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論説『本能寺の変の首謀者は……信長本人であった』第一章『裏切りのない本能寺』

3『らしくない信長』

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ーー実は信長は、本能寺の変までに暗殺されかかったことが、記録から判るだけでもーー

なんと五回以上ある。しかしその全てが未遂に終わっている。


このことは、“信長が運が良いから助かった”と考えるよりも、信長陣営は、暗殺者(集団)に対する防衛体制がかなり整っていたと考える方が自然である。


つまり幾度となく襲来してくる暗殺者に対し、信長陣営はこれを完璧に防ぎきったのである。……そう本能寺以外は全て!


これほどぬかりのない信長が、何故あの変の時だけ、本能寺にたった百数人の供だけで宿泊するのであろうか?

……まるで、


ーーこれではまるで、“攻めて下さい”と言っているようなものではないか。


しかも今までの信長の緊急事態に対する最終的対応は、逃げの一手である。信長には戦国覇者のイメージがあるのでピンとこない方もいると思いますが、信長の逃げ足の早さはかなりのものがある。


一番有名なのが、信長の妹であるお市の方が嫁ぎ同盟者となっていた義弟の浅井長政が、突然裏切り進退極まったーー

いわゆる『金ヶ崎の退き口』の時である。

同盟者浅井長政を信じ、越前の朝倉氏を攻めたいた時に突然裏切られ、敵に完全に包囲される寸前であった信長は、なんとーー

真っ先に単騎で逃げた!

数万もの軍を捨て、後を追うわずかな近習だけを連れて逃げに逃げ、敦賀からなんと京まで逃げきったのである。


ーーこれは実はとても素晴らしいことで、信長が当時大大名今川義元を討ち奇跡の逆転勝利をおさめた『桶狭間の戦い』のように、当時戦国大名が戦場で討たれるとそのまま体制崩壊へ向かってしまう可能性が往々にしてあり、それを防ぐにはーー

なにがなんでも総大将である大名自身が真っ先に逃げるのが、ベストなのである。


もちろん一国のトップが、恥も外聞もプライドも脱ぎ捨てて、しかも逃走中に捕まればさらに恥さらしになるリスクを覚悟しなければできない話ではあるが、信長には“大事の前の小事”と生き残る為には、その全てを割りきる精神力がある。


それがである、それができる信長が、自身人生最大の危機である本能寺の変の時だけ、真っ先にーーなんと、戦っているのである!


本当に信長ファンの拙者としたらーー

「何故だ!、何故逃げないんだ!」と叫びたくなる場面である。


ーー当然、すでに明智軍に完全包囲されているから、逃げれず仕方なく戦ったと感じる読者諸兄も多いと思います。

しかし、




しかしあの時、実はーー信長は逃げられたのです!





どうして逃げられたと言えるのか?言い切れるのか?

それは当然ーー次の話で、ですが、




……もし、逃げられる可能性があったのに、そうせずに戦ったとしたら……。




ーーそれにしても本当にあの日の信長は、“らしくない”のである。


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