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新しい化粧品

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あ、この口紅発色いいかも…。


俺、山本  たける、女装にハマりました。





ハマった理由は、今
専門学校に通っていて、


「山本君さ~、華奢きゃしゃだから絶対女装似合うよ!
私、服貸すからさ、ね?」

「私、メイクしたげる!」

「あたしはウィッグ持ってくる!」

「カメラマンは私に任せろー!」



一部の女子がノリノリで女装を
すすめてきて、
断ったんだ、断ったんだけど、
メイクだけ、と言われて
メイクだけすることにした。


が…


鏡に映る自分が
どんどん可愛くなっていくのが新鮮で、
本来の根暗な自分じゃなく、
女子達のメイクのおかげで
綺麗で自信に溢れた自分じゃない
自分が鏡に映った…。



「え、やっぱ、山本君可愛いじゃん!」

「ちょっ…これは写真、写真!」

「おい、やめろって、写真は勘弁!」

「山本君可愛いよー!
はい、チーズ!」



結局、女子達に褒められ、
ノリに流され、そのまま
スカートもウィッグも被ってしまい、
違う自分になれて、


女装すると褒めて貰える…。
女装は楽しい…。
と、新しい扉を開けてしまった…。






そして、家に帰っても女装がしたくなり、
1人暮らしだったため、
俺の女装に興味津々の、クラスの女子達に
協力してもらって、
服やメイクを買ってきて貰った。


メイクも、少し工夫をすれば
毎日違う自分になれるし
楽しかった。
それに、撮った写真を見せると
学校のみんなから


「山本、お前キレイじゃん」

「可愛い~」


男女問わず褒められた。
だから、家での女装も楽しかったが、
とうとう、学校までもするようになった。


学校に行く途中、時々
気づかれる事もあったが、
声を出さない限り、
お店の定員さんからも基本、


「ご注文お伺い致します!」

「ラーメン1つ」

「え、男の人ですか…?」


こんな風に気づかれなかった…。






でも、女装だけだから!
恋愛対象は女だから!
それは、クラスのみんなにも
先生にも釘を刺すように言っている。



だけど、学校の女子…
じゃなくて…腐女子達は
俺に聞くんだ。


「山本君、瀬川君の事、どう思ってる?」


「は?
普通に絵、上手いなって思ってる」


「いやいや、それ以外の感情よ!」

「こう…胸がきゅん…的な!
ないの?!」

「挨拶する時ドキドキするとかないの?!」


「ないわ!!」


ギラギラとした目をした腐女子達に俺は鋭く
そう言った…。





女装をするようになって腐女子の
標的になっているのはたしか…。
むしろ俺が否定すればする程、
奴らは俺とクラスの男をすぐに
くっつけたがる…。


俺が男と話すだけで、カップリングにならないか
吟味しているらしい…。
そして、主に俺は受けらしい…。





でも、俺は女が好きだ!
そう…思ってたんだ…。
だけど…


「山本の女装、板についてきたな」


クラス1、絵が上手い瀬川に
そう言われた。
ここまでは、他の奴らにも言われてるから
トキメキなんてない。
普通の仲間だ。


「まぁ、毎日してればな」

「今日はまた可愛いじゃん、
昨日のメイクと違くない?」


「ま、今日は口紅、変えたからな。
結構、見る目あんじゃん」

「なるほどねー…」


そう言って瀬川は俺の頬に
手を添え、顔を近づけて
俺の口元をまじまじと見る…。


え…何…この距離…,。
何、その手…。
口紅の色を見てるんだろうけど、
なんかそうやって、
ちょっとだけ意識してる自分が
ハズイ…。


「山本さ…ピンクや赤もいんだけどさ…。
山本の肌だとオレンジ系が似合うぜ?」


「うるせー、この口紅、昨日買ったばっかりじゃ!
そんなすぐに、買える金なんてねーわ!」


しまった…ドギマギし過ぎて
つい言い過ぎた…。そんな俺を見て
瀬川は笑う。


「分かったって、今度、俺がお前に
似合いそうな色、選んで買っといてやるよ」

「は?」

「んじゃ、お疲れー」


そう言って帰っていく瀬川の
背中を眺めて、俺は数秒
立ちつくした…。





何、あいつ!
あー、もう、何この感情!
この感情どうすんだよ!


何とも言えない感情を
味わった後、俺は冷静になった。


周りを見回し、
ちゃかしてくる
腐女子も………
1人いた…ひっそりといた…。
やばい…。


「ねぇ…今のさ、今のさ…もうさ…。
山本君、色々ありがとう…」


その腐女子は、目を最高に輝かせて
息絶えながら、手を合わせて
拝みながら近づいてきた…。
なんか怖い…。


「あれ、山本君、顔赤いよ~?」


確かに顔は熱いが、
別にそう言う意味じゃない!


「はぁ?ちげーよ!」

「本当~?瀬川君の事で
ドキドキしてんじゃないの?」

「俺の恋愛対象は、女だから!」

「まあまあ、強がんないでよ」

「強がってないから」


何、俺こんな必死になってんだろ…。
いつもだったら笑い話なのに…。


「こんど、私のとっておきの
同人誌、いっぱい貸してあげるからね~」


「いらねーから、余計なお世話だから!」


そう言うと、彼女は女神のような眼差しで
小首を傾げ俺を見て、
優しく俺の左肩を
ポンっと叩き帰っていった…。





いやいやいや!
違うから、これは違うから!





ただ、学校からの帰宅時、
メイクを落としてる時、
ちゃかしてくれる人が居ないと、
強がれない自分がいた…。


この気持ちは強がれない、
恋とかじゃないし別に違うし、
でも、なんでこんな感情なんだろう…。


瀬川…手にペンだこあったな…。
俺もあるけど…。
口紅…本当に買ってくれるのかな…。


あー、もう!!
瀬川の顔がちらつく!


そんな気持ちの時、
スマホの音がなる。


『激写!見てこれ、山×瀬
ドラマチックじゃない』


そうして、学校のグループチャットに
瀬川が、俺の頬に手を当ててる
写真が流れた…。
うそだろ…おい…。


『山×瀬…尊い…ありがとう』

『え…待って…これほんと無理…
好き…』

『ごちそうさまです…』

『供給ありがとう…』



と、腐女子が盛り上がっていた…。


『お前ら!』


と返しつつ、俺は
写真をこっそり保存する…。


それに対し瀬川は、


宇宙人が微笑んだ
スタンプが来た…。


え…これどういう感情だよ!
明日、どんな顔で会えばいいんだよ!
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