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近寄りがたい目つきのせいで…
しおりを挟む「ねぇ…あんたが聞いてきてよ…」
「やだよ…」
「男子、誰か聞いてきてくれない?」
「ふざけんなって、近寄りたくねぇよ…」
「これだろ?
コソコソしてても聞こえんだよ」
そう言って、俺は数学のノートを
回収係の女子に渡す。
「あ…ありがとうございます…」
「回収係なら、堂々と俺に回収しにこい!」
「は…はい、ごめんなさい…」
「別に責めてねぇよ…」
あー…もう、女子にこの口調は
まずかったか…。
目が潤みだした…。
俺より身長小さくて、
目が潤んでたら、こっから見たら
ただの子供みてぇだ。
親戚の子供を思い出す。
「強く言って悪かった…
今度からは俺に直接聞けよ」
そう言って、俺はその子を
あやすように、頭をよしよしした。
「え…あ…うん!」
そう言ってその子は、
顔を真っ赤にして俺の前をそそくさと
逃げて行った。
しまった…。
つい子供みてぇだと思ったからって、
高校生の女子にするのは、
ダメだったか…。
親戚の子供だったら、頭を撫でてあやすと
泣き止んで笑うのに…。
はー…やだやだ…これだから
人間関係はめんどくせぇ…。
親戚の子供と遊んでる時が
1番楽しい。
俺は、子供好きだ。
けど、俺は目付きが悪く、
ガタイもでかいし
温和のかけらの1つもない。
だから、子供が俺を見ると
まず、する事、
「近づかないでー!」
と、泣く。
でも、俺の昔からの夢は、
保育士だった。
なのに、見た目が悪いのはなんでだ?
姉貴は気の強いお姉さんって感じで、
俺は、もうただの
ガラの悪いヤンキーなのに…。
性別かなー…。
どうしたものか…。
俺がまだ保育園の頃、
目つきが悪くて友達ができなくて、
1人でいた俺に、
保育園の先生達は、たくさん気にかけてくれた。
俺が描いた絵をみんなと同じように
褒めてくれた、その優しさがすっごく嬉しかった。
こんな俺でも優しくしてくれる人がいる、
将来、俺と同じように寂しい思いの
子供がいたら、傍にいてあげたい…
そんな思いから、保育士を夢みてた。
中学生の時も、
1人でいる事が多いため、
勉強ばっかりしていて
勉強は、見た目と反して上位にいた。
そんな、俺に中学生の先生は
夢を聞いてきた。
信頼していた先生だったため、
素直に夢を打ち明けたら、
怪訝そうな顔をして、
「君の頭なら、医者の仕事とかできるんじゃない?
子供って優しそうな人が好きだから、大丈夫かな?」
と、言われた事がショックで、
もう夢は語らないって決意した。
だから、高校3年の、
進路が大事になってる時期なのに、
進路相談の先生には、
「夢はありません」
と言っている。
もう、傷つきたくない…。
否定されたくない。
でも夢を叶えたい!
進路どうしよう…。
姉貴に相談するか、
姉貴は、俺の唯一の相談相手だ。
「なぁ…姉貴、保育士を目指してぇんだけど、
人に言いにくくてさ…」
「そりゃそうだろうね。
その見た目じゃ!」
ぷくく、と姉貴は笑う。
「でも夢を叶えたい…」
「子供と関わる仕事がしたいんでしょ?」
「あぁ」
「ロリコン?ショタコン?」
「おい!真剣に考えろ!」
「はいはい、ってかさ、
見た目が悪い、ってさ人の目気にしなくて
いいじゃん」
「でも、子供が泣く可能性が…」
「そんなの保育士になってから言ったら?
まだ分かんないのに、人の目気にして、
弱音吐くよりさ、どうやったら
いい先生になれるか努力したら?」
「たしかに、努力…何すれば…」
「お姉様から言えるのはこれだけ、
あとは頑張んなさい、応援はしてるから」
応援してるからと姉貴は言いつつ、
大笑いをする、ほんとか?
まあ、いい…。
努力…。
俺は保育士になるために
何か努力したか?
たしかに、人目を恐れて
縮こまっていた…。
「明日…進路相談の先生に保育士の事、
相談してみる」
「おう!それでこそ、私の弟だ!」
姉貴はそう言って、俺の背中を叩く。
もう怖くない。
頑張ろう。
そう言って、俺は明日のために
笑顔の練習をした。
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