73 / 126
65.ようやく引き継げて、任務完了!
しおりを挟む
「無知なポンコツ王子に教えてあげますね。聖女って治癒魔法の力が強い者の職業って言うだけで、別に治癒魔法しか使えないわけじゃない。
複数の属性持ちなら治癒以外の魔法も使えるに決まってる。例えば⋯⋯」
剣を片付け⋯⋯ テラスの向こうに向けた掌からいくつもの火球を飛ばし、大量の水で消火する。風を巻き起こすと樹々が揺れて、設置していた魔導具が地面に落ち『ガチャガチャ』と音を立てて壊れた。
「治癒魔法特化型の聖女もいるし、オールマイティの聖女もいるって事。お分かりいただけました?」
「⋯⋯凄い! やっぱりロクサーナを連れていけば上手くいきそう」
「聖王国で正式に認められた聖女であり、大聖女候補とされている私への度重なる『偽物』発言は、聖王国に対する侮辱でもあり、名誉毀損で慰謝料を追加いたします。
それに、ポンコツ王子は国王達と同罪ですから、逃げられませんよ?」
大広間の扉が勢いよく開かれて、見たことのない制服を纏った大量の男達が雪崩れ込んできた。
(漸くかよ~、仕事遅すぎ)
「国際司法裁判所から参りました、エドワード・ノッティス。国際法に則り、他種族の迫害を目的とした人為的スタンピードについて調査いたします!」
「「「他種族!?」」」
「聖王国聖女、ロクサーナ・バーラム様に心からの感謝を捧げ、これより以降を引き継がせていただきます」
聖王国から送られた数多くの証拠と共に乗り込んできた執政官達の前で、国王達が崩れ落ちた。
「もう、終いじゃ。あと少しで余の未来は輝かしいものになっておったのに⋯⋯クソオッ」
「皆さん、長々とお疲れさまでした。私はこれで失礼いたしますが、この後も頑張ってくださいませ」
パチンと指を鳴らしたロクサーナの姿が大広間から消え、呆然と立ち竦む者達の中に絶叫と咆哮が響き渡った。
「待って! ロクサーナ」
「置いてかないでぇぇ」
モガァァ⋯⋯グブッ⋯⋯バンバン⋯⋯フグッ⋯⋯
「ジル! すぐに迎えに行ってあげるからぁぁ」
若干1名、いまだに勘違いを続ける夢想家もいたが⋯⋯。
「1日早いけど、任務完了でいいかな?」
ロクサーナの転移先はジルベルト司祭の執務室。
執務机の上には相変わらず書類が山積みだが、テーブルにはロクサーナの好きなお菓子が並んでいる。
「もちろん! お疲れさまだったね」
いつもと同じ疲れた様子のジルベルト司祭が両手を広げて出迎えてくれた。
「また、クマが育ってる~」
実働部隊はロクサーナひとりで、後方支援はジルベルト司祭担当。
「複数の国が絡むここまで大掛かりな案件は滅多にないから、流石に疲れたかな。でも、合間合間にロクサーナが笑わせてくれたから、なんとか最後まで漕ぎつけられた。
それと⋯⋯ドレス、良く似合ってる」
「あ、ありがとう。えっと、えーっと⋯⋯ジルベルト司祭のお陰で手に入れた魔糸だしね。それに笑わせた覚えは⋯⋯ゴニョゴニョ⋯⋯そうだ! ジルベルト司祭に~、じゃじゃ~ん。はい、お礼の品?」
ロクサーナが自分のものより丹精込めて、何度も作り直した⋯⋯変異種のアラクネの魔糸で作ったフード付き、光の加減によってはうっすらと霞んだ紫にも見える白いローブ。前ボタンはそれぞれ違う機能付きになっている。
「上から隠蔽・結界・記録の魔導具。1回握るとスタートして、もう1回握るとストップだから忘れないでね」
ローブの内側には特殊加工した冷却・保冷機能付きの淡いブルーのライナーコート。もちろん、寒い季節用の暖房・保温機能付きのライナーコートも準備してあり、これは淡いグリーン。
攻撃無効・魔法無効以外にもあらゆる付与が付けられた、お値段天井知らずの一品。
「⋯⋯ロクサーナ? これは、その。お礼とか言うレベルを超えてる気がするんだが」
「契約期間終了だからね~。6年間わがまま聞いてもらったお礼!」
自分が特別扱いしてもらっている事は重々承知していた。教会の規則を無視して単独行動を望み、受けた仕事に対する個別報酬制で都度払い。
請け負う仕事の決定権はロクサーナにあり、報告の義務はあるが契約書に書かれていない部分は全て自由。
『怪我をせず帰ってくれば良いからね』
元々かなり社畜⋯⋯会畜気味のジルベルト司祭だが、仕事を何割か割り増ししていたのはロクサーナだろう。
各部署への根回しに枢機卿への直談判。聖王やあちこちからのゴリ押しへのストッパー。ロクサーナが仕事をはじめたばかりの頃は特に寝る暇もなかった。
「あ! 美味しそうなお菓子が呼んでる気が⋯⋯ジルベルト司祭、とりあえずお茶にしよう」
ソファに向かい合って座りお茶を一口。
「6年かぁ、なんだかあっという間だった気がするよ」
ボロボロの姿で神託の儀に現れ、壁に張り付くようにして立っていたロクサーナは、人と目を合わせる事も真面に話すこともできなかった。
報告書の記載を信じ込み、事務的に説明をしていたジルベルト司祭が気付かなかった、ロクサーナの怯えと焦り。
(あの時、ロクサーナの姿に気付いて本当に良かった)
目を輝かせながらスコーンにジャムを乗せるロクサーナを見ていたジルベルト司祭が、あの時の言葉を思い出した。
『あっ、『お菓子』なら聞いたことがある。真面に仕事できる人が食べられる美味しいもの。甘いは⋯⋯分からない』
『硬くないパン? カビは?』
『どんな味? 匂いはなんとなく知ってるかも。お腹がぐうってなる匂い』
『着替えは嬉しいかも。1枚でいいからあったら⋯⋯破れた時に助かる』
『外で鳥が鳴きはじめた頃に横になっても、ちょびっと寝れる』
10歳の時にはすでに無詠唱で魔法を使っていたロクサーナだが、一般的な属性魔法ではなく精霊魔法に近いのではないかと教会の上層部は考えている。
修練をはじめた当初、魔法士達が使う詠唱を教えてもロクサーナは何ひとつ魔法が使えなかった。
『詠唱せずにその蝋燭3本に火をつけてくれる?』
『ポットに半分だけお湯を入れてくれるかな』
『落ち葉を一纏めにして袋に入れて欲しいんだ』
ちょうど良い大きさの火が3本纏めてつき、飲み頃のお湯が周りに溢れることもなく湯気をあげ、落ち葉は一瞬で消えて袋が一杯になった。
『精霊魔法の使える者の意思は尊重せよ』
教会に古くからある規則だが、ロクサーナには知らされてない。
過去に、精霊魔法を使える者を規則で縛り魔法士として活動させた事があったが、精霊の勘気にふれ大惨事を引き起こした記録が残っている。
その内容は記されていないが、教会が機能停止に陥ったと言う。
それ以降精霊魔法の使える者は生まれておらず、ごく稀に発見されていた精霊の姿も見当たらなくなった。
『期間限定を望むなら致し方あるまいが、それまでに気持ちが変わるよう説得を続けるように』
『恐らく無理だとは思いますが、最善を尽くします(教会の為でなく、ロクサーナがひとりで生きていけるようになるまで限定で)』
「このライナーコートはひんやりして気持ちいいね」
「(ギクッ)だ、だよね~。この季節にぴったりでしょ? 建物の中とかの中でも冷えすぎにならない程度だと思うんだよね~。でもでも、冷えすぎて使えないってなったら外しても良いんだけど、いつでも直せる」
「⋯⋯ロクサーナ~⋯⋯吐けぇ⋯⋯な~に~を~、しでかしたのか、吐きなさい!」
目を吊り上げたジルベルト司祭のオネエ言葉が出はじめた気配に、ロクサーナが目を泳がせた。
「あ~、それはぁ⋯⋯企業秘密かなぁ⋯⋯な、謎の特殊機能でぇ⋯⋯お、お礼の品なんだから⋯⋯ツッコミとかは禁止?」
「やっぱり何かしでかしたのね! 吐かないんならお仕置きに、頭なでなでと、お膝であ~んと、ベッドでトントントンするわよ!」
「子供じゃないし! ちょっとクロケルを見つけたか⋯⋯あ、いやぁ、なんだっけな~」
「ク、クロケルですってぇぇぇ!」
複数の属性持ちなら治癒以外の魔法も使えるに決まってる。例えば⋯⋯」
剣を片付け⋯⋯ テラスの向こうに向けた掌からいくつもの火球を飛ばし、大量の水で消火する。風を巻き起こすと樹々が揺れて、設置していた魔導具が地面に落ち『ガチャガチャ』と音を立てて壊れた。
「治癒魔法特化型の聖女もいるし、オールマイティの聖女もいるって事。お分かりいただけました?」
「⋯⋯凄い! やっぱりロクサーナを連れていけば上手くいきそう」
「聖王国で正式に認められた聖女であり、大聖女候補とされている私への度重なる『偽物』発言は、聖王国に対する侮辱でもあり、名誉毀損で慰謝料を追加いたします。
それに、ポンコツ王子は国王達と同罪ですから、逃げられませんよ?」
大広間の扉が勢いよく開かれて、見たことのない制服を纏った大量の男達が雪崩れ込んできた。
(漸くかよ~、仕事遅すぎ)
「国際司法裁判所から参りました、エドワード・ノッティス。国際法に則り、他種族の迫害を目的とした人為的スタンピードについて調査いたします!」
「「「他種族!?」」」
「聖王国聖女、ロクサーナ・バーラム様に心からの感謝を捧げ、これより以降を引き継がせていただきます」
聖王国から送られた数多くの証拠と共に乗り込んできた執政官達の前で、国王達が崩れ落ちた。
「もう、終いじゃ。あと少しで余の未来は輝かしいものになっておったのに⋯⋯クソオッ」
「皆さん、長々とお疲れさまでした。私はこれで失礼いたしますが、この後も頑張ってくださいませ」
パチンと指を鳴らしたロクサーナの姿が大広間から消え、呆然と立ち竦む者達の中に絶叫と咆哮が響き渡った。
「待って! ロクサーナ」
「置いてかないでぇぇ」
モガァァ⋯⋯グブッ⋯⋯バンバン⋯⋯フグッ⋯⋯
「ジル! すぐに迎えに行ってあげるからぁぁ」
若干1名、いまだに勘違いを続ける夢想家もいたが⋯⋯。
「1日早いけど、任務完了でいいかな?」
ロクサーナの転移先はジルベルト司祭の執務室。
執務机の上には相変わらず書類が山積みだが、テーブルにはロクサーナの好きなお菓子が並んでいる。
「もちろん! お疲れさまだったね」
いつもと同じ疲れた様子のジルベルト司祭が両手を広げて出迎えてくれた。
「また、クマが育ってる~」
実働部隊はロクサーナひとりで、後方支援はジルベルト司祭担当。
「複数の国が絡むここまで大掛かりな案件は滅多にないから、流石に疲れたかな。でも、合間合間にロクサーナが笑わせてくれたから、なんとか最後まで漕ぎつけられた。
それと⋯⋯ドレス、良く似合ってる」
「あ、ありがとう。えっと、えーっと⋯⋯ジルベルト司祭のお陰で手に入れた魔糸だしね。それに笑わせた覚えは⋯⋯ゴニョゴニョ⋯⋯そうだ! ジルベルト司祭に~、じゃじゃ~ん。はい、お礼の品?」
ロクサーナが自分のものより丹精込めて、何度も作り直した⋯⋯変異種のアラクネの魔糸で作ったフード付き、光の加減によってはうっすらと霞んだ紫にも見える白いローブ。前ボタンはそれぞれ違う機能付きになっている。
「上から隠蔽・結界・記録の魔導具。1回握るとスタートして、もう1回握るとストップだから忘れないでね」
ローブの内側には特殊加工した冷却・保冷機能付きの淡いブルーのライナーコート。もちろん、寒い季節用の暖房・保温機能付きのライナーコートも準備してあり、これは淡いグリーン。
攻撃無効・魔法無効以外にもあらゆる付与が付けられた、お値段天井知らずの一品。
「⋯⋯ロクサーナ? これは、その。お礼とか言うレベルを超えてる気がするんだが」
「契約期間終了だからね~。6年間わがまま聞いてもらったお礼!」
自分が特別扱いしてもらっている事は重々承知していた。教会の規則を無視して単独行動を望み、受けた仕事に対する個別報酬制で都度払い。
請け負う仕事の決定権はロクサーナにあり、報告の義務はあるが契約書に書かれていない部分は全て自由。
『怪我をせず帰ってくれば良いからね』
元々かなり社畜⋯⋯会畜気味のジルベルト司祭だが、仕事を何割か割り増ししていたのはロクサーナだろう。
各部署への根回しに枢機卿への直談判。聖王やあちこちからのゴリ押しへのストッパー。ロクサーナが仕事をはじめたばかりの頃は特に寝る暇もなかった。
「あ! 美味しそうなお菓子が呼んでる気が⋯⋯ジルベルト司祭、とりあえずお茶にしよう」
ソファに向かい合って座りお茶を一口。
「6年かぁ、なんだかあっという間だった気がするよ」
ボロボロの姿で神託の儀に現れ、壁に張り付くようにして立っていたロクサーナは、人と目を合わせる事も真面に話すこともできなかった。
報告書の記載を信じ込み、事務的に説明をしていたジルベルト司祭が気付かなかった、ロクサーナの怯えと焦り。
(あの時、ロクサーナの姿に気付いて本当に良かった)
目を輝かせながらスコーンにジャムを乗せるロクサーナを見ていたジルベルト司祭が、あの時の言葉を思い出した。
『あっ、『お菓子』なら聞いたことがある。真面に仕事できる人が食べられる美味しいもの。甘いは⋯⋯分からない』
『硬くないパン? カビは?』
『どんな味? 匂いはなんとなく知ってるかも。お腹がぐうってなる匂い』
『着替えは嬉しいかも。1枚でいいからあったら⋯⋯破れた時に助かる』
『外で鳥が鳴きはじめた頃に横になっても、ちょびっと寝れる』
10歳の時にはすでに無詠唱で魔法を使っていたロクサーナだが、一般的な属性魔法ではなく精霊魔法に近いのではないかと教会の上層部は考えている。
修練をはじめた当初、魔法士達が使う詠唱を教えてもロクサーナは何ひとつ魔法が使えなかった。
『詠唱せずにその蝋燭3本に火をつけてくれる?』
『ポットに半分だけお湯を入れてくれるかな』
『落ち葉を一纏めにして袋に入れて欲しいんだ』
ちょうど良い大きさの火が3本纏めてつき、飲み頃のお湯が周りに溢れることもなく湯気をあげ、落ち葉は一瞬で消えて袋が一杯になった。
『精霊魔法の使える者の意思は尊重せよ』
教会に古くからある規則だが、ロクサーナには知らされてない。
過去に、精霊魔法を使える者を規則で縛り魔法士として活動させた事があったが、精霊の勘気にふれ大惨事を引き起こした記録が残っている。
その内容は記されていないが、教会が機能停止に陥ったと言う。
それ以降精霊魔法の使える者は生まれておらず、ごく稀に発見されていた精霊の姿も見当たらなくなった。
『期間限定を望むなら致し方あるまいが、それまでに気持ちが変わるよう説得を続けるように』
『恐らく無理だとは思いますが、最善を尽くします(教会の為でなく、ロクサーナがひとりで生きていけるようになるまで限定で)』
「このライナーコートはひんやりして気持ちいいね」
「(ギクッ)だ、だよね~。この季節にぴったりでしょ? 建物の中とかの中でも冷えすぎにならない程度だと思うんだよね~。でもでも、冷えすぎて使えないってなったら外しても良いんだけど、いつでも直せる」
「⋯⋯ロクサーナ~⋯⋯吐けぇ⋯⋯な~に~を~、しでかしたのか、吐きなさい!」
目を吊り上げたジルベルト司祭のオネエ言葉が出はじめた気配に、ロクサーナが目を泳がせた。
「あ~、それはぁ⋯⋯企業秘密かなぁ⋯⋯な、謎の特殊機能でぇ⋯⋯お、お礼の品なんだから⋯⋯ツッコミとかは禁止?」
「やっぱり何かしでかしたのね! 吐かないんならお仕置きに、頭なでなでと、お膝であ~んと、ベッドでトントントンするわよ!」
「子供じゃないし! ちょっとクロケルを見つけたか⋯⋯あ、いやぁ、なんだっけな~」
「ク、クロケルですってぇぇぇ!」
32
お気に入りに追加
2,488
あなたにおすすめの小説
聖女であることを隠す公爵令嬢は国外で幸せになりたい
カレイ
恋愛
公爵令嬢オデットはある日、浮気というありもしない罪で国外追放を受けた。それは王太子妃として王族に嫁いだ姉が仕組んだことで。
聖女の力で虐待を受ける弟ルイスを護っていたオデットは、やっと巡ってきたチャンスだとばかりにルイスを連れ、その日のうちに国を出ることに。しかしそれも一筋縄ではいかず敵が塞がるばかり。
その度に助けてくれるのは、侍女のティアナと、何故か浮気相手と疑われた副騎士団長のサイアス。謎にスキルの高い二人と行動を共にしながら、オデットはルイスを救うため奮闘する。
※胸糞悪いシーンがいくつかあります。苦手な方はお気をつけください。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
「聖女はもう用済み」と言って私を追放した国は、今や崩壊寸前です。私が戻れば危機を救えるようですが、私はもう、二度と国には戻りません【完結】
小平ニコ
ファンタジー
聖女として、ずっと国の平和を守ってきたラスティーナ。だがある日、婚約者であるウルナイト王子に、「聖女とか、そういうのもういいんで、国から出てってもらえます?」と言われ、国を追放される。
これからは、ウルナイト王子が召喚術で呼び出した『魔獣』が国の守護をするので、ラスティーナはもう用済みとのことらしい。王も、重臣たちも、国民すらも、嘲りの笑みを浮かべるばかりで、誰もラスティーナを庇ってはくれなかった。
失意の中、ラスティーナは国を去り、隣国に移り住む。
無慈悲に追放されたことで、しばらくは人間不信気味だったラスティーナだが、優しい人たちと出会い、現在は、平凡ながらも幸せな日々を過ごしていた。
そんなある日のこと。
ラスティーナは新聞の記事で、自分を追放した国が崩壊寸前であることを知る。
『自分が戻れば国を救えるかもしれない』と思うラスティーナだったが、新聞に書いてあった『ある情報』を読んだことで、国を救いたいという気持ちは、一気に無くなってしまう。
そしてラスティーナは、決別の言葉を、ハッキリと口にするのだった……
私は王子の婚約者にはなりたくありません。
黒蜜きな粉
恋愛
公爵令嬢との婚約を破棄し、異世界からやってきた聖女と結ばれた王子。
愛を誓い合い仲睦まじく過ごす二人。しかし、そのままハッピーエンドとはならなかった。
いつからか二人はすれ違い、愛はすっかり冷めてしまった。
そんな中、主人公のメリッサは留学先の学校の長期休暇で帰国。
父と共に招かれた夜会に顔を出すと、そこでなぜか王子に見染められてしまった。
しかも、公衆の面前で王子にキスをされ逃げられない状況になってしまう。
なんとしてもメリッサを新たな婚約者にしたい王子。
さっさと留学先に戻りたいメリッサ。
そこへ聖女があらわれて――
婚約破棄のその後に起きる物語
婚約破棄されたので、聖女になりました。けど、こんな国の為には働けません。自分の王国を建設します。
ぽっちゃりおっさん
恋愛
公爵であるアルフォンス家一人息子ボクリアと婚約していた貴族の娘サラ。
しかし公爵から一方的に婚約破棄を告げられる。
屈辱の日々を送っていたサラは、15歳の洗礼を受ける日に【聖女】としての啓示を受けた。
【聖女】としてのスタートを切るが、幸運を祈る相手が、あの憎っくきアルフォンス家であった。
差別主義者のアルフォンス家の為には、祈る気にはなれず、サラは国を飛び出してしまう。
そこでサラが取った決断は?
妹が真の聖女だったので、偽りの聖女である私は追放されました。でも、聖女の役目はものすごく退屈だったので、最高に嬉しいです【完結】
小平ニコ
ファンタジー
「お姉様、よくも私から夢を奪ってくれたわね。絶対に許さない」
私の妹――シャノーラはそう言うと、計略を巡らし、私から聖女の座を奪った。……でも、私は最高に良い気分だった。だって私、もともと聖女なんかになりたくなかったから。
退職金を貰い、大喜びで国を出た私は、『真の聖女』として国を守る立場になったシャノーラのことを思った。……あの子、聖女になって、一日の休みもなく国を守るのがどれだけ大変なことか、ちゃんと分かってるのかしら?
案の定、シャノーラはよく理解していなかった。
聖女として役目を果たしていくのが、とてつもなく困難な道であることを……
妾の子と蔑まれていた公爵令嬢は、聖女の才能を持つ存在でした。今更態度を改められても、許すことはできません。
木山楽斗
恋愛
私の名前は、ナルネア・クーテイン。エルビネア王国に暮らす公爵令嬢である。
といっても、私を公爵令嬢といっていいのかどうかはわからない。なぜなら、私は現当主と浮気相手との間にできた子供であるからだ。
公爵家の人々は、私のことを妾の子と言って罵倒してくる。その辛い言葉にも、いつしかなれるようになっていた。
屋敷の屋根裏部屋に閉じ込められながら、私は窮屈な生活を続けていた。このまま、公爵家の人々に蔑まれながら生きていくしかないと諦めていたのだ。
ある日、家に第三王子であるフリムド様が訪ねて来た。
そこで起こった出来事をきっかけに、私は自身に聖女の才能があることを知るのだった。
その才能を見込まれて、フリムド様は私を気にかけるようになっていた。私が、聖女になることを期待してくれるようになったのである。
そんな私に対して、公爵家の人々は態度を少し変えていた。
どうやら、私が聖女の才能があるから、媚を売ってきているようだ。
しかし、今更そんなことをされてもいい気分にはならない。今までの罵倒を許すことなどできないのである。
※下記の関連作品を読むと、より楽しめると思います。
【4話完結】聖女に陥れられ婚約破棄・国外追放となりましたので出て行きます~そして私はほくそ笑む
リオール
恋愛
言いがかりともとれる事で王太子から婚約破棄・国外追放を言い渡された公爵令嬢。
悔しさを胸に立ち去ろうとした令嬢に聖女が言葉をかけるのだった。
そのとんでもない発言に、ショックを受ける公爵令嬢。
果たして最後にほくそ笑むのは誰なのか──
※全4話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる