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4.イライジャ登場
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入ってきたのは恐らく長男のイライジャだろう。アメリアは立ち上がり、とても綺麗な所作でカーテシーをした。
「初めてお目にかかります。アメリア・ランドルフと申します」
イライジャがアメリアを馬鹿にしたような目で見ている。
「貴族の娘というより、まるでガヴァネスだな」
「先日までキャンベル公爵様の元で家庭教師をしておりましたので」
両腕を胸の前で組みふんぞり返った態度のイライジャは、
「ふん、とうとう母上もまともな娘を見つけられなくなったと見える。
“余り物” に声をかけざるを得ないとは情けない。
食事は済んでいるようだから、馬車の用意をさせよう。
日の明るいうちに出立した方が良い」
「どちらに参るのでしょうか?」
「帰りたくなった頃だと思ってな。
母上の顔を立てて、一応挨拶だけはしてやろうと思って来てやった」
「ご親切にありがとうございます。
まだ帰る予定はございませんのでお気遣いなく」
イライジャが目を見開き、
「お前は馬鹿か? 家庭教師なら少しは知恵があるかと思ったが、これ程放って置かれても帰る気がないとは呆れ返るな」
「放って置いたと気づいておられてようございました。使用人の言葉が理解できない愚か者ではないようですね」
イライジャが顔を真っ赤にして、
「俺が愚か者だと?」
「愚か者でなくてようございましたと申し上げましたの」
イライジャは気が短い男なのか、組んでいた両手を解き両手の拳を握りしめて仁王立ちしている。
「お前のような行き遅れの余り物と結婚する愚か者などここにはおらん。
さっさと帰れ」
「それはソフィー様に仰っていただきませんと。
私は3人の息子さんと顔合わせするよう言われておりますの。
約束を違えるわけにはまいりません」
「3人と顔合わせ? ほー、なら会わせてやろう。ついてこい」
イライジャは何か企んでいるようで、楽しそうに部屋を出て行った。
アメリアがその後をついて行くと、イライジャは突き当たりに近い部屋に行きノックもせずドアを開けた。
「アレクシス、客がお前の顔を見たいそうだ」
「客って誰? 今日は予定なかったと思うんだけど」
昼日中だというのに、男がベッドから上半身裸で起き上がった。
「紹介しよう。我らの婚約者、アメリア・ランドルフ嬢だ」
「はあ? これが?」
「ぷっ」
半裸のアレクシスに後ろから抱きついていた女が吹き出した。
「彼女使用人じゃん、母上とうとうおかしくなった?」
「ソフィー様はお二方よりは随分と真面でいらっしゃいましたわ」
「なっ」
イライジャが腹を立てて一歩前に出た。
「彼女、結構言うねえ。なら挨拶くらいしなくちゃね」
アレクシスはベッドから出て、
「初めてお目にかかります。アレクシス・スコットと申します」
全裸で、非常に優雅な仕草で挨拶をした。
「初めてお目にかかります。アメリア・ランドルフと申します」
イライジャがアメリアを馬鹿にしたような目で見ている。
「貴族の娘というより、まるでガヴァネスだな」
「先日までキャンベル公爵様の元で家庭教師をしておりましたので」
両腕を胸の前で組みふんぞり返った態度のイライジャは、
「ふん、とうとう母上もまともな娘を見つけられなくなったと見える。
“余り物” に声をかけざるを得ないとは情けない。
食事は済んでいるようだから、馬車の用意をさせよう。
日の明るいうちに出立した方が良い」
「どちらに参るのでしょうか?」
「帰りたくなった頃だと思ってな。
母上の顔を立てて、一応挨拶だけはしてやろうと思って来てやった」
「ご親切にありがとうございます。
まだ帰る予定はございませんのでお気遣いなく」
イライジャが目を見開き、
「お前は馬鹿か? 家庭教師なら少しは知恵があるかと思ったが、これ程放って置かれても帰る気がないとは呆れ返るな」
「放って置いたと気づいておられてようございました。使用人の言葉が理解できない愚か者ではないようですね」
イライジャが顔を真っ赤にして、
「俺が愚か者だと?」
「愚か者でなくてようございましたと申し上げましたの」
イライジャは気が短い男なのか、組んでいた両手を解き両手の拳を握りしめて仁王立ちしている。
「お前のような行き遅れの余り物と結婚する愚か者などここにはおらん。
さっさと帰れ」
「それはソフィー様に仰っていただきませんと。
私は3人の息子さんと顔合わせするよう言われておりますの。
約束を違えるわけにはまいりません」
「3人と顔合わせ? ほー、なら会わせてやろう。ついてこい」
イライジャは何か企んでいるようで、楽しそうに部屋を出て行った。
アメリアがその後をついて行くと、イライジャは突き当たりに近い部屋に行きノックもせずドアを開けた。
「アレクシス、客がお前の顔を見たいそうだ」
「客って誰? 今日は予定なかったと思うんだけど」
昼日中だというのに、男がベッドから上半身裸で起き上がった。
「紹介しよう。我らの婚約者、アメリア・ランドルフ嬢だ」
「はあ? これが?」
「ぷっ」
半裸のアレクシスに後ろから抱きついていた女が吹き出した。
「彼女使用人じゃん、母上とうとうおかしくなった?」
「ソフィー様はお二方よりは随分と真面でいらっしゃいましたわ」
「なっ」
イライジャが腹を立てて一歩前に出た。
「彼女、結構言うねえ。なら挨拶くらいしなくちゃね」
アレクシスはベッドから出て、
「初めてお目にかかります。アレクシス・スコットと申します」
全裸で、非常に優雅な仕草で挨拶をした。
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