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10.作戦会議 ③

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「あの・・一つ疑問なんだけど、何故おじ様ドントジー侯爵だったのかしら?」

「「「「?」」」」

「投資会社からしたら、資金順調な人を直接狙った方が手っ取り早いのにって。
銀鉱山で資金順調に見えてて声を掛けたとしても、資金不足なのが分かった後も話を進めたのは何故なのかなって」

「ごめんリリアーナ、意味が分からない。もう少し詳しく頼む」

「投資とかの世界はよく分からないけど、真面な会社は相手がちゃんと取引出来るか調べて契約をするでしょう?
でも、悪質な会社だったら逆にリスクがあっても話に乗ってくるとか、乗らざるを得ない人を選ぶんじゃないかしら」


「リスクがあっても乗らざるを得ない状況・・確かにその通りだ」

「おじ様には人脈も信用もあるでしょう? 裕福な人との商売には・・って言葉もある位だもの。
おじ様の社交界での評価は仕事をする上で凄く価値のあるものだわ。
だとしたらおじ様の今の状況を調べたのか、誰かから聞いたのか」

「くそ!」

「類は友を呼ぶって言うし、悪人繋がりで情報が広がるとしたら銀の闇取引の相手なんて最適かも。
可能性の一つくらいには覚えておいた方が良いのかなって」

「そうなると、問題を一つずつ片付けるやり方をすると不味いって事か。
参ったな、俺の様な若造には問題がデカすぎて何から手をつけたらいいのか分からなくなってきた」


 エリオットは頭を抱えて黙り込んでしまった。暫く悩んでいたが溜息を吐いた後、

「マーシャル公爵閣下に連絡がつくまでに、出来る限り不正取引の資料を準備する。その時に投資会社の件を相談するしかないな」

「銀の取引相手のリストを貰える? お父様に頼んで調べてもらうわ。
もし何かしらの繋がりが出てきたらラッキーだし。あっ、投資を決めた人のリストもお願い。
それと引き続き投資会社の張り込みと調査は継続して貰っとく」

「ありがとう。リリアーナ、本当に助かる。いつか必ず礼をするから言ってくれ」


「ふふ。実はね、おねだりの内容はもう考えてあるの」

「何? なんでも言ってくれ。俺に出来る事なら何でも」

 リリアーナは膝に手を置き前のめりになった後、シエナとエリオットを交互に見てにっこりと笑った。

「シエナの赤ちゃんが産まれたら、三人の中で一番に抱っこさせて貰う権利をぜひ!」

「「ええ! リリアーナそれは狡いわ」」
「あっ赤ちゃんって」

「二人目の時と三人目の時は諦めるから」

「なら・・うん、許す」
「シエナ、三人以上産まなかったらお仕置きだからね」

「でも、考えてみたら一番働くのはおじ様カートレット伯爵よね」

「いや、あの。カートレット伯爵にその権利を譲るのは、俺としては絶対に断りたいと言うか・・女の子だったら・・ああ、そんな」

「ふふ、大丈夫。お父様との交換条件は決まってるの。今回手伝って欲しいことがあった時には、その分領地の仕事を余分に請け負うって事になってる」


「あの、あまり役に立てそうにはないんだけど、私達に出来る事ない?」

 恐る恐るリリアーナの顔を覗き込んだマチルダは、満面の笑顔を見つけて思わずのけぞった。

「しっかり計画は立ててあるの。
これから暫く二人は滅茶苦茶忙しくなると思うから安心してね」

「「何だか寒気が」」



「最後にミリアに話があるんだ。さっき話に出た投資を決めた人のリストにバーリー伯爵マシューの父の名前がある」

 ミリアが呆然としてエリオットを見つめた。

「マシューとの婚約を続けるなら、バーリー伯爵だけは先に手を打とうかと思って」

「・・教えてくれてありがとう。吃驚し過ぎて頭が働かないから、ちょっと考えてみる」

「謝るのは俺の方だから。いつでも言って欲しい」


「ルーカスが婚約破棄を言い出すまでに、最低でもマーシャル公爵閣下との会合までは漕ぎ着けなくちゃね」

「カートレット伯爵家とドントジー侯爵家の仲が拗れてるって、周りに思われる前に下準備は済ませないとって事ね」


「ルーカス達は一ヶ月後の卒業パーティーを狙ってくると思うからまだ余裕があるはずよ」

「なんでそこを狙ってくると思うの?」


「だってジェシカから押し付けられた本はどれも、卒業パーティーで婚約破棄してたもの。
内容は真面に読んでないから分かんないけど、あらすじを読んだら必要な事は全部書いてあったわ」

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