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3.オートマタが大好き
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「時計職人のピエール・ジャケ・ドローが製作したと言われてる
《滝のある鳥篭》
なのだよ。
鞴の仕組みは分かるかな?
足踏みオルガンに使われてるアレだが、その原理を使って水が管の中を流れているように見せておるのだ。
以前見せた、文字や絵を描くオートマタと同じ人物の作と言われておる」
嬉しそうにオートマタを操作しているのは、ポルカランス王国の国王陛下。
「この方のオートマタは、美しさだけじゃなくストーリー性もあって本当に素晴らしいですね」
「であろう? やっぱりハリエットに声をかけて正解だった。
他の者達にはこれの良さが分からんらしい。
実に残念な事だ」
ハリエットの正面に座っている王妃が笑いながら、
「陛下のオートマタ好きは困りものですわ。
見たことのない物の話を聞くと、公務を抜け出してしまわれるのですから」
「オートマタは、今はまだ貴族しか持てぬ時計を多くの人々に広める良い機会になると余は思うておる。
その為にも、仕組みをよく理解し研究せねばならんのだ」
「はいはい。新しいオートマタが見つかりようございました」
「いつか
《ベンチの夫婦》
を見てみたい物だ」
ベンチの夫婦とは、ベンチに座った夫婦の穏やかで暖かい風景の一コマを切り取った作品。
新聞を読む主人の隣で、奥さんが編み物をしながら話しかけそれに主人が答える。
とても仲の良い国王陛下ご夫妻に似合いのオートマタだとハリエットも思っている。
「今日はありがとう。お陰で陛下はご機嫌だった」
「私も楽しませて頂きましたわ。《ベンチの夫婦》見つかると宜しいですね」
ジェイムズは、陛下の成婚25周年のお祝いにしたいと、陛下には内緒で《ベンチの夫婦》を探している。
「先日図書館で調べたのですが、ギュスターブ・ヴィシーという方の作品の可能性があるようですわ」
「そうか。オートマタを闇雲に探すだけではなく、作者の方から探す手もあるな。
ありがとう、最近は諦めかけていたんだ。
陛下が見つけてしまわれる前に、手に入れられると良いんだが」
陛下と王妃には三人の王子と王女がいる。側妃や愛妾はおらず、王子達と王女も陛下達と気質の似たとても優しい方ばかりだ。
ジェイムズは第三王子なので、ハリエットと結婚した後はアルベマール公爵となる。
ハリエットの父、現アルベマール公爵とジェイムズの仲も上手く行っており、つい先日も二人だけで領地の視察に出かけて行った。
ハリエットの周りには幸せが満ち溢れ、将来への不安は何もない・・はずなのだが、変態達に絡まれて最近のハリエットは溜息ばかりついている。
(あの方達の事なんとかしなきゃ、ジェイムズ様に呆れられちゃいそう)
《滝のある鳥篭》
なのだよ。
鞴の仕組みは分かるかな?
足踏みオルガンに使われてるアレだが、その原理を使って水が管の中を流れているように見せておるのだ。
以前見せた、文字や絵を描くオートマタと同じ人物の作と言われておる」
嬉しそうにオートマタを操作しているのは、ポルカランス王国の国王陛下。
「この方のオートマタは、美しさだけじゃなくストーリー性もあって本当に素晴らしいですね」
「であろう? やっぱりハリエットに声をかけて正解だった。
他の者達にはこれの良さが分からんらしい。
実に残念な事だ」
ハリエットの正面に座っている王妃が笑いながら、
「陛下のオートマタ好きは困りものですわ。
見たことのない物の話を聞くと、公務を抜け出してしまわれるのですから」
「オートマタは、今はまだ貴族しか持てぬ時計を多くの人々に広める良い機会になると余は思うておる。
その為にも、仕組みをよく理解し研究せねばならんのだ」
「はいはい。新しいオートマタが見つかりようございました」
「いつか
《ベンチの夫婦》
を見てみたい物だ」
ベンチの夫婦とは、ベンチに座った夫婦の穏やかで暖かい風景の一コマを切り取った作品。
新聞を読む主人の隣で、奥さんが編み物をしながら話しかけそれに主人が答える。
とても仲の良い国王陛下ご夫妻に似合いのオートマタだとハリエットも思っている。
「今日はありがとう。お陰で陛下はご機嫌だった」
「私も楽しませて頂きましたわ。《ベンチの夫婦》見つかると宜しいですね」
ジェイムズは、陛下の成婚25周年のお祝いにしたいと、陛下には内緒で《ベンチの夫婦》を探している。
「先日図書館で調べたのですが、ギュスターブ・ヴィシーという方の作品の可能性があるようですわ」
「そうか。オートマタを闇雲に探すだけではなく、作者の方から探す手もあるな。
ありがとう、最近は諦めかけていたんだ。
陛下が見つけてしまわれる前に、手に入れられると良いんだが」
陛下と王妃には三人の王子と王女がいる。側妃や愛妾はおらず、王子達と王女も陛下達と気質の似たとても優しい方ばかりだ。
ジェイムズは第三王子なので、ハリエットと結婚した後はアルベマール公爵となる。
ハリエットの父、現アルベマール公爵とジェイムズの仲も上手く行っており、つい先日も二人だけで領地の視察に出かけて行った。
ハリエットの周りには幸せが満ち溢れ、将来への不安は何もない・・はずなのだが、変態達に絡まれて最近のハリエットは溜息ばかりついている。
(あの方達の事なんとかしなきゃ、ジェイムズ様に呆れられちゃいそう)
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