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26.家庭教師の目線
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「それはまた、随分と大胆な方法を取りましたね」
ベーカー侯爵夫人がころころと笑っている。
「他に方法が思いつかなくて。ラッセル伯爵がノルマンディーレースを諦めてくれて助かりました」
「ラッセル伯爵は今、多額の負債を抱えて破産寸前なの。無計画に事業を拡大したツケが回って来てるみたい。
元々、怪しい賭場に出入りしてるとかで評判も良くなかったし」
段々ソフィーの顔色が悪くなっていく。
「アメリアのノルマンディーレースは、多額の負債を解消できるほどの価値があるんですの?」
「アメリアがレースを作りながら後継者を育てたら、余裕じゃないかしら」
「大変! この間頂いたテーブルクロス、アメリアにお返しするわ。
カサンドラの様子がおかしかったのも納得だわ」
「見てみたいわ。アメリアの新作なんて、それだけでお客様で一杯になるわね」
翌日の午後、キャンベル公爵夫人が子爵邸に先触れもなくソフィーを伴いやって来た。
真っ青な顔をしたカサンドラは開口一番、
「アメリアごめんなさい、私誤解してたの。それだけじゃないわ、ヤキモチも焼いていたの」
ソフィーからの手紙でノルマンディーレースのことを知ったカサンドラは、羨ましさでアメリアに紹介状を書くのを嫌がった。
アメリアはノルマンディーレースの人気や価格が高騰していることを知らずソフィーにプレゼントしたのだが、アメリアが自分には何も話してくれなかった事が悔しかったらしい。
「本当にごめんなさいね、もう必要ないのかもしれないけど紹介状がいる時はいつでも言ってね」
「ありがとうございます。何か至らないところがあったのだと反省しておりましたの」
「とんでもないわ。あなたほどの家庭教師は二度と見つからないと思うの。
あの時だって姉のお願いじゃなかったら絶対断っていたもの。
あの三人を王都に引き摺り出せるなんて流石はアメリアね」
引き摺り出された三人は暖炉の前でヘンリーとチェスをしている。
ソフィーはそれを生暖かい目で見ながら、
「あの子達、アメリア争奪戦に来てるって覚えてるのかしら。
いつもあんな風なの?」
「そうですね、大体あんな感じです。お父様がお出かけの時は三人で遊んでおられます」
「「はぁ」」
ソフィーとカサンドラが仲良く溜息をついた。
「イライジャはともかく、まさかアレクシスがあんなに及び腰になるとは思わなかったわ。
散々女遊びしていた癖に」
「ポンコツぶりはオリバーお兄様譲りかしら?」
「そうみたいね」
「皆さんパーティーの疲れを癒しておられるみたいです。
お父様もとても楽しそうですから、ちょうど良いのではないかと」
ヘンリーは長年資金繰りに走り回り、家族と時間を過ごすことができなかった。
息子との時間を作れないまま二人の間には距離ができてしまっているので、スコット公爵家の三人とチェスやフェンシングを楽しむのが殊更に楽しいようだ。
(この様子なら次の休みにフレディが帰ってきたら上手くいくかも)
「キャンベル公爵夫人、宜しかったらレースご覧になりますか?
手元にはあまり残っていないのですが、作りかけている物もありますの」
アメリアの作品に大興奮のソフィーとカサンドラは、ポンコツ三人組のことをすっかり忘れてしまっていた。
ベーカー侯爵夫人がころころと笑っている。
「他に方法が思いつかなくて。ラッセル伯爵がノルマンディーレースを諦めてくれて助かりました」
「ラッセル伯爵は今、多額の負債を抱えて破産寸前なの。無計画に事業を拡大したツケが回って来てるみたい。
元々、怪しい賭場に出入りしてるとかで評判も良くなかったし」
段々ソフィーの顔色が悪くなっていく。
「アメリアのノルマンディーレースは、多額の負債を解消できるほどの価値があるんですの?」
「アメリアがレースを作りながら後継者を育てたら、余裕じゃないかしら」
「大変! この間頂いたテーブルクロス、アメリアにお返しするわ。
カサンドラの様子がおかしかったのも納得だわ」
「見てみたいわ。アメリアの新作なんて、それだけでお客様で一杯になるわね」
翌日の午後、キャンベル公爵夫人が子爵邸に先触れもなくソフィーを伴いやって来た。
真っ青な顔をしたカサンドラは開口一番、
「アメリアごめんなさい、私誤解してたの。それだけじゃないわ、ヤキモチも焼いていたの」
ソフィーからの手紙でノルマンディーレースのことを知ったカサンドラは、羨ましさでアメリアに紹介状を書くのを嫌がった。
アメリアはノルマンディーレースの人気や価格が高騰していることを知らずソフィーにプレゼントしたのだが、アメリアが自分には何も話してくれなかった事が悔しかったらしい。
「本当にごめんなさいね、もう必要ないのかもしれないけど紹介状がいる時はいつでも言ってね」
「ありがとうございます。何か至らないところがあったのだと反省しておりましたの」
「とんでもないわ。あなたほどの家庭教師は二度と見つからないと思うの。
あの時だって姉のお願いじゃなかったら絶対断っていたもの。
あの三人を王都に引き摺り出せるなんて流石はアメリアね」
引き摺り出された三人は暖炉の前でヘンリーとチェスをしている。
ソフィーはそれを生暖かい目で見ながら、
「あの子達、アメリア争奪戦に来てるって覚えてるのかしら。
いつもあんな風なの?」
「そうですね、大体あんな感じです。お父様がお出かけの時は三人で遊んでおられます」
「「はぁ」」
ソフィーとカサンドラが仲良く溜息をついた。
「イライジャはともかく、まさかアレクシスがあんなに及び腰になるとは思わなかったわ。
散々女遊びしていた癖に」
「ポンコツぶりはオリバーお兄様譲りかしら?」
「そうみたいね」
「皆さんパーティーの疲れを癒しておられるみたいです。
お父様もとても楽しそうですから、ちょうど良いのではないかと」
ヘンリーは長年資金繰りに走り回り、家族と時間を過ごすことができなかった。
息子との時間を作れないまま二人の間には距離ができてしまっているので、スコット公爵家の三人とチェスやフェンシングを楽しむのが殊更に楽しいようだ。
(この様子なら次の休みにフレディが帰ってきたら上手くいくかも)
「キャンベル公爵夫人、宜しかったらレースご覧になりますか?
手元にはあまり残っていないのですが、作りかけている物もありますの」
アメリアの作品に大興奮のソフィーとカサンドラは、ポンコツ三人組のことをすっかり忘れてしまっていた。
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