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第三章『信長とイエスーーその運命の類似』

29 『第六天魔王』

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信長は嘆いた。

この国の現状を知り、こう嘆いたであろうーー


「なぜ心の平穏を諭す仏教が、この日本で宗派争いをしてばかりいるのだ?

あの応仁の乱以上の荒廃をもたらした『天文法華の乱』などの宗教戦争で、いったいどれだけの民衆を、苦しめたのか?

この仏教徒たちは本当に、民衆の救済を考えて活動しているのであろうか?

国家鎮護・民衆救済のためにいるはずの彼らが、この体たらくで、

この国の未来はどうなってしまうのだ

ーーいや、強大な武力を持つ彼らこそが、この日本を悪くしている根源ではないのか?」と。


そして、信長は仏教勢力と戦うためにーー

仏教界最大の敵である《第六天魔王》と、自ら名乗ったのであった。(※詳細文末)


なので、信長が仏教を嫌っていたとか、だから比叡山を焼き討ちしたと言われる時があるが、そうではないのである。


信長はもし仏教勢力が、この世を良く出来るのであれば、ぜひその力を発揮して欲しかったのである。


仏僧らは、父が元気になると請け負いながら、出来なかった。

まして自らの命さえ彼らは、ありがたいお経を読んでも守れなかった。


仏教国の日本において彼らのこの無責任・無能力をというものがーーこの国をダメにしている。


その原因の大きな一つであると信長は、信秀の

葬儀の時の仏僧を見て、理解したのです。


ーーそう仏教勢力と妥協しても民の救済も、太平の世も来ないと。


この日本はこの時代、実際仏教国なのに平和が実現していないどころか、仏教宗派同士で勢力争いの武装闘争ばかりしてーー

民衆を苦しめているのが現状なのです。


だから、その仏教武装勢力の打倒ーー

そう宗教勢力の武装解除しか、

自由て平等な社会は構築できないと確信しーー

強大な強大な仏教勢力に立ち向かったのです。


そのために信長は自らを《魔王》と名乗った。

仏教界最大の敵《第六天魔王》と。

だが、信長が目指したのは、戦乱続く地獄の世界では、決してなかったのである。




※信長が比叡山の焼き討ちをしたので、武田信玄が信長に、焼き打ちを糾弾する手紙を送った時に「天台座主沙門信玄」と署名してあった。簡単にいうと「儂は仏教界の守護者である」と。

それに対して信長は仏教界最大の敵《第六天魔王》の名を用いて、「第六天魔王信長」と署名した手紙を返した。

ーーという内容が、宣教師ルイス・フロイスが、日本布教長であったフランシス・ガブリエルに宛てた書簡に書いてある。

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