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第七章『愛宕百韻』と光秀謀反の句の謎

37 『信長による光秀殴打事件』

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○光秀、本能寺襲撃を決意か!?


西行法師が、出家時に我が愛する娘を――

突然に縁側で蹴飛ばした事件。


……これと類似する明智光秀の事件と言えば――


織田信長が、諏訪法華寺での祝勝会の時に激怒して、最も信頼する光秀を――

突然に縁側まで引き釣りだして、欄干に光秀の頭を打ち付けて負傷させた事件である。


これはかなり有名な《事件》で、

『祖父物語(朝日物語)』『川角太閤記』等に記された逸話であり――

事件の場となった法華寺には現在、立て札で事件を紹介されているくらいである。


また似たような事柄が、『明智軍記』や『稲葉家譜』等に記されている。

『明智軍記』によると――

これは、もともと美濃の稲葉一鉄の家臣であった斎藤利三が、明智光秀に仕えて、重用されていました。

それを知って怒った稲葉一鉄は、主君である織田信長に斎藤利三を返すよう直訴しました。

織田信長は、明智光秀に斎藤利三を返すよう裁定を下したが、

光秀は「利三を家臣とするのも、信長様への恩返しをするため」と答えて、信長の命令を拒否しました。

激怒した織田信長は、明智光秀の髻もとどりを掴んで突き飛ばし、脇差を抜こうとしました。

それに驚いた明智光秀は、その場を逃れてなんとか事なきを得ました。


――そして同様な場面を記した『稲葉家譜』では、

もっと酷いエンディングが、光秀に待ち受けております。


斎藤利三の件で、怒りの治まらない信長は後日光秀を呼び出し、光秀の頭を二度三度と叩いた。

光秀は髪が薄くいつも附髪つけがみ=カツラを用いていたが、叩かれたはずみで附髪が落ちてしまい、光秀は大きな恥をかき信長を深く恨んだ。


最後にこの『稲葉家譜』は〆で、

「このことが本能寺の変の原因になった。」と断定しているくらいである。


正直、拙者ですら……

各文献で紹介した『信長による光秀殴打事件』が、史実なら――

さすがの忠臣光秀でも謀反心を抱いても……仕方がないと感じてしまうくらい、あまりに酷い事件です。


……ただこの事件が載る文献は全て、信頼性が低い二次資料・三次資料と呼ばれるもので、これが『史実』起きたのか?

というと……確定はされていない。


というか、光秀が『本能寺の変』を起こしたのは事実なので、

「何故、光秀は謀反したのか?」と作者が考え、きっかけとなった話を創作しただけという説もある。


ただし、宣教師ルイス・フロイスの記述にも、

信長が光秀を殴打したとの内容があるため、全くの作り話なのかというと断定できない。


そう実際に起こったかどうかは別としても、

当時の人々が、光秀が突然裏切った事実から、こうした噂話が広がったのは間違いないであろう。


そしてこの『信長による光秀殴打事件』の逸話は――

『本能寺の変』の通説中の通説、

光秀の信長に対する《怨恨説》の根拠の一つとして、よく引用されてきたのである。



次回、

織田信長は本当に『明智光秀を殴打』したのか!?

《本能寺の変》の最大の原因――その真実迫ります!


乞う、ご期待!


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