【完結】婚約者候補の筈と言われても、ただの家庭教師ですから。追いかけ回さないで

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5.アレクシス参戦

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 アメリアは全裸のアレクシスに動じることなく見事なカーテシーで、

「丁寧なご挨拶痛み入ります。ランドルフ子爵が長女、アメリアと申します」


 アメリアの態度にアレクシスが挙動不審になった。

「イライジャ、彼女全然動じてないんだけど? もしかして見慣れてる?」

 イライジャはアメリアの態度にびっくりして声も出せずに固まっている。


「先日までキャンベル公爵家で双子の男の子の家庭教師をしておりました。

二人とも私を揶揄うために、しょっちゅうズボンを脱いで走り回っておられましたから、見慣れていると言われればその通りかと」

「双子の男の子?」

「はい、6歳の可愛い男の子でした」

「ぷっ、ぶはっはっ。アレクシス、あんたのそれ6歳並みだって」

「煩い! 散々楽しんどいて、何が6歳だ」


 アメリアはにっこり笑い、
「態度で言うならば、正に同レベルかと思われます」


 アレクシスは顔を赤らめてシーツを腰に巻きつけた。



 不機嫌な顔のイライジャとだらしなく着崩したアレクシスが並んで座り、その前にアメリアが背筋を伸ばして腰掛けている。


「もう一人のジョシュアには会えん。これで納得して帰るんだな」


「困りましたね。ソフィー様とのお約束では暫く滞在して親交を深めるように言われておりますの」

「はっ、女と親交を深める? あり得んな」

「6歳児でよければ、俺が相手してやっても良いけど? 俺、守備範囲は広いから」

 アレクシスは先程のアメリアの台詞に甚く傷ついているようで、それとなく嫌味を言ってきた。

「人には得意不得意がございますでしょう? 私に出来ますのは精々他愛のないお喋りくらいかと」

「だから女はつまらんのだ。
キケロやカエサルも分からんような奴と何を話すって言うんだ?


「賽は投げられた。ガイウス・ユリウス・カエサル。
北イタリアのルビコン川を通過する際の有名な言葉ですね。

マルクス・トゥッリウス・キケロの著書は『義務について』 父の部屋からこっそり持ち出したのを覚えていますわ」


「すげぇ、俺全然わかんないや」

「アレクシス様はラテン語は苦手でいらっしゃいますの?」

「俺の得意な言語はピロートークかな?」

 ニヤニヤと笑っているアレクシスに、
「ピロー、枕? ああ、確かに得意そうでいらっしゃいますわ。
お二方は得意分野の棲み分けをなされているのですね」


「イライジャ、俺なんか調子狂うんだけど」

「俺に振るな。こんな女見たことも聞いたこともない」


「それでは暫く滞在させて頂いて宜しいでしょうか?
無理矢理居座るようで心苦しいのですが、ソフィー様とのお約束もございますし」

「ふん、殊勝な言い方をしてるが大した玉だな。母上の新しい作戦は変わってるとしか言いようがないな」

「俺のプライベートに口を挟まないなら別に良いけど?」

「口は・・出してしまうかもしれませんが、どうか気になさらずにいて下さいませ」

「えー、俺結構気にするタイプなんだけど? ほら、さっきのアレとか?」

「6歳児の言葉で意味は分かっていないのですが、

男はサイズじゃない、膨張率で勝負だ

って習ったそうですわ」


「ぶーっ」

 イライジャが飲みかけた紅茶を吐き出し、アレクシスは口をポカンと開けてアメリアを見つめていた。

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