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24.サロンにて

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 この季節、殆どの貴族は領地に戻っており王都には都市貴族と呼ばれる人達が残っているだけなので、大掛かりなパーティーは開かれない。

「この時期で助かった。突然何百人も来るようなパーティーに行けって言われたらって、想像しただけで足が震える」

「そしたら俺行かない」

「しかしアレクシスは凄いな、毎回あれだけ大量の女に囲まれてもびくともしてない」

「たらし」


 夜の冷たい空気に白い息を吐きながら、イライジャとジョシュアは逃げ出したテラスからサロンの中をこっそり覗いている。


 アレクシスはアメリアの腰に手を当てたまま、近くにいる女性の話に相槌を打ち

(あいつら逃げやがって、後で覚えてろよ)

と、物騒なことを考えていた。


 ソフィーとアメリアの予想通り、三兄弟がパーティーに現れた途端大勢の女性が群がった。

 自分を売り込む勇敢な女性と、娘や姪を売り込みたい夫人。仲人が趣味のおばさまなど、年齢も狙いも様々な女性達が三人を十重二十重に囲い込んだ。


 その合間に、多くの男性達もやって来た。彼らは将来の公爵に顔を繋ぎたいと思っていたり、おこぼれを狙っていたり。


 噂によると領地に戻った令嬢の何人かは、このバトルに参加する為に現在王都に向かっているらしい。


 意外にも最初に根を上げたのはイライジャだった。

「堪忍してくれ」

 ジョシュアはやばい状況になると、上手に気配を消しいつの間にか姿を消しているが、大男のイライジャはうまく逃げ出せず毎回最後まで令嬢達の相手をさせられていた。


「今日は助かった。ジョシュア、次も頼んだぞ」

「アメリア」(のとこ行かなくて良いの?)

「今行っても、途中で他の奴らに捕まって話どころじゃなくなる」


 ジョシュアが突然イライジャの腕を掴み、
「入り口」「にヤバそうなのがいる)

 その女はサロンの中を見回していたが、アメリアを見つけた途端物凄い形相で睨みつけていた。


「誰だあいつ。無事に辿り着けなかったら、ジョシュア頼んだぞ」


 戦地に赴く風情のイライジャと気配を殺したジョシュアがサロンに足を踏み入れると同時に、女がアメリアに向けて足早に歩き始めた。

「不味い、急げ」

 女はアレクシスを取り巻いている人達を押し除け、アメリアの前に立ち塞がる。


 ジョシュアは隣の部屋でお喋りしていた母親に緊急事態を知らせに走る。


「母上、アメリアが危ない!」


 ソファに座り談笑していたソフィー達が一斉に振り返りジョシュアを見つめた。


「きゃあ」

 サロンから悲鳴が聞こえて来た。


 令嬢達が悲鳴を上げる中、アメリアは何が起きたのか分からず呆然と立ち尽くしていたが、アレクシスがアメリアの前に立ち塞がりイライジャが振り上げられた女の手を掴んでいる。



「これはどうしたことですか!」

 サロンの隣室から出て来た、主催者であるベーカー侯爵夫人が大きな声を出した。


 アメリア達を取り囲んでいた女性達が後ろに下がり、ベーカー侯爵夫人の前に道が出来た。


 ソフィーは急足でアメリアの元にやって来て声をかけた。

「アメリア、大丈夫?」

「はい、お陰様で助かりました。何があったのか分からないのですが・・」

と言いながらイライジャに腕を掴まれてもがいている女性を見つめた。



「何よ! 家庭教師の分際でよくこんな所に顔を出せたわね。この泥棒猫」

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