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8:『天までとどけ』
しおりを挟む「――なにゆえ、その指を捨てようとしたのであるか?」
信長は袖を破って、血がにじむ自らの手の平を包帯のように器用に巻きながら言った。
「はい……」秀吉ははからずも信長の手を傷つけた事に恐縮し、何も答えられなかった……。
「さしずめ、またいじめられていたからであろう」
「……」
涙顔なので信長に気付かれたと思い、慌てて涙を拭う秀吉。
「――余はな、昔、
うつけ、うつけと呼ばれていた事は猿も知っておろう」
「……はい」信長は名付けの名人なので、別に信長に“猿”と呼ばれるのは気にならない。
「今はどうである」
「はい、この地で信長様をうつけと呼ぶ者はおりません」
「――目立つ者は疎まれる、出る杭は打たれる。
……でもな、秀吉、
出る杭は出すぎて天までとどけば――
――誰にも叩かれんであろう」
「……」
「人も同じであるぞ。
めちゃくちゃ目立ち過ぎて、あまりにその者がもの凄く輝けば――
――皆、目を閉じてしまう」
そこまで言って信長は空を天高く指さし――
「――ほれ、
――あの《太陽》の様にな」
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