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11.処罰覚悟か!? 早撃ちレベッカの勇気にびっくり

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「はい、私はレベッカ・マックバーンと申します。聖王国でも由緒あるマックバーン侯爵家の長女で⋯⋯聖王国の教会に所属するです。テヘッ。
えーっと、今はまだお友達も少なくて、寮でもひとりぼっちな事が多くて⋯⋯アーノルド王子殿下と側近の方々に助けてもらってます。あっ、あとイライザ・ネイトリッジ様も私の事を可愛がってくれてて⋯⋯。
クラスの方にもいっぱい声をかけてもらえたら嬉しいです。うふっ」

「聖女だって! よく分からんけど、凄いじゃん」

「可愛い~」

「もう、最高! 守ってあげたい」

 満面の笑顔で教室を見回していたレベッカが、ロクサーナ達の方を見た時に『あっ!』と小さな声を上げて俯いた。

「大丈夫だよ、この学園で虐めや仲間外れなど絶対に許さないから」

 そうだそうだと言う生徒達の声の中に『はい!』と言うレベッカの元気な声が聞こえてきた。

 ピシリと顳顬に青筋を立てたセシルとサブリナが詠唱しながら腰を浮かせ、同時攻撃を仕掛けようとしてロクサーナから張り手をくらった。



 何度も言うが、レベッカの職種は『。聖王国の聖女だと名乗ったレベッカは、聖王国に足を踏み入れた時点で犯罪者となる。

「ごめん、レベッカが嘘だらけで⋯⋯。しかし、やっちゃったね~、聖女だって言い切ったよ~。聖王国に帰ったらヤバいじゃん、処罰もんだよ」

「ほんとね、帰らなきゃ問題ないって思ってるのかしら」

「はぁ、リーダー辞めていいかな」



 部屋の改造⋯⋯片付けも終わって昨日は完全フリーだったロクサーナは、ストレス解消の為にミュウ達を連れてちょっと森を散策。トロールを潰したりミノタウロスを追いかけて遊んできた。

 サブリナとセシルは部屋で休憩していたと言っていたが、レベッカは忙しかったらしい。

(そう言えば謁見の間でポンコツ王子が『側近との顔合わせ』がどうのとか言ってたな。レベッカは顔合わせして、速攻で落としたんだ~。すっごい早業。早撃ちレベッカ爆進中?)

【レベッカもどき達とお茶してから王宮に行って、そのままお泊まりしてたよ。昨日の夜帰って来て、『制服が~』って大騒ぎ】

(レベッカもどきって⋯⋯イライザ様の事? メイドさん、可哀想⋯⋯きっと徹夜だね)



「後の3人も自己紹介したまえ」

「⋯⋯は、はい、セルバン伯爵家の次女サブリナ・セルバンと申します。数日前にこの国に来たばかりで、まだ緊張が解けなくて⋯⋯宜しくお願いします」

「女神降臨! 超絶美人じゃん」

「あの子は虐めには加担してなさそう」

「優しそうね、声かけてみる?」


「セシル・ファーラム。ファーラム子爵家の長女で、うちはトーリス商会をやってます。剣術が好きなのでよろしくね」

「うわぁ、なんか色っぽいのに天使みたい」

「トーリス商会って聞いたことある」

「なら、金持ち?」


「ロクサーナ・バーラム。バーラム男爵家長女です。よろしくお願いします」

「なんかちっこい、ほんとに同い年?」

「銀髪と紫眼って珍しいな」

「領地の妹を思い出したわ、まだ9歳だけど」



 その後、延々と続いた自己紹介で判明したのは、Aクラスは男子7人女子9人で計16人。クラスの全員が高位貴族の子息令嬢で、王家と血の繋がりがある生徒は4人もいる。

 ビクトール・ウルブズは伯爵家次男で側近候補、父は文部大臣。家は魔導具の開発や魔法衰退の原因研究を手掛けているが、汗と脳筋臭がぷんぷんするガチむち。

(父ちゃんは騎士団団長とか言うかと思ってた。ちょっと意外)

 トーマス・マクガバンは筆頭公爵家三男で側近候補、父は財務大臣。神経質な甲高い声のインテリ眼鏡で、妄想癖のあるエセ策略家っぽい話し方がキモい。プライドは高そうだが、おつむは弱そう。

(髪をかきあげてからのドヤ顔とか⋯⋯残念すぎる。ポーズつけるのが好きみたいだから、レベッカ劇場にぴったりだな)

 アーノルド王子とビクトールが『剣術が好きだ』と言ったのは、セシル向けのアピールっぽいので、可愛い子がタイプかも。

(レベッカ頑張れ! ポンコツはセシルも狙ってるぞ)



「明日は学力と実技試験を行うので、必ず出席するように。遅刻欠席はペナルティがあるからな」

 担任が教室を出ると途端に騒がしくなる。

「歴史が苦手なの」

「僕はラテン語が無理、活用がありすぎて混乱するんだ」

「俺は剣術、専攻を間違えたよ」

 1年生の授業は実技以外は全員同じ授業を受ける。実技は剣術・錬金術及び魔導具・刺繍及び服飾・領地経営及びマナーという摩訶不思議⋯⋯バラエティ豊かなラインナップ。

 ロクサーナは錬金術及び魔導具、サブリナは刺繍及び服飾、セシルはもちろん剣術。

 伯爵家令嬢としてマナーの完璧なサブリナは刺繍の腕が職人肌で、攻撃魔法が弱いと気にしているセシルは両手剣と弓の使い手。

 ロクサーナは薬師ギルドと錬金術師ギルドに偽名で登録して稼いでいるし、魔導具はいくつかの特許を持っている。ジルベルト司祭に無理やり持たせた通信鏡もその一つ。

 レベッカは領地経営及びマナーを専攻すると自慢げに話していたので、もしかしたら隠れた実力があるのかもしれない。

(て言うか、一緒の専攻じゃなければなんでもいいんだよね)



 クラスの中で完全にアウェーになったロクサーナ達3人は、寮に帰ることに決めレベッカに声をかけに行くことにしたが、アーノルド王子達に囲まれて座るレベッカの周りは、クラスメイトが鈴なりでロクサーナ達は近付けない。

「申し訳ないんだけど通してもらえますか?」

「聖女様を虐めに行くつもり!?」

「⋯⋯えーっと、(聖女じゃなくて)レベッカに話があるの」

「私達、寮に帰ろうと思いますの。だから、レベッカに声をかけようかと思って」

「えー、今更? 朝は仲間はずれにしたくせに」

 男子生徒の一人がロクサーナをつき飛ばすと、レベッカが立ち上がって声を張り上げた。

「あ、あの⋯⋯皆さん! 私の事を心配してくれて、ありがとう。ロクサーナさん、私はその⋯⋯ご、ごめんなさい。どうか怒らないで」

 何故か謝り出すレベッカはまだ公演中のよう。

「レベッカは私達と昼食の約束をしてる。レベッカに謝って『二度と虐めない』って約束するなら、参加させてあげてもいいけど?」

「虐めた覚えはないので、謝罪は出来かねます」

「殿下、3人も追加なんて席が足りませんし、彼女達がいたら折角の入学祝いの食事が不味くなりそうです」

「いやいや、彼女達も一応はレベッカと同じ留学生だしね、話し合えば分かり合えると思うんだ。
セシルって言ったかな、君は剣術を専攻してるんだろ? 色々教えてあげるから、私達と一緒に行かない?」

「寮でやりたいことがあるんで⋯⋯遠慮します」

「明日の勉強なんて今更やっても身につかないけど、好きにしたらいいさ。まだこれからだからね」

「殿下の誘いを断るなんて図々しい。話に聞いていた通りで、そこのチビに何か言われてるんだね」

(お~、悪の親玉になっちゃった。魔王降臨! はっはっは)

【いつものパターンだね! カチンコチンに凍らしちゃう?】

【ピッピがぁ、消し炭にしてあげるよ~】

【僕ならちょいちょいっと、魔物の森まで吹き飛ばしてやる!】

(わぁ、ウルウルだ! 元気だったの?)

 久しぶりにやって来た3匹目の家族ウルウルの声がした。

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