「良かった。では後は宜しく、何かあればリチャードに連絡を取ってね」
アリスが馬車に戻り、ルーシーが馬を引き連れて厩舎を離れる頃になって屋敷から、
『何だこりゃー!』
と言う執事の叫び声が響いて来た。
馬車の中から様子を見ていたアリスは、
(そっか、生き物は収納できないんだ)
ガードナー男爵家のタウンハウスに着くと、玄関に仁王立ちしたヒューゴが待っていた。
「大変だったな、中に入りなさい。簡単な食事を準備してあるから食べながら話そう」
私室で身支度を整え食堂に行くと、普段はエールばかりのヒューゴがワインを飲みながら待っていた。
「珍しいね。お祝い?」
ルーシーがヒューゴを揶揄うと苦笑いしながらグラスを掲げ、ルーシーのクラスにもワインを注いでくれた。
椅子に座りヒューゴが入れてくれたワインを飲みながら、鶏肉の蒸し焼きを口に入れた。
「可愛い娘が帰って来たんだ。前祝いってやつかな。・・お前も少し飲むといいってもう飲んでるか、顔が真っ青だな」
「流石に疲れた。リチャードが帰って来る前に済ませなきゃって必死だったから」
「で、この後はどうする?」
「勿論、離婚訴訟よ。明日離婚届が届くけどその前に訴えるわ」
「準備は出来てるのか?」
「うーん、今日持って帰った物の査定が一番大変かも。
でも、リチャード親子の吃驚する顔を想像したら頑張れる」
ルーシーは収納スキルを発揮して、彼らがこの三年間にガードナー家の資産で購入した物を出来る限り持って帰って来た。
応接室からは応接セットやタペストリー、飾られていた絵画や壺など全て。
客間からはソファやテーブル、ベッド・寝具・カーテン・カーペット等々。
リチャードの私室にあった家具や貴金属、勿論スーツや靴も。
「今夜寝るベッドやソファも寝具もないけどどうするのかしら」
食事を終わらせて、ワインのお供にチーズやナッツを摘みながら二人は顔を見合わせてクスリと笑った。
「野営する奴でも毛布くらいは持ってるぞ」
「そうか、離れにあるのを出してくればいいんだわ」
リチャードが帰って空っぽの玄関ホールを見た途端驚愕するに違いない。
「多分だけど、今日の時点で動かせる物は全部持って帰って来たと思うの。
リストと照らし合わせながら作業したから漏れはないはず。
どうせ残りも全てリストアップしてるから良いんだけどね」
「念の為、明日の朝一番で商業ギルドに通達を送るか。マルフォー伯爵家からの請求書は全てあっちに送れって」
「その方がいいと思う。常識のない人達だから何をするか分かんないからね。
もしかしたら無くなってる分を新しく購入して請求書をこっちに送ってくるとか。
父さんの方は準備出来てる?」
「おう、どこを突いても何も出てこんぞ。完璧に準備してある。
そうだ、辺境伯のロンズデール侯爵にも一報しておいたらどうだ?」
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