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5.リリアーナの情報

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「ルーカスと婚約してから定期的にドントジー侯爵家に行かなくちゃいけなかったのだけど、ルーカスはしょっちゅうお茶会の約束を破って居なくなっていて。
一人ぼっちの私にエリオット様がよく話しかけて下さっていたの」

「・・エリオット様はとてもお優しいから」

「ええ、もっと強引でも良いんじゃないかって思うくらいに。例えばだけど、マチルダの強さがエリオット様にあったらって」


 マチルダとミリアが顔を見合わせて首を傾げている。

「あのー、えーっと・・もしかしてだけど。ミリア、これってそういう事? ミリアの情報はどうなってる?」

「マチルダ、私に聞かないで。全然知らなかったわ」


 リリアーナがメイドを呼んで新しくお茶を入れ直した後、シエナがぽつりぽつりと話し始めた。


「エリオット様とは・・ずっとお手紙のやりとりを続けていて。
家族にも内緒だったしこの十年会ったこともないの。お母様は気づいておられたかもだけど、何も仰らないでいてくださったから。

・・近々私の婚約が決まりそうなの。

帝国に留学しているお兄様が向こうで結婚したいって仰って、そしたら私が家を継がなくちゃいけないからってお父様が。
だからエリオット様にもうお手紙は書けませんって書いたの」


 俯いて黙り込んだシエナ。

「・・シエナお節介だったらごめんね。何か手伝えることある?」

「私・・エリオット様に会いたい。出来ればエリオット様と」


「では、明日エリオット様にここに来ていただくわ」

「リリアーナ、大丈夫なの?」

「勿論よ。出来ない事を出来るなんていい加減な事は言わないわ。
でもその前にシエナには情報が必要だと思うの。エリオット様の性格を考えると何も仰らない可能性があるし、シエナの婚約の話が進んでるなら急がなくちゃ」

 シエナは背筋を伸ばし両手を膝に揃えて置いてリリアーナを正面から見つめた。

「リリアーナ、私少しでも可能性があるなら頑張ってみたいの。リリアーナのご存知の事教えて下さいますか?」



「まずドントジー侯爵家の銀鉱山だけど、ここ数年銀の産出量が激減してる。多分気付いてないのはルーカスだけだと思う。
新たな鉱山を探してるけど今の所見つかってないみたいだし。
無理な採掘を強いてるから何が起きるか分からないって。
表向きには今まで通りの散財を続けているからまだ誰も気付いてないけど、早晩財政破綻しかねない勢いだってお父様が仰ってた。
それから、侯爵はこの状況を打開する為に海上貿易に手を出そうとしてる。
投資家を募ってかなり大掛かりにね。うちにも話が来たんだけどお父様は断ったって仰ってた。
勿論成功するかもしれないけど、失敗したら大変な事になるわ。爵位返上どころじゃ済まないかもしれない」


 シエナだけではなくマチルダとミリアも真っ青になって震えはじめた。

「エリオット様が仰ってたの。

  うちはタチの悪い泥舟だ、
  今度は大波を起こして周りの
  船まで巻き込もうとしてる

ドントジー侯爵家とストレンジ侯爵家両家に関わってくる問題だからよく考えてしっかり話し合ってね」



「エリオット様が修道士になるって言い出したのはドントジー侯爵家を見限ったって事?」

「マチルダ!」

「だって、はじめはシエナを諦める為かと思ったけど侯爵家がそこまで酷い状況で修道士になるだなんて」

「ミリアもマチルダも落ち着いて。シエナ、貴方はどう思う?」

「エリオット様は家族を見捨てるような人じゃないと思うわ。でもこんな状況で修道士になるなんて意味が分からない。エリオット様らしくないと言うか」


 シエナは俯き、マチルダとミリアは顔を見合わせて首を傾げていた。

 長い時間の後ミリアが恐る恐る右手を上げて、

「・・多分だけど、私の勝手な想像だけど・・エリオット様がシエナの言うような人で、リリアーナが手を貸そうと思うような人なら時間稼ぎ? なんじゃないかしら。
時間が稼げるのかどうか分かんないけど」

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