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24.マクガバン侯爵VSチャーター侯爵
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「では、採決を取らせて頂いても宜しいですかな? 摂政を立てるか宰相か、挙手していただきましょう」
緊迫した部屋の空気の中に冷静な法務大臣の声が響いた。
将来の事を考えれば王位を継ぐ可能性のあるマクガバン侯爵を摂政にするべきだと声を上げた方が良いかもしれないが、国の中枢にい続けてきた宰相と違いマクガバン侯爵は外遊と言う名目で真面に国に帰ってくることもなかった。となると今後暫定政権に選ばれる貴族達の舵取りに有利なのは・・。
(ここで公に宰相を選んだら、マクガバンが国王になった時にはまずい事になる。となると摂政に推薦するか)
(宰相は長年国王の腰巾着をやっていたから国王の罪を知り尽くしてるはず。ウォルデン侯爵に陰で情報を流して点数稼ぎしてる可能性が)
(ウォルデンに借金を返済するとなるとどこかから借りてくるしかないよな。マクガバン侯爵は諸外国との伝手がある・・)
(暫定政権が立ち上がった時、主要な高位貴族との繋がりのある宰相の方が有利か)
誰もが周りの様子を伺うばかりで口を開かない。その中でも注目を浴びている宰相は緊張から肩に力が入り吹き出す汗を仕切りに拭っていた。マクガバン侯爵は法務大臣の提案に忌々しげな顔を見せていたが、ひとしきり考え込んだ後態度を豹変させた。
「宰相主導に一票。今まで国の中央で政務に携わっていたチャーター侯爵ならば王宮内の問題もウォルデン侯爵家との問題も速やかに解決してくれるだろう。(次の国王云々はその後の方が楽そうだしな)」
マクガバン侯爵の宣言を聞き大半の大臣も宰相主導を選んだ。
「先ずは国を安定させなければならない。チャーター宰相殿はこれから大変だと思うが宜しく頼む。私に出来ることはなんでも言ってくれたまえ」
(事態が収まるまで様子見だな。どうせ俺が王位につくしかないんだから、せいぜい宰相に走り回ってもらうとするか。その間にアレとアレを・・)
現時点で摂政になるよりも宰相に主導権を渡した方がマッケナの監視の目が緩いだろうと考えたマクガバン外務大臣は、宰相に感謝を述べながら自身の罪の隠蔽方法とマッケナの目を欺く方法を考えはじめていた。
(こっ、これもウォルデンの報復の一つか? わしの罪を知っていながら矢面に立たせるなど予想以上に悪魔のような奴じゃないか。此奴の事をただの脳筋だの簡単に騙せるお人好しだのと言い出した奴は一体何を考えておったんじゃ。
ウォルデンに睨まれながら国を纏めるとか、さっさと牢に入れられた国王達の方がよっぽど幸せじゃないか! なんでわしが奴らの尻拭いをせねばならんのじゃ!)
マクガバン侯爵の言動はマッケナと法務大臣の予想通り。彼等の思惑は・・。
『これから罪を認めさせなければならんマクガバンより、既に紐付けが終わっているチャーターの方が使いやすい』
その日のうちに全ての公爵家と侯爵家に向けて伝令が送られた。社交シーズン中だった為殆どの領主が王都に滞在していたが、誰も彼も暫定政権への参加に尻込みし喧々轟々責任の押し付け合いが続いた。
「陛下のお側に仕えていた大臣達が責任を取るべきであろう!」
「公平な目で見極める為には公爵家のお力が必要でしょう」
「書類の精査なら貴殿等でも十分であろうが!」
自身の罪の隠蔽やウォルデン侯爵家へのご機嫌取りの方が重要だと考える貴族が多く、10日の日数を要してようやく暫定政権が立ち上がったが国王一家が作った負債額に呆然となったのは言うまでもない。
騒動から1ヶ月・・。
「ほぼ出揃ったみたいだが、思った以上の数だったな」
執務室のソファにどっかりと腰を下ろしたマッケナが今まで散々嫌味を言ってきた貴族達から届いた手紙の束と贈り物や訪問客のリストを確認しながら溜息をついた。
「はい。謝罪のお手紙には定型文でお返事をお出しして贈り物は全て送り返しました。先触れなしにお越しになられる方などもなくなりましたので漸く静かになりました」
「謝罪は別にしても腹を探られたくない貴族がこんなにあるとは・・。
あちこちの部署で不正が見つかりすぎてるから監査役が目を吊り上げて『人手が足りない、貴族用の牢が足りん』と騒いでた」
ジョージが用意したワインを飲みながらマッケナが思い出し笑いをするとジョージも執務室の隅に積み重ねられた資料を見遣って薄らと口元に笑みを浮かべた。
「お嬢様やマシュー達の集めた資料がかなり役立っていると聞いております」
「ああ、資料があまりにも正確だからって監査役がルーナに協力して欲しいと言ってきた。これ以上関わらせるつもりはないから断ったがな」
「マシューの話では一段落するまではしっかりと余暇を楽しむつもりだと仰っておられたそうですから」
「ああ、それが良い。当分王宮内は騒がしいだろうし、もう少ししたら次期国王についての話がではじめるはず。そうなったらまた騒がしくなるだろう」
「ウォルデン侯爵家への支払いを揉み消す一番簡単な方法は旦那様を王にするか王家の血を引く方とルーナ様の婚約でしょうから。あちこち煩くなりそうです。マクガバン侯爵様の罪は既にいくつか判明しておられますし」
マクガバン侯爵は人身売買と贈収賄で既に逮捕されている。
「王位に興味なんてないのに簒奪者になるとかお断りだ。
領主の器じゃないとか言って自分の責任を放棄して、お前達に散々迷惑を掛けてきた俺が国王になるとかあり得んよ。
友人・・いや、古い知り合いに非難されたくらいで逃げ回っていた情けない奴だし。
ルーナにはこれからはやりたい事を自由にやらせてやりたいが、多分二度と王家とは関わりたくないって言うだろう」
「兄君は次期領主として領地経営と発明品の維持・開発、旦那様は侯爵家の軍部の統括・育成を担当するようにと教育されておられたのですから混乱されたのではないでしょうか」
「最初はそうかもしれんが、責任逃れをした事は許される事じゃない。しかもその後惰性に流れて見て見ぬ振りをしてきたんだ。領主としても父親としても最低だったが名誉挽回のラストチャンスだと思って頑張るから宜しく頼む」
「はい。旦那様が良き領主様お父上様になられるよう微力ながらお手伝いさせていただきます」
「次はマシューからの連絡待ちというところか?」
緊迫した部屋の空気の中に冷静な法務大臣の声が響いた。
将来の事を考えれば王位を継ぐ可能性のあるマクガバン侯爵を摂政にするべきだと声を上げた方が良いかもしれないが、国の中枢にい続けてきた宰相と違いマクガバン侯爵は外遊と言う名目で真面に国に帰ってくることもなかった。となると今後暫定政権に選ばれる貴族達の舵取りに有利なのは・・。
(ここで公に宰相を選んだら、マクガバンが国王になった時にはまずい事になる。となると摂政に推薦するか)
(宰相は長年国王の腰巾着をやっていたから国王の罪を知り尽くしてるはず。ウォルデン侯爵に陰で情報を流して点数稼ぎしてる可能性が)
(ウォルデンに借金を返済するとなるとどこかから借りてくるしかないよな。マクガバン侯爵は諸外国との伝手がある・・)
(暫定政権が立ち上がった時、主要な高位貴族との繋がりのある宰相の方が有利か)
誰もが周りの様子を伺うばかりで口を開かない。その中でも注目を浴びている宰相は緊張から肩に力が入り吹き出す汗を仕切りに拭っていた。マクガバン侯爵は法務大臣の提案に忌々しげな顔を見せていたが、ひとしきり考え込んだ後態度を豹変させた。
「宰相主導に一票。今まで国の中央で政務に携わっていたチャーター侯爵ならば王宮内の問題もウォルデン侯爵家との問題も速やかに解決してくれるだろう。(次の国王云々はその後の方が楽そうだしな)」
マクガバン侯爵の宣言を聞き大半の大臣も宰相主導を選んだ。
「先ずは国を安定させなければならない。チャーター宰相殿はこれから大変だと思うが宜しく頼む。私に出来ることはなんでも言ってくれたまえ」
(事態が収まるまで様子見だな。どうせ俺が王位につくしかないんだから、せいぜい宰相に走り回ってもらうとするか。その間にアレとアレを・・)
現時点で摂政になるよりも宰相に主導権を渡した方がマッケナの監視の目が緩いだろうと考えたマクガバン外務大臣は、宰相に感謝を述べながら自身の罪の隠蔽方法とマッケナの目を欺く方法を考えはじめていた。
(こっ、これもウォルデンの報復の一つか? わしの罪を知っていながら矢面に立たせるなど予想以上に悪魔のような奴じゃないか。此奴の事をただの脳筋だの簡単に騙せるお人好しだのと言い出した奴は一体何を考えておったんじゃ。
ウォルデンに睨まれながら国を纏めるとか、さっさと牢に入れられた国王達の方がよっぽど幸せじゃないか! なんでわしが奴らの尻拭いをせねばならんのじゃ!)
マクガバン侯爵の言動はマッケナと法務大臣の予想通り。彼等の思惑は・・。
『これから罪を認めさせなければならんマクガバンより、既に紐付けが終わっているチャーターの方が使いやすい』
その日のうちに全ての公爵家と侯爵家に向けて伝令が送られた。社交シーズン中だった為殆どの領主が王都に滞在していたが、誰も彼も暫定政権への参加に尻込みし喧々轟々責任の押し付け合いが続いた。
「陛下のお側に仕えていた大臣達が責任を取るべきであろう!」
「公平な目で見極める為には公爵家のお力が必要でしょう」
「書類の精査なら貴殿等でも十分であろうが!」
自身の罪の隠蔽やウォルデン侯爵家へのご機嫌取りの方が重要だと考える貴族が多く、10日の日数を要してようやく暫定政権が立ち上がったが国王一家が作った負債額に呆然となったのは言うまでもない。
騒動から1ヶ月・・。
「ほぼ出揃ったみたいだが、思った以上の数だったな」
執務室のソファにどっかりと腰を下ろしたマッケナが今まで散々嫌味を言ってきた貴族達から届いた手紙の束と贈り物や訪問客のリストを確認しながら溜息をついた。
「はい。謝罪のお手紙には定型文でお返事をお出しして贈り物は全て送り返しました。先触れなしにお越しになられる方などもなくなりましたので漸く静かになりました」
「謝罪は別にしても腹を探られたくない貴族がこんなにあるとは・・。
あちこちの部署で不正が見つかりすぎてるから監査役が目を吊り上げて『人手が足りない、貴族用の牢が足りん』と騒いでた」
ジョージが用意したワインを飲みながらマッケナが思い出し笑いをするとジョージも執務室の隅に積み重ねられた資料を見遣って薄らと口元に笑みを浮かべた。
「お嬢様やマシュー達の集めた資料がかなり役立っていると聞いております」
「ああ、資料があまりにも正確だからって監査役がルーナに協力して欲しいと言ってきた。これ以上関わらせるつもりはないから断ったがな」
「マシューの話では一段落するまではしっかりと余暇を楽しむつもりだと仰っておられたそうですから」
「ああ、それが良い。当分王宮内は騒がしいだろうし、もう少ししたら次期国王についての話がではじめるはず。そうなったらまた騒がしくなるだろう」
「ウォルデン侯爵家への支払いを揉み消す一番簡単な方法は旦那様を王にするか王家の血を引く方とルーナ様の婚約でしょうから。あちこち煩くなりそうです。マクガバン侯爵様の罪は既にいくつか判明しておられますし」
マクガバン侯爵は人身売買と贈収賄で既に逮捕されている。
「王位に興味なんてないのに簒奪者になるとかお断りだ。
領主の器じゃないとか言って自分の責任を放棄して、お前達に散々迷惑を掛けてきた俺が国王になるとかあり得んよ。
友人・・いや、古い知り合いに非難されたくらいで逃げ回っていた情けない奴だし。
ルーナにはこれからはやりたい事を自由にやらせてやりたいが、多分二度と王家とは関わりたくないって言うだろう」
「兄君は次期領主として領地経営と発明品の維持・開発、旦那様は侯爵家の軍部の統括・育成を担当するようにと教育されておられたのですから混乱されたのではないでしょうか」
「最初はそうかもしれんが、責任逃れをした事は許される事じゃない。しかもその後惰性に流れて見て見ぬ振りをしてきたんだ。領主としても父親としても最低だったが名誉挽回のラストチャンスだと思って頑張るから宜しく頼む」
「はい。旦那様が良き領主様お父上様になられるよう微力ながらお手伝いさせていただきます」
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