私のライブ

こぐま

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私の歌う理由

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昔から、歌うことが好きだった。

だから、歌手の道を目指した。


高校を卒業し、パートで働きながら、
お金がなかったから
小規模の事務所に入り、
発声練習などの部屋を借りて
家じゃ出せない音量の声で
たくさん練習した。





1年後、そんな私の頑張りを
評価してもらえ、


「もっと自分らしさを見つけるため、
デビューしてみないか?」


突然でびっくりした、
嬉しいけど、こんな私で大丈夫なのかな?
そんな不安がよぎった…。


「えっと…今の自分で
大丈夫なんでしょうか…?
まだまだですし、もっと上手くなってから
デビューした方が…」


「君は歌うことが好きなんでしょ?
一生、歌い続けたいなら、
デビューはほんの通り道だからね?
デビューしてからが成長所だよ?
ね?どう?」


そうだ…
私はもっと歌い続けたい!


「デビューさせてください!」

「よく言った、君は見込みがあるから、
今年この事務所に転職した、
うちの見込みあるマネージャーつけたげる!」


そして私は、
デビューする事になったが、
小規模の事務所じゃ宣伝力が弱いらしく、
ネットでデビューを発表したものの、
評価は低い…。


1ヶ月半後、デビュー記念で
小規模のステージでライブをする事になった。


1曲歌い、トークショーを10分
その後、握手会
それだけなのに、
チケット代、1人2000円のライブだ。

高い…。


新曲も貰い、
完璧なライブしなきゃ…
そんなプレッシャーを感じたため、
パートの日数を減らし、
沢山、発声練習や筋トレ、
ライブの日まで1ヶ月半、
とにかくいつも以上の量をこなし、
歌い続けた。





だが、ライブ当日に客席を見ると
1、2、3…6人…
うそ…6人…
あんだけ練習したのに6人…


私の歌手のデビューのイメージは
たくさんの人の前で歌う、
そんな感じだったのに…
テレビの見すぎだろうか?
それかやっぱり小規模の事務所だから
こんなもんなんだろうか?


思わない現実に私は、
マネージャーさんに


「本当にコレ大丈夫ですか?
お客さま6人ですよ?」


と、たずねてみる。
けど、マネージャーさんは


「6人でも1人1人大切なお客様です。
その人達のためにあなたは
1ヶ月間、頑張ってきたんでしょ?」


「そうですけど…なんか思ってたのと違うので…」


このマネージャーさん…
いつもあたりが強い…。
メガネをかけた、お堅いスーツをピッチリと着て
社長は見込みあるマネージャーさん
だと言ってたけど、本当かな…?


「不満ばっかりを考えてないで、
今、見に来てくれたお客さまに
全力で歌うべきです」


きっついなー…。
でも確かにそうだ…。
今、目の前のお客さまに
全力を届けなきゃ!


「そうでした、
全力で歌ってきます!」


歌ってる間は全力を出しきった。
ただ歌うのが楽しい…
ただそれだけの空間に浸っていた。


「聞いていただき、
ありがとうございました」


終わった…。

パチパチパチパチ…

拍手…

私は目を丸くした。


拍手ってこんなに嬉しかったっけ…?
心がいっぱいだ…

でも、


(でも、やっぱり○○よりは
まだまだ、だよな)


とある男性が、隣の友達と
話していて、ヒソヒソ声でも
人の少ないここでは丸聞こえだ…。


それが耳に入ったとたん、
私の頭は真っ白になり、
この次、なんて言うか忘れた…。


あれだけ頑張ったのに、
やっぱり私には才能ないんだ!


私は後の事など忘れて、
その場にしゃがみ込んでしまった。


「え…どうしたんだろ?」

「バテたのか?まだまだだなぁ…」


下手で…ごめんなさい。


「ごめんなさい…」


どうしよう…最悪だ。


「皆さま、山風  ハルカの初ライブに
お越しいただきありがとうございます。
すみません、初ライブが決まった瞬間から
この子、
『失敗したらどうしよう…』って
ずっと、いつも以上の量の練習を朝昼晩
繰り返してたんです。
どうか、この責任感の強い、
山風ハルカを温かい目でこれからも
もし、よろしければ、
どうぞ見守ってあげてください!」


司会進行役のマネージャーさんが
駆け寄ってくれて、
どこの選挙だろうかと思うほどの、
マネージャーさんは
フォローをしてくれた。


マネージャーさんが、
私の頑張りをちゃんと伝えてくれた
おかげか、


「大丈夫!めっちゃ良かったよー」

「声キレイ!」

「可愛いし、美しい歌声でいいね!」


褒めてもらえた…。

ヒソヒソ声で話してた男性も

「これからの成長楽しみだから、
古参として応援するなー!」


そう言ってくれた…。
私の成長を楽しみにしてくれる人がいる。
それだけでも、心がすっごく嬉しい!


立ち上がり、
「ありがとうございます!」


今できる精一杯の感謝を告げると、
涙がポロポロと流れだした…。
それを見たお客さま達も、


「あらら、泣いちゃった
応援するよ!大丈夫!」


心が温かい…。
「すみません…皆さんの優しさが身に染みて
思わず泣いちゃいました!」


「可愛いなー」

泣いても、皆さん微笑んでくれていたのが
すっごく温かかった…。
そんな時、マネージャーが次を促すように、


「皆さま、どうぞ、
お時間ありましたら、
ステージの方に上がっていただける方は、
上がってお話されていってあげてください!」


それには、私もお客さまも驚いた。
でも、お客さまは
1人、2人、3人と来てくれ
6人全員ともステージに上がってくれた。


マネージャーさんは
パイプ椅子を持ってきて、
トークショーは座談会に変わった。


私の話しを中心に、
みんなそれぞれの話しを聞いたり、
相談し合ったり、
トークショーは10分の予定が
お客さまのトークも白熱し、
1時間も話し込んでしまった。


「さてさて、皆さま、
たくさんのお時間をいただき
ありがとうございます。
大幅に時間がすぎましたが、この後の
ご予定は大丈夫でございましょうか?」


「あはは、話し込んじゃった」

「ほんとだ!」


どうしよう…みんなになんて言うべき?


「す…すみません」

「いやいや、話し込んじゃったの
客の私達だし!大丈夫よー」

「ハルカちゃんと話すの楽しかったよ!」

「握手してー」


最後はみんなと握手をし、バイバイした。





ライブが終わり、帰りの車で
マネージャーさんに


「あ…あの、宮崎さん!」

「はい?」

「今日、たくさんフォロー
ありがとうございました!
おかげで初ライブすっごく楽しかったです!」


「それが僕の仕事です」


ライブの司会進行と時とは
打って変わって
いつものように、クールな口調だが、
この人がマネージャーさんなら、
すっごく頼りになる、
と、思った。


これからも、もっと楽しいライブしたいな
もっと発声練習して、
筋トレして、
いっぱい音楽の勉強して、
一生歌っていたい…。


どんなライブでも、それが私のライブだから。


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