3 / 35
3.領主館へ
しおりを挟む
朝食を済ませたアメリア達は馬車で領主館に向かっていた。
「お嬢様、ほんとにそげな格好で行きなさるんで? 第一印象が大事だといつも言っとらっしゃったに」
「だからこの格好なのよ。
元々ソフィー様が望んでおられたのは、婚約者というより家庭教師だった気がするの。
そう考えたらあの金額にも納得がいったのよね」
今日のアメリアは、ハニーブロンドの髪を後ろで一つに纏め、襟の詰まった濃いグレーのドレスを着込んでいる。
キャンベル公爵家でいつも着ていたドレスで、家庭教師以外の何者にも見えない服装だった。
領主館の正面玄関で馬車を降り、ノッカーを鳴らした。
ドアを開けた従僕がアメリアを上から下まで眺めた後、
「仕事の求人なら裏口に回ってくれ」
「今日お伺いすると連絡しておりましたアメリア・ランドルフと申します」
名前を聞いた従僕が慌てて頭を下げ、応接室に案内してくれた。
「申し訳ございません。こちらへお掛けください。ただ今イライジャ様に取り次いでまいります」
メイドが紅茶と糖菓を運んできたが、いつまで経ってもイライジャはやってこない。
部屋の隅に待機していた従僕に、
「お庭を散策してもよろしいかしら?」
「はっ、あの出来ればその」
「では、すぐそこのテラスでお待ちしてもよろしいかしら?
折角のお天気ですし」
アメリアは従僕の返事を待たずにテラスへ出て、ロージーに持たせていた本を取り出して読み始めた。
お昼近くになり、従僕がソワソワとし始めた。
「何か御用がおありなら、行ってらして構いませんわ。
私はここにおりますので」
「はっ、ではあのイライジャ様の様子を聞いてまいります」
「ありがとう、宜しくお願いしますね」
アメリアはにっこりと笑い、持っていた本を再び読み始めた。
「お嬢様、こったらこと「ロージー、何も問題はないから大丈夫」」
「念の為本を持ってきて正解だったわ。
読みたいと思いながら中々時間が取れなかったから」
それから暫くして、メイドがやってきた。
「アメリア様、お部屋の準備ができております。ご案内いたしますので、こちらへどうぞ」
アメリア達が客間に落ち着き、
「お嬢様、荷物はどげんしますか? このままにしといても良いような」
「いいえ、出してちょうだい。この様子だと次の本も必要かもしれないしね」
部屋に昼食が運ばれてきたが、テーブルには二人分の料理が並んでいる。
「お嬢様、これは・・」
「良かった。お屋敷に着いたら食事は一人になるのかしらって心配していたの。
さあ、一緒に食べましょう」
「イライジャ様が来られるのでは?」
「まさか。結婚前のレディの部屋に入ってくるとか、それはあり得ないわ」
二人は向かい合わせの席で食事をしたが、ロージーは落ち着かないようで酷くそわそわしている。
「ロージー、折角のお料理なんだから楽しく食べなくちゃ」
「でもですね、こんなの落ち着かないですって」
食事が終わる頃、ドンドンと大きな音がした途端いきなりドアが開いた。
ずかずかと入ってきた大男が、
「お前がアメリア・ランドルフか?」
「お嬢様、ほんとにそげな格好で行きなさるんで? 第一印象が大事だといつも言っとらっしゃったに」
「だからこの格好なのよ。
元々ソフィー様が望んでおられたのは、婚約者というより家庭教師だった気がするの。
そう考えたらあの金額にも納得がいったのよね」
今日のアメリアは、ハニーブロンドの髪を後ろで一つに纏め、襟の詰まった濃いグレーのドレスを着込んでいる。
キャンベル公爵家でいつも着ていたドレスで、家庭教師以外の何者にも見えない服装だった。
領主館の正面玄関で馬車を降り、ノッカーを鳴らした。
ドアを開けた従僕がアメリアを上から下まで眺めた後、
「仕事の求人なら裏口に回ってくれ」
「今日お伺いすると連絡しておりましたアメリア・ランドルフと申します」
名前を聞いた従僕が慌てて頭を下げ、応接室に案内してくれた。
「申し訳ございません。こちらへお掛けください。ただ今イライジャ様に取り次いでまいります」
メイドが紅茶と糖菓を運んできたが、いつまで経ってもイライジャはやってこない。
部屋の隅に待機していた従僕に、
「お庭を散策してもよろしいかしら?」
「はっ、あの出来ればその」
「では、すぐそこのテラスでお待ちしてもよろしいかしら?
折角のお天気ですし」
アメリアは従僕の返事を待たずにテラスへ出て、ロージーに持たせていた本を取り出して読み始めた。
お昼近くになり、従僕がソワソワとし始めた。
「何か御用がおありなら、行ってらして構いませんわ。
私はここにおりますので」
「はっ、ではあのイライジャ様の様子を聞いてまいります」
「ありがとう、宜しくお願いしますね」
アメリアはにっこりと笑い、持っていた本を再び読み始めた。
「お嬢様、こったらこと「ロージー、何も問題はないから大丈夫」」
「念の為本を持ってきて正解だったわ。
読みたいと思いながら中々時間が取れなかったから」
それから暫くして、メイドがやってきた。
「アメリア様、お部屋の準備ができております。ご案内いたしますので、こちらへどうぞ」
アメリア達が客間に落ち着き、
「お嬢様、荷物はどげんしますか? このままにしといても良いような」
「いいえ、出してちょうだい。この様子だと次の本も必要かもしれないしね」
部屋に昼食が運ばれてきたが、テーブルには二人分の料理が並んでいる。
「お嬢様、これは・・」
「良かった。お屋敷に着いたら食事は一人になるのかしらって心配していたの。
さあ、一緒に食べましょう」
「イライジャ様が来られるのでは?」
「まさか。結婚前のレディの部屋に入ってくるとか、それはあり得ないわ」
二人は向かい合わせの席で食事をしたが、ロージーは落ち着かないようで酷くそわそわしている。
「ロージー、折角のお料理なんだから楽しく食べなくちゃ」
「でもですね、こんなの落ち着かないですって」
食事が終わる頃、ドンドンと大きな音がした途端いきなりドアが開いた。
ずかずかと入ってきた大男が、
「お前がアメリア・ランドルフか?」
8
お気に入りに追加
831
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
従姉と結婚するとおっしゃるけれど、彼女にも婚約者はいるんですよ? まあ、いいですけど。
チカフジ ユキ
恋愛
ヴィオレッタはとある理由で、侯爵令息のフランツと婚約した。
しかし、そのフランツは従姉である子爵令嬢アメリアの事ばかり優遇し優先する。
アメリアもまたフランツがまるで自分の婚約者のように振る舞っていた。
目的のために婚約だったので、特別ヴィオレッタは気にしていなかったが、アメリアにも婚約者がいるので、そちらに睨まれないために窘めると、それから関係が悪化。
フランツは、アメリアとの関係について口をだすヴィオレッタを疎ましく思い、アメリアは気に食わない婚約者の事を口に出すヴィオレッタを嫌い、ことあるごとにフランツとの関係にマウントをとって来る。
そんな二人に辟易としながら過ごした一年後、そこで二人は盛大にやらかしてくれた。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
婚約破棄されたので初恋の人と添い遂げます!!~有難う! もう国を守らないけど頑張ってね!!~
琴葉悠
恋愛
これは「国守り」と呼ばれる、特殊な存在がいる世界。
国守りは聖人数百人に匹敵する加護を持ち、結界で国を守り。
その近くに来た侵略しようとする億の敵をたった一人で打ち倒すことができる神からの愛を受けた存在。
これはそんな国守りの女性のブリュンヒルデが、王子から婚約破棄され、最愛の初恋の相手と幸せになる話──
国が一つ滅びるお話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
婚約破棄され聖女も辞めさせられたので、好きにさせていただきます。
松石 愛弓
恋愛
国を守る聖女で王太子殿下の婚約者であるエミル・ファーナは、ある日突然、婚約破棄と国外追放を言い渡される。
全身全霊をかけて国の平和を祈り続けてきましたが、そういうことなら仕方ないですね。休日も無く、責任重すぎて大変でしたし、王太子殿下は思いやりの無い方ですし、王宮には何の未練もございません。これからは自由にさせていただきます♪
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
婚約破棄をしてくれた王太子殿下、ありがとうございました
hikari
恋愛
オイフィア王国の王太子グラニオン4世に婚約破棄された公爵令嬢アーデルヘイトは王国の聖女の任務も解かれる。
家に戻るも、父であり、オルウェン公爵家当主のカリオンに勘当され家から追い出される。行き場の無い中、豪商に助けられ、聖女として平民の生活を送る。
ざまぁ要素あり。
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】許婚の子爵令息から婚約破棄を宣言されましたが、それを知った公爵家の幼馴染から溺愛されるようになりました
八重
恋愛
「ソフィ・ルヴェリエ! 貴様とは婚約破棄する!」
子爵令息エミール・エストレが言うには、侯爵令嬢から好意を抱かれており、男としてそれに応えねばならないというのだ。
失意のどん底に突き落とされたソフィ。
しかし、婚約破棄をきっかけに幼馴染の公爵令息ジル・ルノアールから溺愛されることに!
一方、エミールの両親はソフィとの婚約破棄を知って大激怒。
エミールの両親の命令で『好意の証拠』を探すが、侯爵令嬢からの好意は彼の勘違いだった。
なんとかして侯爵令嬢を口説くが、婚約者のいる彼女がなびくはずもなく……。
焦ったエミールはソフィに復縁を求めるが、時すでに遅し──
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【コミカライズ決定】地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~
胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。
時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。
王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。
処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。
これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる