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64.ポンコツが育った国はやっぱりポンコツ
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(で、調査しました~。その結果⋯⋯)
国王の私室では、堂々と机の上に投げ出されたままの契約書が見つかり、宰相や各大臣の執務室や自宅からも山のような不正の証拠が見つかった。
危機管理能力のない彼らの悪事の証拠を見つけるのは簡単だったが、何しろ人数が多すぎて時間がかかる。
王家以外に国を牛耳っている高位貴族のほとんどが、何かしらの不正に手を貸し私腹を肥やしていた。その手先として動いている事務官や、下位の貴族・官僚を入れると目眩がしそうで⋯⋯ジルベルト司祭に丸投げした。
『小物は無理! 魔の森にいる魔物達より発生率が高いもん! 犯罪者がモンスターハウスの魔物みたいになってる。この国ってバカなの!? 今までどうやって生きてきたの!?
調べるより、丸ごと爆破しちゃう方が早そうだよ?』
ブチ切れたロクサーナはいつもの如く森に入って、大型の魔物達を追いかけ回した。
もちろん、騎士団長も。彼は魔法士が余計な事⋯⋯スタンピードの原因追及とか海獣討伐をしないように見張るのが担当で、帝国兵と打ち合わせをする為にやりとりしていた手紙が、コーヒーのシミ付きで発見された。
『こう言うのは口頭で指示するとか、書類は燃やせって言うとかしなきゃダメだよね』
ロクサーナはぶつぶつと呟きながら、書類をせっせとコピー。
報酬の一部として武器や防具を貰い受けた、団長のサイン入り『受領書』は財務大臣の執務室で発見した。
(こう言うのって『機密情報』に入ると思うんだよね。だから、金庫にしまっとく方が安全だよ? じゃないと、こうやってコピーされて原本持ち出されちゃうんだからね~。魔導具も優秀になってるんだから、気を許しちゃダメなんだよ)
【ひと抱もあるコピーの魔導具を持ち歩きながら、潜入できるのはロクサーナくらいだよ】
収納の魔導具は魔導具士の夢だが、当分夢のままで終わりそうなのは、時の神カイちゃん⋯⋯カイロスが『人間に空間魔法など使わせん』とそっぽを向いているから。
(えーっと、私⋯⋯人間だよ?⋯⋯異空間収納使ってるし?)
「ご希望であればいくつかの証拠をお見せしても構いませんが、あまり無駄な時間をかけるのもめんど⋯⋯無益だと思いますしね。
国際司法裁判所より執政官が来られるまで、自宅なり執務室なりで心安らかにお待ちいただきたいと思います」
「国際司法裁判所?⋯⋯聖王国に依頼料を払えば済む話を、大袈裟にしおってからに! 聖王国は政治不介入だと偉そうに宣う中立国のくせに、巫山戯るなぁぁ! 我が国を愚弄した此奴をひっ捕えてしまえぇぇ」
ここまできてまだ諦めない国王が叫び声を上げたが、目を逸らしたり首を横に振る衛兵が大半を占めた。
「聖女に手を出すとか無理⋯⋯」
「スタンピードが人為的だって知ってたんだろ?」
「俺んちの親戚、スタンピードで殺られたんだ」
ほとんどの衛兵が剣を床に置く中、顔を引き攣らせた一部の衛兵がロクサーナを取り囲んだ。
「他の者は何をしておる! 奴は治癒魔法使いじゃ、全員でかかれ! この場で斬り殺してしまえぇぇ」
口元を震わせた衛兵が剣を構え⋯⋯。
「聖女様、お許しを!」
前から斬りかかってきた衛兵の膝に蹴りを入れながら剣を取り出し、横から来た衛兵の剣を叩き折った。
「剣が! ど、どこから出てきた!?」
「くそぉ!」
叫び声を上げた衛兵達が一斉に斬りかかってくるのを、躱しながらひとりずつ潰していった。
(ドワーフ作の剣は対人戦でもいけるじゃん。やっぱ凄いわあ)
最後の衛兵が床に倒れたのを確認し《バインド》で拘束。
「聖女が闇魔法を⋯⋯」
どこかから聞こえてきた呟きにポンコツ王子が反応した。
「今のって闇魔法なのか? 闇魔法は悪魔の魔法だろ? なら⋯⋯だったらコイツは聖女じゃない、聖女を語る偽物だ! 捕まえて牢にぶち込んでしまえ。
本物は⋯⋯えーっと、本物の聖女は誰だ?」
(闇魔法は悪魔の魔法じゃなーい)
モゴッ⋯⋯ムグッ⋯⋯ドタンガンガン⋯⋯ムウッ⋯⋯
芋虫状態で放置されていたレベッカが、ここぞとばかりに床を蹴ってアピール。
「さっきセシルが治癒できるって言ってたよな。なら、セシルを婚約者にしてやる! あっ、サブリナは? お前は何の魔法が使えるんだ!?」
モゴッ⋯⋯ウグッ⋯⋯ドタンガンガン⋯⋯
突然注目を浴びたセシルが青い顔でブルブルと顔を横に振り、声をかけられたサブリナは逃げ場を探して後退りしていた。
「セシル、俺の婚約者にしてやる!」
「い、嫌です! 絶対に嫌ぁぁ、ロクサーナ助けてぇぇ」
「き、貴様ぁぁ! 無礼打ちにしてやる、ビクトール! コイツを殺ってしまえぇぇ」
(ほんっとバカバカしい。今から逮捕されるのに婚約者がどうのとか⋯⋯流石、ポンコツ王子だねえ。脳内に花が咲き乱れてる)
困惑気味に頭を掻く脳筋がエセ眼鏡をチラッと横目で見て、首を傾げた。
「いや~、流石にそれは」
今がチャンスとばかりに、ドレスの裾をからげて雛壇から飛び降りたセシル。その後を追いかけてサブリナも走り出し⋯⋯2人して小さなロクサーナの後ろで中腰になった。
「あ、あの。わたくし達を助けてくれるわよね。だってほら、お友達ですもの。聖王国の頃から仲良くしてましたでしょ?」
「こんな国なんて、もう我慢できないよお。ロクサーナは私達を迎えにきたんだよね⋯⋯荷物なんかどうでもいいからさ、早く帰ろう! 馬車の準備はしてるよね」
「そうよ、ロクサーナはわたくし達の世話係だって言ってましたものね。今までの事は許して差し上げるから、帰りの手配をお願い。すぐに出発しましょう」
ポンコツ王子に狙われ脳筋に斬られていたかもしれないと怯えるセシルと、次は自分の番かもと震え上がったサブリナは、両側からロクサーナの腕を引っ張って大広間の出入り口へ向かおうとしている。
「⋯⋯ねえ、さっさと行くわよ」
「もう、こんな方達に関わるのはよした方がいいわ」
モゴッ⋯⋯ムグッ⋯⋯ドタンガンガン⋯⋯ムウッ⋯⋯
もうひとり、一緒に帰るつもりらしく暴れている。
「えーっと、帰るけど⋯⋯サブリナやセシルとは別行動だよ? あ、レベッカもね」
「「⋯⋯はあ? なんで!?」」
ムグッ⋯⋯ドタンガンガン⋯⋯ムムッ⋯⋯
思わず立ち上がったサブリナ達が、ロクサーナに覆い被さるようにして距離を詰めてきた。
「私達を守るのはロクサーナの仕事でしょ!?」
「わたくし達だけでは帰りの手配ができないもの! 馬車とか宿とか⋯⋯ロクサーナがやってくれなければ困るのよ」
「う~ん、頑張ってね! 何事も経験だし? 世話役もリーダーもとっくの昔に終了してるしね」
2ヶ月の学園生活では、かなり早い段階からノートを写させろと言いはじめ、学科で出た宿題と専攻で出る課題を押し付けてきた2人は、珍喜劇のはじまりでも雛壇の上からポンコツ達の味方をしていた。
「お世話すると思う?」
「「ごめんなさい! もうしないから、助けて~」」
「む・り! 自分の事は自分でねっ」
「偽聖女、セシル達を返せ! スタンピードの責任は父上達にあるが、俺には関係ないから、聖女を連れて帝国に行くんだからな」
(この期に及んでセシル達に固執するのはそう言うことかあ)
国王の私室では、堂々と机の上に投げ出されたままの契約書が見つかり、宰相や各大臣の執務室や自宅からも山のような不正の証拠が見つかった。
危機管理能力のない彼らの悪事の証拠を見つけるのは簡単だったが、何しろ人数が多すぎて時間がかかる。
王家以外に国を牛耳っている高位貴族のほとんどが、何かしらの不正に手を貸し私腹を肥やしていた。その手先として動いている事務官や、下位の貴族・官僚を入れると目眩がしそうで⋯⋯ジルベルト司祭に丸投げした。
『小物は無理! 魔の森にいる魔物達より発生率が高いもん! 犯罪者がモンスターハウスの魔物みたいになってる。この国ってバカなの!? 今までどうやって生きてきたの!?
調べるより、丸ごと爆破しちゃう方が早そうだよ?』
ブチ切れたロクサーナはいつもの如く森に入って、大型の魔物達を追いかけ回した。
もちろん、騎士団長も。彼は魔法士が余計な事⋯⋯スタンピードの原因追及とか海獣討伐をしないように見張るのが担当で、帝国兵と打ち合わせをする為にやりとりしていた手紙が、コーヒーのシミ付きで発見された。
『こう言うのは口頭で指示するとか、書類は燃やせって言うとかしなきゃダメだよね』
ロクサーナはぶつぶつと呟きながら、書類をせっせとコピー。
報酬の一部として武器や防具を貰い受けた、団長のサイン入り『受領書』は財務大臣の執務室で発見した。
(こう言うのって『機密情報』に入ると思うんだよね。だから、金庫にしまっとく方が安全だよ? じゃないと、こうやってコピーされて原本持ち出されちゃうんだからね~。魔導具も優秀になってるんだから、気を許しちゃダメなんだよ)
【ひと抱もあるコピーの魔導具を持ち歩きながら、潜入できるのはロクサーナくらいだよ】
収納の魔導具は魔導具士の夢だが、当分夢のままで終わりそうなのは、時の神カイちゃん⋯⋯カイロスが『人間に空間魔法など使わせん』とそっぽを向いているから。
(えーっと、私⋯⋯人間だよ?⋯⋯異空間収納使ってるし?)
「ご希望であればいくつかの証拠をお見せしても構いませんが、あまり無駄な時間をかけるのもめんど⋯⋯無益だと思いますしね。
国際司法裁判所より執政官が来られるまで、自宅なり執務室なりで心安らかにお待ちいただきたいと思います」
「国際司法裁判所?⋯⋯聖王国に依頼料を払えば済む話を、大袈裟にしおってからに! 聖王国は政治不介入だと偉そうに宣う中立国のくせに、巫山戯るなぁぁ! 我が国を愚弄した此奴をひっ捕えてしまえぇぇ」
ここまできてまだ諦めない国王が叫び声を上げたが、目を逸らしたり首を横に振る衛兵が大半を占めた。
「聖女に手を出すとか無理⋯⋯」
「スタンピードが人為的だって知ってたんだろ?」
「俺んちの親戚、スタンピードで殺られたんだ」
ほとんどの衛兵が剣を床に置く中、顔を引き攣らせた一部の衛兵がロクサーナを取り囲んだ。
「他の者は何をしておる! 奴は治癒魔法使いじゃ、全員でかかれ! この場で斬り殺してしまえぇぇ」
口元を震わせた衛兵が剣を構え⋯⋯。
「聖女様、お許しを!」
前から斬りかかってきた衛兵の膝に蹴りを入れながら剣を取り出し、横から来た衛兵の剣を叩き折った。
「剣が! ど、どこから出てきた!?」
「くそぉ!」
叫び声を上げた衛兵達が一斉に斬りかかってくるのを、躱しながらひとりずつ潰していった。
(ドワーフ作の剣は対人戦でもいけるじゃん。やっぱ凄いわあ)
最後の衛兵が床に倒れたのを確認し《バインド》で拘束。
「聖女が闇魔法を⋯⋯」
どこかから聞こえてきた呟きにポンコツ王子が反応した。
「今のって闇魔法なのか? 闇魔法は悪魔の魔法だろ? なら⋯⋯だったらコイツは聖女じゃない、聖女を語る偽物だ! 捕まえて牢にぶち込んでしまえ。
本物は⋯⋯えーっと、本物の聖女は誰だ?」
(闇魔法は悪魔の魔法じゃなーい)
モゴッ⋯⋯ムグッ⋯⋯ドタンガンガン⋯⋯ムウッ⋯⋯
芋虫状態で放置されていたレベッカが、ここぞとばかりに床を蹴ってアピール。
「さっきセシルが治癒できるって言ってたよな。なら、セシルを婚約者にしてやる! あっ、サブリナは? お前は何の魔法が使えるんだ!?」
モゴッ⋯⋯ウグッ⋯⋯ドタンガンガン⋯⋯
突然注目を浴びたセシルが青い顔でブルブルと顔を横に振り、声をかけられたサブリナは逃げ場を探して後退りしていた。
「セシル、俺の婚約者にしてやる!」
「い、嫌です! 絶対に嫌ぁぁ、ロクサーナ助けてぇぇ」
「き、貴様ぁぁ! 無礼打ちにしてやる、ビクトール! コイツを殺ってしまえぇぇ」
(ほんっとバカバカしい。今から逮捕されるのに婚約者がどうのとか⋯⋯流石、ポンコツ王子だねえ。脳内に花が咲き乱れてる)
困惑気味に頭を掻く脳筋がエセ眼鏡をチラッと横目で見て、首を傾げた。
「いや~、流石にそれは」
今がチャンスとばかりに、ドレスの裾をからげて雛壇から飛び降りたセシル。その後を追いかけてサブリナも走り出し⋯⋯2人して小さなロクサーナの後ろで中腰になった。
「あ、あの。わたくし達を助けてくれるわよね。だってほら、お友達ですもの。聖王国の頃から仲良くしてましたでしょ?」
「こんな国なんて、もう我慢できないよお。ロクサーナは私達を迎えにきたんだよね⋯⋯荷物なんかどうでもいいからさ、早く帰ろう! 馬車の準備はしてるよね」
「そうよ、ロクサーナはわたくし達の世話係だって言ってましたものね。今までの事は許して差し上げるから、帰りの手配をお願い。すぐに出発しましょう」
ポンコツ王子に狙われ脳筋に斬られていたかもしれないと怯えるセシルと、次は自分の番かもと震え上がったサブリナは、両側からロクサーナの腕を引っ張って大広間の出入り口へ向かおうとしている。
「⋯⋯ねえ、さっさと行くわよ」
「もう、こんな方達に関わるのはよした方がいいわ」
モゴッ⋯⋯ムグッ⋯⋯ドタンガンガン⋯⋯ムウッ⋯⋯
もうひとり、一緒に帰るつもりらしく暴れている。
「えーっと、帰るけど⋯⋯サブリナやセシルとは別行動だよ? あ、レベッカもね」
「「⋯⋯はあ? なんで!?」」
ムグッ⋯⋯ドタンガンガン⋯⋯ムムッ⋯⋯
思わず立ち上がったサブリナ達が、ロクサーナに覆い被さるようにして距離を詰めてきた。
「私達を守るのはロクサーナの仕事でしょ!?」
「わたくし達だけでは帰りの手配ができないもの! 馬車とか宿とか⋯⋯ロクサーナがやってくれなければ困るのよ」
「う~ん、頑張ってね! 何事も経験だし? 世話役もリーダーもとっくの昔に終了してるしね」
2ヶ月の学園生活では、かなり早い段階からノートを写させろと言いはじめ、学科で出た宿題と専攻で出る課題を押し付けてきた2人は、珍喜劇のはじまりでも雛壇の上からポンコツ達の味方をしていた。
「お世話すると思う?」
「「ごめんなさい! もうしないから、助けて~」」
「む・り! 自分の事は自分でねっ」
「偽聖女、セシル達を返せ! スタンピードの責任は父上達にあるが、俺には関係ないから、聖女を連れて帝国に行くんだからな」
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