20 / 34
20.はじまりの時
しおりを挟む
フラウド男爵とディスペンサー騎士団長を捕縛した5日後の午後。
マッケナとジョージはルーナの日誌とルーナ達が集めた情報や資料などを、使用人に扮した侯爵家の兵士達に持たせ王宮へやって来た。
使用人達が持っている箱に納められた書類はほんの一抱えずつしか入っていないものもあり、恐らく彼らは護衛としてついてきたのではないかと思われた。
謁見室前には青い顔で今にも気を失いそうな顔のドジャース法務官がマッケナを待っていた。
「今から屠殺場に運ばれていくみたいな顔だな」
「ウォルデン侯爵様、笑えない冗談はご容赦下さい。そっ、それともやはり私は・・」
「大丈夫、何があっても必ず守ると約束しただろう?」
「はっ、はぃ。ルーナ様には何度も助けて頂いておりましたのに、あの様な卑劣な行為に加担してしまい・・本当に申し訳ありません」
「ルーナからの手紙に『ドジャース法務官を宜しく頼みます』と書いてあったんだ。必ず守ると約束する」
「つ、次は・・ウォルデン侯爵です」
冷や汗を拭きながら震える声で名前を読み上げた宰相は手元の資料を見つめ、横目でギロリと睨んできた国王の視線に気付かないふりをした。
「何故彼奴が? 話は既に終わっておろう? 慰謝料の減額でも願い出ておるのか?」
「げっ、減額かどうかまでは聞いておりませんが・・慰謝料等について謁見を・・申し込んでおります」
「そのような事で余の時間を無駄にする必要はあるまい。財務大臣に対応させれば良いではないか」
「しっ、しかしその」
「陛下、もう一度くらいは話を聞いてやっても良いのではありませんか?」
反論できず口籠もった宰相の近くで国王と宰相のやりとりを黙って聞いていたユージーンが助け舟を出した。マッケナをまだ懐柔しきれていないと思っているユージーンはマッケナの機嫌をとっておきたいと思っているが、実際のところはマッケナに完全に見捨てられている。
(くそ、あれ以来マッケナの奴に会えてないのに何しにきやがったんだ? 俺は大丈夫だとは思うが何も聞いてないってのは・・)
「ユージーン、其方がウォルデンに道理を教えてやると申しておったではないか! あれから何日経っておるか分かっておるのか!」
「まあ、えーっと。はい。申し訳ありません」
「まあ良い、ユージーンも宰相も役立たずなら余が因果を含めてやろう」
謁見室の扉が開きマッケナの後にジョージが続いた。その後ろからゾロゾロと箱を捧げ持つ使用人が続くと謁見室の奥から国王の怒鳴り声が響いてきた。
「こんな大人数でやって来るとはどういう了見だ!」
堂々と謁見室の真ん中を歩くマッケナとは対照的に王座に座る国王は真っ赤な顔で怒り狂っており、その横に並ぶ王妃とグレイソン王子は『なんと派手なパフォーマンスだ』と嘲笑の色を浮かべていた。
国王に敬意を示す様子のないマッケナを見たユージーンは引き攣った笑みを浮かべながら用心深そうな目でマッケナの様子を伺っていたが、土気色の顔とくっきりと濃い目の下のクマの宰相は全てを諦めたような顔で俯いていた。
「ウォルデン、余の前で無礼であろうが!」
膝もつかず目線も下げず国王を真っ直ぐに見つめるマッケナの態度に国王が憤激した。謁見室に居並ぶ大臣達は警戒心を表した顔でマッケナを見つめており、マッケナ達の後ろの壁を埋め尽くしている衛兵達は全員直ぐにでも剣が抜けるようにと柄に手をかけた。
「先ずは、グレイソン第一王子有責による我が娘ルーナ・ウォルデンとの婚約破棄に対する慰謝料の請求に関わる書類をお持ちいたしました。
ルーナが王宮にて国王・王妃・王子の仕事の一部を代行しておりました事を鑑み、婚約時の規定による慰謝料を増額し王子妃教育の費用請求と併せてお支払い頂きます」
「ばっ、馬鹿な事を! 気でも狂ったのではないか!? その様な戯言が通用すると思うたか!」
「グレイソン第一王子が不貞を働いていた事についてはドジャース法務官が証人です。
グレイソン王子は愛人3名を従えルーナに婚約破棄を仰られた。婚約の契約では王子に不貞・不義のあった場合には侯爵家からの婚約破棄が可能と明記されておりその際の慰謝料も記載されております」
ジョージが後ろに向かって合図をすると、背が高く立派な体躯の侯爵家の使用人に埋もれていたドジャース法務官がオドオドしながら前に進み出た。
「確かに・・その。グレイソン王子殿下は婚約破棄の時、次の婚約者候補の方を連れておられました。お一人が正妃様となりお二人が側妃になられると明言されました」
「正妃? 殿下はまだ立太子しておられんのに?」
「側妃は国王にしか・・」
「ルーナがここ数年夜も明けぬうちに出仕し深夜まで政務に勤めて事をここにおられる大臣方はご存じのはず。
念の為ルーナの日報を持参致しましたのでそれを見れば一目瞭然かと」
「その様なもの、幾らでも捏造できるわい。あの様な小娘が政務など理解できるわけがなかろうが、そうであろう?」
ふんっと馬鹿にした様に鼻を鳴らした国王が玉座に踏ん反り返った。
「ウォルデン侯爵、確かにルーナ殿は頑張っておられたと聞くが・・少し買い被りすぎではないかな?」
何度も助けられた記憶がある外務大臣だが国王へ阿る言葉を平然と口にした。
「ほう。では、ルーナの日報にある各部署へ出した指示書や提案書などを確認致しましょう。誰が書いたものなのか文字を見れば外務大臣にも直ぐにご理解いただけることかと思いますが、他の方々はいかがお考えでおられますかな?」
殆どの大臣は慌てて目を逸らしたり俯いたりでマッケナの言葉に返答を返すものはいなかった。
国王にあるまじき下劣な顔で睥睨していた国王やグレイソン王子が口を歪め笑いを堪えていると法務大臣が緊張した面持ちで一歩前に出た。
「・・法務部一同、ルーナ様が政務に多大な尽力を尽くしておられたお陰で円滑に職務を果たすことができた事を証言致します」
「ざっ、財務大臣として申し上げます! ウォルデン侯爵と法務大臣の仰った事は事実です」
「貴様ら、血迷うたか!! それともあの娘に政務を手伝わせ仕事の手を抜いておったとでも申すのか!」
「そうではございません。ルーナ様は陛下と王妃様、王子殿下の執務室に溜まり政務に支障をきたしていた物を各部署に振り分けたり急ぎで手配しなければならないものなどの指示を出したりして下さいました」
「他国への贈り物の指示やお礼状、経費の見直しや購入品の指示。各領地からの嘆願書の確認と提案書などもルーナ様が指示して下さいました」
「彼奴は王子の婚約者でしかないルーナにはその様な権限はない! 」
「勿論でございます。ルーナ様はその権限内で我らの仕事が円滑に回る様にして下さっておりました。権限を逸脱する事や悪用・乱用された事は一度もございません」
「余に歯向かってタダで済むと思うておるまいな! この者たちを捕らえよ、一族郎党首を刎ねてしまえ!!」
整列していた衛兵が法務大臣と財務大臣を拘束する前に2人の大臣がマッケナの元に走って来ると、マッケナが連れてきた使用人達が武器を構えた衛兵から大臣とドジャース法務官を守り戦闘体制をとった。
「動くな!!」
威圧を込めたマッケナの大声で衛兵達が固まった。真っ赤な顔で激怒していた国王と王妃は怯えて玉座にしがみつき国王の横に立っていたグレイソン第一王子は腰を抜かして尻餅をついた。
「まだ話の途中だ。荒事は私の話は終わっておらん」
「きっ、貴様・・余の前でよくもそのような・・」
「数日前にディスペンサー伯爵を拘束したがとても有益な話を聞かせてくれた。こう言えば話の続きはご理解いただけたかな?」
マッケナとジョージはルーナの日誌とルーナ達が集めた情報や資料などを、使用人に扮した侯爵家の兵士達に持たせ王宮へやって来た。
使用人達が持っている箱に納められた書類はほんの一抱えずつしか入っていないものもあり、恐らく彼らは護衛としてついてきたのではないかと思われた。
謁見室前には青い顔で今にも気を失いそうな顔のドジャース法務官がマッケナを待っていた。
「今から屠殺場に運ばれていくみたいな顔だな」
「ウォルデン侯爵様、笑えない冗談はご容赦下さい。そっ、それともやはり私は・・」
「大丈夫、何があっても必ず守ると約束しただろう?」
「はっ、はぃ。ルーナ様には何度も助けて頂いておりましたのに、あの様な卑劣な行為に加担してしまい・・本当に申し訳ありません」
「ルーナからの手紙に『ドジャース法務官を宜しく頼みます』と書いてあったんだ。必ず守ると約束する」
「つ、次は・・ウォルデン侯爵です」
冷や汗を拭きながら震える声で名前を読み上げた宰相は手元の資料を見つめ、横目でギロリと睨んできた国王の視線に気付かないふりをした。
「何故彼奴が? 話は既に終わっておろう? 慰謝料の減額でも願い出ておるのか?」
「げっ、減額かどうかまでは聞いておりませんが・・慰謝料等について謁見を・・申し込んでおります」
「そのような事で余の時間を無駄にする必要はあるまい。財務大臣に対応させれば良いではないか」
「しっ、しかしその」
「陛下、もう一度くらいは話を聞いてやっても良いのではありませんか?」
反論できず口籠もった宰相の近くで国王と宰相のやりとりを黙って聞いていたユージーンが助け舟を出した。マッケナをまだ懐柔しきれていないと思っているユージーンはマッケナの機嫌をとっておきたいと思っているが、実際のところはマッケナに完全に見捨てられている。
(くそ、あれ以来マッケナの奴に会えてないのに何しにきやがったんだ? 俺は大丈夫だとは思うが何も聞いてないってのは・・)
「ユージーン、其方がウォルデンに道理を教えてやると申しておったではないか! あれから何日経っておるか分かっておるのか!」
「まあ、えーっと。はい。申し訳ありません」
「まあ良い、ユージーンも宰相も役立たずなら余が因果を含めてやろう」
謁見室の扉が開きマッケナの後にジョージが続いた。その後ろからゾロゾロと箱を捧げ持つ使用人が続くと謁見室の奥から国王の怒鳴り声が響いてきた。
「こんな大人数でやって来るとはどういう了見だ!」
堂々と謁見室の真ん中を歩くマッケナとは対照的に王座に座る国王は真っ赤な顔で怒り狂っており、その横に並ぶ王妃とグレイソン王子は『なんと派手なパフォーマンスだ』と嘲笑の色を浮かべていた。
国王に敬意を示す様子のないマッケナを見たユージーンは引き攣った笑みを浮かべながら用心深そうな目でマッケナの様子を伺っていたが、土気色の顔とくっきりと濃い目の下のクマの宰相は全てを諦めたような顔で俯いていた。
「ウォルデン、余の前で無礼であろうが!」
膝もつかず目線も下げず国王を真っ直ぐに見つめるマッケナの態度に国王が憤激した。謁見室に居並ぶ大臣達は警戒心を表した顔でマッケナを見つめており、マッケナ達の後ろの壁を埋め尽くしている衛兵達は全員直ぐにでも剣が抜けるようにと柄に手をかけた。
「先ずは、グレイソン第一王子有責による我が娘ルーナ・ウォルデンとの婚約破棄に対する慰謝料の請求に関わる書類をお持ちいたしました。
ルーナが王宮にて国王・王妃・王子の仕事の一部を代行しておりました事を鑑み、婚約時の規定による慰謝料を増額し王子妃教育の費用請求と併せてお支払い頂きます」
「ばっ、馬鹿な事を! 気でも狂ったのではないか!? その様な戯言が通用すると思うたか!」
「グレイソン第一王子が不貞を働いていた事についてはドジャース法務官が証人です。
グレイソン王子は愛人3名を従えルーナに婚約破棄を仰られた。婚約の契約では王子に不貞・不義のあった場合には侯爵家からの婚約破棄が可能と明記されておりその際の慰謝料も記載されております」
ジョージが後ろに向かって合図をすると、背が高く立派な体躯の侯爵家の使用人に埋もれていたドジャース法務官がオドオドしながら前に進み出た。
「確かに・・その。グレイソン王子殿下は婚約破棄の時、次の婚約者候補の方を連れておられました。お一人が正妃様となりお二人が側妃になられると明言されました」
「正妃? 殿下はまだ立太子しておられんのに?」
「側妃は国王にしか・・」
「ルーナがここ数年夜も明けぬうちに出仕し深夜まで政務に勤めて事をここにおられる大臣方はご存じのはず。
念の為ルーナの日報を持参致しましたのでそれを見れば一目瞭然かと」
「その様なもの、幾らでも捏造できるわい。あの様な小娘が政務など理解できるわけがなかろうが、そうであろう?」
ふんっと馬鹿にした様に鼻を鳴らした国王が玉座に踏ん反り返った。
「ウォルデン侯爵、確かにルーナ殿は頑張っておられたと聞くが・・少し買い被りすぎではないかな?」
何度も助けられた記憶がある外務大臣だが国王へ阿る言葉を平然と口にした。
「ほう。では、ルーナの日報にある各部署へ出した指示書や提案書などを確認致しましょう。誰が書いたものなのか文字を見れば外務大臣にも直ぐにご理解いただけることかと思いますが、他の方々はいかがお考えでおられますかな?」
殆どの大臣は慌てて目を逸らしたり俯いたりでマッケナの言葉に返答を返すものはいなかった。
国王にあるまじき下劣な顔で睥睨していた国王やグレイソン王子が口を歪め笑いを堪えていると法務大臣が緊張した面持ちで一歩前に出た。
「・・法務部一同、ルーナ様が政務に多大な尽力を尽くしておられたお陰で円滑に職務を果たすことができた事を証言致します」
「ざっ、財務大臣として申し上げます! ウォルデン侯爵と法務大臣の仰った事は事実です」
「貴様ら、血迷うたか!! それともあの娘に政務を手伝わせ仕事の手を抜いておったとでも申すのか!」
「そうではございません。ルーナ様は陛下と王妃様、王子殿下の執務室に溜まり政務に支障をきたしていた物を各部署に振り分けたり急ぎで手配しなければならないものなどの指示を出したりして下さいました」
「他国への贈り物の指示やお礼状、経費の見直しや購入品の指示。各領地からの嘆願書の確認と提案書などもルーナ様が指示して下さいました」
「彼奴は王子の婚約者でしかないルーナにはその様な権限はない! 」
「勿論でございます。ルーナ様はその権限内で我らの仕事が円滑に回る様にして下さっておりました。権限を逸脱する事や悪用・乱用された事は一度もございません」
「余に歯向かってタダで済むと思うておるまいな! この者たちを捕らえよ、一族郎党首を刎ねてしまえ!!」
整列していた衛兵が法務大臣と財務大臣を拘束する前に2人の大臣がマッケナの元に走って来ると、マッケナが連れてきた使用人達が武器を構えた衛兵から大臣とドジャース法務官を守り戦闘体制をとった。
「動くな!!」
威圧を込めたマッケナの大声で衛兵達が固まった。真っ赤な顔で激怒していた国王と王妃は怯えて玉座にしがみつき国王の横に立っていたグレイソン第一王子は腰を抜かして尻餅をついた。
「まだ話の途中だ。荒事は私の話は終わっておらん」
「きっ、貴様・・余の前でよくもそのような・・」
「数日前にディスペンサー伯爵を拘束したがとても有益な話を聞かせてくれた。こう言えば話の続きはご理解いただけたかな?」
21
お気に入りに追加
1,427
あなたにおすすめの小説
冤罪を受けたため、隣国へ亡命します
しろねこ。
恋愛
「お父様が投獄?!」
呼び出されたレナンとミューズは驚きに顔を真っ青にする。
「冤罪よ。でも事は一刻も争うわ。申し訳ないけど、今すぐ荷づくりをして頂戴。すぐにこの国を出るわ」
突如母から言われたのは生活を一変させる言葉だった。
友人、婚約者、国、屋敷、それまでの生活をすべて捨て、令嬢達は手を差し伸べてくれた隣国へと逃げる。
冤罪を晴らすため、奮闘していく。
同名主人公にて様々な話を書いています。
立場やシチュエーションを変えたりしていますが、他作品とリンクする場所も多々あります。
サブキャラについてはスピンオフ的に書いた話もあったりします。
変わった作風かと思いますが、楽しんで頂けたらと思います。
ハピエンが好きなので、最後は必ずそこに繋げます!
小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿中。
【完結】許婚の子爵令息から婚約破棄を宣言されましたが、それを知った公爵家の幼馴染から溺愛されるようになりました
八重
恋愛
「ソフィ・ルヴェリエ! 貴様とは婚約破棄する!」
子爵令息エミール・エストレが言うには、侯爵令嬢から好意を抱かれており、男としてそれに応えねばならないというのだ。
失意のどん底に突き落とされたソフィ。
しかし、婚約破棄をきっかけに幼馴染の公爵令息ジル・ルノアールから溺愛されることに!
一方、エミールの両親はソフィとの婚約破棄を知って大激怒。
エミールの両親の命令で『好意の証拠』を探すが、侯爵令嬢からの好意は彼の勘違いだった。
なんとかして侯爵令嬢を口説くが、婚約者のいる彼女がなびくはずもなく……。
焦ったエミールはソフィに復縁を求めるが、時すでに遅し──
王太子に愛する人との婚約を破棄させられたので、国を滅ぼします。
克全
恋愛
題名を「聖女の男爵令嬢と辺境伯公子は、色魔の王太子にむりやり婚約破棄させられた。」から変更しました。
聖魔法の使い手である男爵令嬢・エマ・バーブランドは、寄親であるジェダ辺境伯家のレアラ公子と婚約していた。
幸せの絶頂だったエマだが、その可憐な容姿と聖女だと言う評判が、色魔の王太子の眼にとまってしまった。
実家を取り潰すとまで脅かされたエマだったが、頑として王太子の誘いを断っていた。
焦れた王太子は、とうとう王家の権力を使って、エマとレアラの婚約を解消させるのだった。
聖女の力は使いたくありません!
三谷朱花
恋愛
目の前に並ぶ、婚約者と、気弱そうに隣に立つ義理の姉の姿に、私はめまいを覚えた。
ここは、私がヒロインの舞台じゃなかったの?
昨日までは、これまでの人生を逆転させて、ヒロインになりあがった自分を自分で褒めていたのに!
どうしてこうなったのか、誰か教えて!
※アルファポリスのみの公開です。
両親から溺愛されている妹に婚約者を奪われました。えっと、その婚約者には隠し事があるようなのですが、大丈夫でしょうか?
水上
恋愛
「悪いけど、君との婚約は破棄する。そして私は、君の妹であるキティと新たに婚約を結ぶことにした」
「え……」
子爵令嬢であるマリア・ブリガムは、子爵令息である婚約者のハンク・ワーナーに婚約破棄を言い渡された。
しかし、私たちは政略結婚のために婚約していたので、特に問題はなかった。
昔から私のものを何でも奪う妹が、まさか婚約者まで奪うとは思っていなかったので、多少驚いたという程度のことだった。
「残念だったわね、お姉さま。婚約者を奪われて悔しいでしょうけれど、これが現実よ」
いえいえ、べつに悔しくなんてありませんよ。
むしろ、政略結婚のために嫌々婚約していたので、お礼を言いたいくらいです。
そしてその後、私には新たな縁談の話が舞い込んできた。
妹は既に婚約しているので、私から新たに婚約者を奪うこともできない。
私は家族から解放され、新たな人生を歩みだそうとしていた。
一方で、私から婚約者を奪った妹は後に、婚約者には『とある隠し事』があることを知るのだった……。
【完結】クラーク伯爵令嬢は、卒業パーティーで婚約破棄されるらしい
根古川ゆい
恋愛
自分の婚約破棄が噂になるなんて。
幼い頃から大好きな婚約者マシューを信じたいけれど、素直に信じる事もできないリナティエラは、覚悟を決めてパーティー会場に向かいます。
あなたのおかげで吹っ切れました〜私のお金目当てならお望み通りに。ただし利子付きです
じじ
恋愛
「あんな女、金だけのためさ」
アリアナ=ゾーイはその日、初めて婚約者のハンゼ公爵の本音を知った。
金銭だけが目的の結婚。それを知った私が泣いて暮らすとでも?おあいにくさま。あなたに恋した少女は、あなたの本音を聞いた瞬間消え去ったわ。
私が金づるにしか見えないのなら、お望み通りあなたのためにお金を用意しますわ…ただし、利子付きで。
妹に婚約者を奪われ、屋敷から追放されました。でもそれが、私を虐げていた人たちの破滅の始まりでした
水上
恋愛
「ソフィア、悪いがお前との婚約は破棄させてもらう」
子爵令嬢である私、ソフィア・ベルモントは、婚約者である子爵令息のジェイソン・フロストに婚約破棄を言い渡された。
彼の隣には、私の妹であるシルビアがいる。
彼女はジェイソンの腕に体を寄せ、勝ち誇ったような表情でこちらを見ている。
こんなこと、許されることではない。
そう思ったけれど、すでに両親は了承していた。
完全に、シルビアの味方なのだ。
しかも……。
「お前はもう用済みだ。この屋敷から出て行け」
私はお父様から追放を宣言された。
必死に食い下がるも、お父様のビンタによって、私の言葉はかき消された。
「いつまで床に這いつくばっているのよ、見苦しい」
お母様は冷たい言葉を私にかけてきた。
その目は、娘を見る目ではなかった。
「惨めね、お姉さま……」
シルビアは歪んだ笑みを浮かべて、私の方を見ていた。
そうして私は、妹に婚約者を奪われ、屋敷から追放された。
途方もなく歩いていたが、そんな私に、ある人物が声を掛けてきた。
一方、私を虐げてきた人たちは、破滅へのカウントダウンがすでに始まっていることに、まだ気づいてはいなかった……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる